自然豊かな岡山県北部に世界で活躍するアーティストの作品が集結する「森の芸術祭 晴れの国・岡山」(11月24日まで開催)。体感型で楽しめるアート作品は、旅を通じて子どもの好奇心を刺激する「旅育」に最適! 旅育コンサルタントが見どころを紹介します。

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秋といえば芸術、食、紅葉と、旅で子どもの生きる力を育む「旅育」にもベストなシーズン。2024年は、自然豊かな岡山県北部に世界で活躍するアーティストの作品が集結する「森の芸術祭 晴れの国・岡山」(11月24日まで開催)が特におすすめです。

今回は、旅育コンサルタントの筆者が、この芸術祭が旅育にいい理由を解説! イチオシの作品やお得な情報とともにご紹介します。

【画像】芸術祭で展示されている作品「坂本⿓⼀+⾼⾕史郎《TIME-déluge》2023」

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が旅育にいい5つの理由

筆者が「森の芸術祭 晴れの国・岡山」を訪れて感じたのは、「家族で訪れてほしい、旅育にぴったりな芸術祭」だということ。開催の舞台となるのは、岡山県北部の12市町村。うち5つの市町(津山市・新見市・真庭市・鏡野町・奈義町)に作品が展示されています。

これらの地域は、自然が豊かで、歴史ある町並みも残る場所。親子でのんびりと季節の移ろいや日本の素晴らしさを感じつつ、「レアンドロ・エルリッヒ」「蜷川実花 with EiM」など、世界で活躍するアーティストの作品を楽しむ絶好の機会です。また合計特殊出生率2.95(※2019年)で“奇跡の町”と呼ばれる「奈義町」も会場の一つ。子育て中の保護者としては、どんなところか気になるのでは?

さらにファミリーにおすすめの理由が、高校生以下の子どもは鑑賞無料なこと! 通常は子ども料金が設定されている施設も、芸術祭の期間中は無料となります。手軽にアートと触れ合い、子どもの感性を磨く、またとない機会です。

各エリアまではシャトルバスが整備され、週末には観光列車も運行。アクセスも芸術祭期間中は便利になっているので、ぜひ出かけてみませんか?

▼【まとめ】旅育&家族旅行におすすめの5つの理由1.自然が豊かで四季を感じる。城下町や宿場町など歴史ある地
2.世界的アーティストによる作品は体感型で、子どもの感性を刺激する
3.高校生以下はなんと鑑賞無料! 親も鑑賞パスポートでお財布に優しい
4.岡山駅は列車の種類が豊富! 手軽に楽しめる観光列車も運行
5.公共交通機関が整備され、アクセスがしやすい。お得な切符も発売

早速イチオシの作品をみていきましょう!

“奇跡の町”で子どもの感性を高める! 「奈義/奈義町現代美術館周辺エリア」

出生率2.95人で、“奇跡の町”といわれる「奈義町」。那岐山を望む空に続くようなシンボルロードの景色に、「こんなところで子育てしたいなあ」と思わずにはいられません。町内には「あれなんだろう?」という個性的な建物が多いのですが、公共施設も有名な建築家が携わったものが少なくないといいます。まさに町ごとアートな空間の「奈義町」で出会える作品は、「なんだろう?」「面白い!」と子どもの好奇心を刺激する体感型のものが多く、旅育にもイチオシです。注目は奈義町現代美術館。作品と建物とが一体化し、太陽、月、大地と名付けられた三つの展示室からなるのですが、作品の中に自分が入り込める作品です。

例えば「月」では、足音が響き渡り、やがて消えゆく音響が楽しめます。「太陽」では常識が覆るような驚きもあり、「すごい!」「なぜ?」「???(どうなっているの?)」と、子どもが自然と興味を持ち、自ら考える、そんな魅力にあふれています。時間や天気、季節で異なる表情を見せるのも魅力の一つです。芸術祭期間中は、坂本⿓⼀+⾼⾕史郎などの作品も展示されており、さらに楽しめますよ。

屋内ゲートボール場もアートの力で幻想的な空間に! 不思議な体験に脳も活性化する?

