3回、クリストファー・ロサレス(左)を攻める寺地拳四朗(撮影・佐々木彰尚)

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 「ボクシング・WBC世界フライ級王座決定戦」(13日、有明アリーナ)

 世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王座決定戦で、寺地拳四朗(BMB)がクリストファー・ロサレス(ニカラグア)に11回6秒TKO勝ちし、ライトフライ級に続き2階級制覇を達成した。世界ボクシング協会(WBA)フライ級王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)は、タナンチャイ・チャルンパック(タイ)に2−1の判定勝ちで2度目の防衛に成功。世界ボクシング機構(WBO)ライトフライ級王座決定戦で、岩田翔吉(帝拳)がハイロ・ノリエガ(スペイン)に3回3分TKO勝ちし、2度目の世界挑戦で新王者となった。

 パワーアップした強打がさく裂した。真っ赤になったロサレスの顔がダメージを物語る。相手の鼻を破壊してのTKO勝ち。「いや〜、とりあえずホッとしてます」。フライ級初戦で進化を証明する2階級制覇を達成した拳四朗に、安堵(あんど)の笑みがこぼれた。

 序盤から左ジャブと右ボディーでペースを握った。3回にはカウンターの右を顔面にヒット。ふらつかせて、完全に優位に立った。その後はダウンこそ奪えなかったものの、世界4階級王者のサウル・アルバレスが応援についた相手に主導権は渡さず。11回開始直後、ドクターチェックを受けたロサレスのグニャリと曲がった鼻を見て、レフェリーが試合を止めた。

 減量の負担が減ったことが大きかった。1月の前戦では、アップ中に息切れ。加藤健太トレーナーは「初めてだった」と限界を感じとった。転級初戦のテーマは「体にエネルギーがある状態でリングに上がる」こと。これまで直前は酵素ドリンクの栄養補給で体重を落としていたが、今回は計量前日でも白米を食べられた。計量後は無理なく5キロのリカバリー。力のみなぎった体から繰り出すパンチは威力十分だった。

 新たな境地ものぞかせた。最近多かった打ち合いを自重。「自分のボクシングを貫き通した」と強引に攻めなかった。加藤トレーナーも「『自然と終わるよ』という話をしていた。ああいう終わり方でも理想」とうなずいた。

 新たな階級でも戴冠。リング上で今後について問われると「やっぱりみなさんの見たいのは統一戦。期待して待っていてください」と、1試合前にWBA王座を防衛したユーリ阿久井、14日に行われるWBO王座戦のオラスクアガ−ゴンサレス戦を意識した発言が飛び出した。ここからの道のりは「拳四朗“第2章”ということで」。4団体統一も視野に、進化した姿で勝利を重ねていく。

 ◇寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年1月6日、京都府城陽市出身。父で元東洋太平洋ライトヘビー級王者の寺地永氏が会長を務めるBMBスポーツジム所属。中学3年でボクシングを始め、奈良朱雀高から関大へ進学。13年に国体で優勝。14年8月にプロデビュー。17年5月にWBC世界ライトフライ級王座を獲得した。21年9月に矢吹正道に敗れ王座から陥落したが、22年3月に再戦で矢吹を下して王座を奪回。22年11月に京口紘人との統一戦を制してWBC・WBAスーパー王者となった。164センチ。右ボクサーファイター。