明大・宗山塁、関大・金丸夢斗、青学大・西川史礁(左から)【写真:加治屋友輝、真柴健、イワモトアキト】

写真拡大

明大・宗山に5球団、関大・金丸に4球団、青学大の西川に2球団が競合

 明大・宗山塁内野手が楽天、関大・金丸夢斗投手が中日にドラフト1位指名された一方、慶大・清原正吾内野手らが“指名漏れ”となった「2024年 プロ野球ドラフト会議 supported byリポビタンD」。現役時代に中日、巨人、西武で強打の捕手として活躍し、阪神で9年間スカウトを務めた経験を持つ野球評論家・中尾孝義氏が、各球団の指名を分析した。

「抽選に当たりましたし、12球団で1番思い通りの指名ができたのではないでしょうか」と中尾氏が評するのが、自身が現役時代にプレーした中日だ。関大の最速154キロ左腕・金丸との交渉権を4球団競合の末に引き当て、2位でも即戦力として期待の高い西濃運輸・吉田聖弥投手を指名した。「中日では小笠原(慎之介投手)がポスティングシステムによるメジャー挑戦を表明し、大野雄大(投手)もベテランの域に入った(36歳)。補強ポイントにぴったり合っている」と高く評価する。

 また、正捕手が固定されていないチーム事情にあって、中日4位の日本生命・石伊雄太捕手は、今年のドラフトで1番早く指名された捕手だった。就任早々、金丸を引き当てる“殊勲打”を放った井上一樹新監督の下、3年連続最下位からの脱出へつなげることができるだろうか。

 楽天は、金丸を上回る5球団競合の末、宗山との交渉権を獲得した。中尾氏がそれ以上に「作戦勝ち」と評するのが、愛工大の最速160キロ右腕・中村優斗投手の“一本釣り”に成功したヤクルトである。宗山に5球団、金丸に4球団、青学大・西川史礁外野手に2球団(ロッテが交渉権獲得)の指名が集中するのを横目に、彼らと同等の評価を受けていた中村の単独指名に成功した。

 ヤクルトは今季、リーグ最多のチーム103本塁打、同2位の506得点をマークしながら、投手陣がリーグワーストのチーム防御率3.64と不振で、2年連続5位に終わった。中村と3位で指名したセガサミーの左腕・荘司宏太投手には、1年目から戦力として期待がかかりそうだ。

“源田の後釜”のショートにこだわった西武「意外に早く1軍で使われるかも」

 一方、1位指名の抽選で複数回外した球団はどうしても、当初の構想とは違う指名を余儀なくされる。ソフトバンクは最初の入札で宗山、2度目の入札でも福岡大大濠高・柴田獅子投手(日本ハムが指名)を抽選で外し“外れの外れ1位”で神戸弘陵高・村上泰斗投手を指名した。

「即戦力の遊撃手を最初に狙い、最終的に高校生投手を指名したわけですから、当初はもう少し下位での指名を想定していたのかもしれませんね」と中尾氏。ただ、ソフトバンクは分厚い選手層を背景に、今季パ・リーグを独走で制した。「特に投手にはまだ余裕があり、数年後に出てきてくれればいい、という意図を感じます」とも指摘する。

 西武も最初の入札で宗山、2度目の入札でも高校ナンバーワン遊撃手の花咲徳栄高・石塚裕惺内野手を抽選で外し、金沢高の遊撃手・斎藤大翔内野手を1位指名。こちらはあくまで、遊撃手にこだわった。中尾氏は「31歳の源田(壮亮内野手)の後釜を獲っておきたいという、明確な意図を感じました」と語り、「高校生ですから基本的には時間がかかるでしょうが、そういうチーム事情で、首脳陣がいけると判断すれば、意外に早く1軍で使われる可能性もあると思います」と付け加えた。1位指名を予想する声もあった中で2位で指名できた大商大・渡部聖弥外野手が、チームの得点力アップに貢献できるか。

 下位指名の選手が“大化け”する可能性も、もちろんある。12球団中11球団が事前に1位指名選手を明かさず、虚々実々の駆け引きが行われた今年のドラフト。数年後に“答え合わせ”をしてみたい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)