奈義町現代美術館の向かいにある屋内ゲートボール場「すぱーく奈義」では、金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》で有名なレアンドロ・エルリッヒ氏が手掛けたインスタレーションを展示。入った瞬間に「すごい」と歓声がもれる幻想的な作品の中で写真を撮ったり、「どうなっているんだろう」と仕組みを親子で想像してみるのも楽しいでしょう。秋の深まりとともに、一帯では紅葉や雲海も楽しめます。

歴史・鉄道×アート「津山/津山城周辺エリア」 イチオシは津山まなびの鉄道館

城下町として栄えた津山市には、地上45メートルの石垣が圧巻の「津山城」(鶴山公園)、昔の街並みが残る「城東町並み保存地区」など見どころが多く、芸術祭の会場も10カ所と一番多いエリアです。中でも旅育的におすすめなのは「津山まなびの鉄道館」。 ここでは、キムスージャ氏の作品が楽しめます。機関車の車庫の窓にはプリズムシートがはられ、ノスタルジックな雰囲気に光の織りなすカラーが美しく、時間帯によって見え方が変わります。鉄道の歴史を知る「あゆみルーム」、動く仕組みを学べる「しくみルーム」、津山の街並みをジオラマ展示した「まちなみルーム」、ベンチが置かれ実際の線路や車両(※津山駅と隣接しています)を眺めてのんびりできる「いこいの広場」もおすすめ。子どもが身近な鉄道に興味を持つきっかけになるスポットです。

子どもの意外な興味・関心が芽生えるかも?

津山城跡(鶴山公園)の入り口にある芝生の広場が広がる城下スクエアには、なんとアート作品の卓球台が登場し、実際にプレーを楽しめます(ラケットや球も準備されています)。目の前には、「つやま自然のふしぎ館」があり、こちらも森の芸術祭の会場です。迷路のような館内には、世界の希少動物のはく製約800体のほか、化石・鉱石、貝類、昆虫類、人体標本など総数2万点を展示。他に類を見ないコレクションは、まさに「ふしぎ」という名にふさわしいスポットです。生き物が好きなお子さんはもちろん楽しめますし、意外な興味・関心が芽生えるきっかけになるかもしれません。ちなみに通常は入館料がかかりますが、芸術祭の期間中は、高校生以下は無料となります。またJR津山駅の今は利用されていない地下道では、JR社員による”津山管理駅お仕事紹介”も開催されていて、子どもから大人まで興味をそそる鉄道の裏側などの紹介も。

津山線を走る観光列車「SAKU美SAKU楽(さくびさくら)」の顔出しパネルもあります。お子さんと津山に訪れたら、ぜひチェックしてみてくださいね。津山市内には10カ所の会場があり、会場を結ぶ無料バスも運行中。ほかにも10月19日〜12月1日までは、町全体で体験プログラムが実施される「津山まち博」も開催されます。芸術祭とあわせて楽しんでみてはいかが?

鑑賞パスポートやアクセス情報を入手して、「森の芸術祭 晴れの国・岡山」へ

大人は鑑賞パスポートの利用がおすすめです(大人3000円、大学生・専門学生2000円)。芸術祭開催中有効で、1施設1回の鑑賞ができます(当日の再入場は可)。大人の分だけ鑑賞パスポートがあれば、高校生以下の子どもは無料。お近くなら、期間中、家族でリピートして訪れるのもいいですよ。また、JR西日本では「tabiwa森の芸術祭2デイパス」(2500円、鑑賞パスポート付4500円)や、JR西日本の各エリア発着の新幹線や鑑賞パスポートがセットとなった「森の芸術祭モリモリきっぷ」(大阪市内発着1万3500円)など、お得なきっぷも発売しています。いずれも自由周遊区間内の普通列車や路線バスが2日間乗り放題。座席指定券や特急券などを購入すれば、観光列車や「特急やくも」も利用できます。芸術祭詳細については「森の芸術祭 晴れの国・岡山」公式Webサイト、鑑賞パスポートや、お得なきっぷの詳細・手配はJRおでかけネット「森の芸術祭特集サイト」をご覧ください。

いかがでしたか? 今回ご紹介したのは、森の芸術祭のほんの一部。ぜひお子さんと「何を見よう?」「どこに行きたい?」と相談しながら、旅育を実践してみてくださいね。

なお「JR西日本ミライ〜旅育やってみよう」では、旅育の実践ヒントや「旅のしおり」もダウンロードできます。

この記事の執筆者:村田 和子 プロフィール
旅行ジャーナリスト。国内・海外旅行、子連れ旅行のノウハウや楽しみ方を、テレビ・新聞・雑誌などの媒体で広く紹介するほか、執筆・講演、宿や地域のコンサルティングを行う。旅を通じて子どもの生きる力を育む「旅育メソッド(R)」提唱者。(文:村田 和子)