ファッションエディター・大草直子 今パンツシルエットは太いのが主流でも、数年後ガラリと…おしゃれは「なる」ものでなく「する」ものと考えよう
40代、50代は、更年期真っ只中。気力が落ちたり、体重がコントロールできなかったりするせいで「おしゃれが楽しくない…」と悩む方もいるのではないでしょうか。そんななか、「45歳から55歳は、おしゃれも少しスローダウンする勇気を持って」と話すのは、ファッションエディターやスタイリストとして活躍する大草直子さんです。そこで今回は、大草さんの著書『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』から、大人のおしゃれのTIPSを一部ご紹介します。
【書影】気鋭のファッションエディターが本音で明かす、大人のTIPS。大草直子『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』
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インスタフォローは27人まで
インスタグラムを始めて9年が経(た)ちました。あっという間です。
ツイッター(現X)はやっていません。フェイスブックは気が向いたときに。人のブログやYouTubeは実はほとんど見ていません。
さまざまなSNSがあり、付き合い方は人それぞれ。そして、その目的も。
Z世代の辞書は、グーグルではなくYouTubeだし、2010年以降に誕生したアルファ世代のトレンドは、TikTokから生まれます。
私は、インスタグラムとの接点が一番多く、自分が投稿することも楽しんでいます。そして、雑誌やウェブで、仕事をしたいモデルやインフルエンサーを探すのもこの場所で。
ただし、フォローする数は27人まで、と決めています。
頻繁にフォロー、アンフォローを繰り返しているので、この記事を書いているタイミングは25人をフォロー中。実は、1か月に一度は食事をする友人もフォローしていません。
フォローする数を決める理由
それはなぜかというと、「情報の海」に溺れたくないからです。
私にとって心がざわざわする情報はいらないし、準備ができていないのに、自動的に情報が送られてくることも、不安というより怖いのです。
忙しすぎて3日連続夕飯を作れていない。
おしゃれをする気力がない。
グリーンが流行しているのに黒を着たい。
部屋がちらかっている。
友達が少ない。
彼女が持っているバッグを「持っていない」。
SNSを見すぎるあまりに、自分に違和感を持ってしまうことは、とても不健康だし危険とすら言っても良い。
「自分らしさ」を自分自身で否定しないために、SNSとの適度な距離感は必要だと信じています。
情報に触れ、学び、進み続ける
SNSの台頭で、おしゃれに必要なのは、知性、バジェット、センス(訓練で身につくもの)、のほかに情報が加わりました。
ネットサーフィンをすれば、今このタイミングで、アメリカのセレブリティやパリのインフルエンサーが、何を選び、何を組み合わせているかが瞬時にわかるように。
(写真提供:Photo AC)
目まぐるしく変わるトレンドは、これまで以上に速度を増し、私たちの、すぐ横を通り過ぎていきます。
このスピード感は、実は、マチュア(婦人)世代にとって大切にしたいこと。
言い換えると、ミーハーさ、いや、運動神経と言っていいかもしれない。
ウエスト位置を意識したデニム選びや、ニットのサイズ感、スカートの丈。
何も奇抜なものや目新しいものだけを追いかけるのではなく、こうしたディテールの新しさを大事にしたい。
おしゃれは、「なる」ものではなく……
この記事を書いている2024年は、パンツのシルエットは太く、そしてカーヴィになり、それに伴い、ハイヒールが復権の兆しを見せています。
例えば、長年大切にしているジャケットに、思い切って太めのデニムを合わせれば、その人の着こなしはうんと新しく見えるのです。
ただし、数年後、あなたが読み返したタイミングでは、きっと、そのスタイルもがらりと変わっているはず。
「ずっと同じ」は、情報に触れていない、と同義だと思います。
情報に触れ、いるいらないをキッパリと判断し、そして、トレンドやカルチャーの背景を知り、学ぶ。
おしゃれは、「なる」ものではなく「する」ものだとすると、逆にこうして努力を続ければ、上達していくのかな、と思います。
外国語を習得すれば、海外旅行がスムーズになり、現地の人と友達になれ、深く豊かな体験ができる。それと同じです。
※本稿は、『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。