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 大阪・関西万博の開幕まで約半年となりました。万博で大阪発祥の回転ずしで世界の料理を回すくら寿司の挑戦に密着しました。

回転レーンは最長の約135m!?大阪・関西万博にくら寿司が出展 

 今や世界で大人気の回転ずし。くら寿司は来年の万博で大型の店舗を出します。「回転レーン」はくら寿司史上最も長い約135m。そのレーンを流れる「目玉メニュー」が・・

(くら寿司取締役・岡本浩之本部長)「世界の食が集まる店舗を目指し、各国・各地域の代表的なメニューをくら寿司で初めて提供します」

 万博に参加する国や地域それぞれの名物料理が寿司と一緒に回るのです。

各国の名物料理に挑戦 商品開発に密着

 今年7月。くら寿司本部のテストキッチンでは、プロジェクトの準備がひそかに進められていました。

 (くら寿司商品開発部・中村重男さん)「パッと見て名物料理だってわかるようにしないといけないのでそこが難しいのと、あとはレーンに流したあとに冷めてもおいしいっていう部分が一番難しい部分かなと思います」

 開発担当者の中村重男さん。シャリを大根などに変えた「シャリ野菜シリーズ(※現在は販売していません)を手掛けるなど数々の斬新なメニューを生み出してきました。今回のメニューを試作するための食材のなかには、あまり見慣れないものも。

 (中村重男さん)[これはクスクスです。パスタの一種で、アフリカとかで食べられているものです」

 寿司とは縁遠い気がしますが・・・・

(中村重男さん)「『チャキリ』っていう、ガンビアの定番のデザートをつくります」

 アフリカ大陸の西に位置するガンビアの名物料理。リンゴとバナナ、クスクスをヨーグルトで和えドライフルーツをトッピングします。

(中村重男さん)「シンプルなおいしさです。ドライフルーツは甘いんですけど、ヨーグルトとクスクスを甘さ控えめにしているんでちょうどいいです」

 続いて手にとったのはタイ。手慣れた包丁さばきです。

(中村重男さん)「今ペルーの料理の『セビーチェ』魚介のマリネを作っているんですけど」

 南米・ペルーの魚介マリネ「セビーチェ」。ユネスコの世界文化遺産にも登録されているペルーを代表する名物料理です。この料理で中村さんがこだわったのペルー産のホワイトアスパラです。

(中村重男さん)「ペルーはホワイトアスパラの産地として有名で日本のスーパーで売っているホワイトアスパラもペルー産が多い」

 有名なホワイトアスパラを使ってペルーの色をより強調する狙いです。ニンニクと塩、オリーブオイルを加え、ライムを添えれば出来上がりです。

(中村重男さん)「うんうまい」

 他にも、イタリアの肉料理「タリアータ」や、トルクメニスタンのパイ菓子「バクラバ」など60以上のメニューを試作しています。でも寿司店なのになぜ寿司じゃないんでしょうか。

当初は各国の料理をイメージした「寿司」でも全部ボツに…

 6月初旬。取材班が初めて訪れたとき、中村さんが開発していたのは「寿司」でした。

 (中村重男さん)「ドミニカのおやつみたいなやつで、中にひき肉が入った上げ団子みたいな感じのやつなんですけど、お寿司に表現するためにローストビーフと、揚げた感を出すために揚げパン粉をふっておすしにアレンジしています」
 
 当初は、”各国の料理をイメージした「寿司」”という方向で進めていたのですが…

(くら寿司・田中邦彦社長)「う〜ん…。特徴が分かりにくい。もっと増やしたらどうや」
(中村重男さん)「ソースの量を多め」

 寿司で料理を再現しようとするとソースやトッピングに頼らざるを得ず特徴が分かりにくくなってしまったのです。

(田中邦彦社長)「インパクトがない」

 結果、なんと全部ボツに。またイチからレシピを考えることになったのです。そんな中村さん、今回のメニュー探しで 頼りにしているのが…

(中村重男さん)「これが地球の歩き方のシリーズで。これが世界のグルメ図鑑。世界のお菓子に特化したもの。これが世界の地元ごはん」

 ガイドブック片手にこれだと思う料理は、レストランで味を確かめ、インターネットでレシピを調べては試行錯誤しました。

(中村重男さん)「できるかなっていう不安はありましたけど、だんだん楽しくなってきたっていうか。今は楽しくやっています」

「寿司の時よりバージョンアップしている」 社長も納得のメニュー

7月下旬、くら寿司本部のキッチンでは、中村さん達があわただしく動き回っていました。

(中村重男さん)「バグラバ、チャキリ…」

 社長と役員らが集まって、メニューを試食するのです。フィリピンの煮込み料理「チキンアドボ」にパナマのおやつ「ブニュエロ」など、真剣な表情で口に運びます。はたして評価は…

(田中邦彦社長)「すべて食べた。皆おいしいです、基本的によくできている。前(お寿司の時)よりバージョンアップしている」

 一部は改良の余地を指摘されたもののおおむね合格のようです。

(中村重男さん) 「おおかた(メニューの)提案が終わったので結構ほっとしました。これから導入に向けてが一番大事な部分なんで、そこをがっつり頑張っていきたいなと思います」

さらなる試練 社内審査に通るも本場では…

 1か月後またさらなる試練が待ち受けていました。

(中村重男さん)「きょうはペルーのセビーチェを試作します」

 社内の審査をクリアしたのでせっかくなら本場のお墨付きをもらおうと、セビーチェのレシピを東京のペルー大使館に送ったところ・・・

(中村重男さん)「ホワイトアスパラも使用しませんと。オリーブオイルは使わないです、それが重要ですと。ちゃうんやって思って。オリーブオイルを使うセビーチェが一般的だなと思っていたので」

 大使館のシェフからレシピを教えてもらい、試作を繰り返します。唐辛子と酸味を効かせたタレで魚を和え、サツマイモとコーンを添えるのが本場流だったようです。

(中村重男さん)「うまいっす。めっちゃ自信あります。めっちゃおいしいです。サツマイモをふかしているんで食感のバランスもいい。サツマイモの甘さとねっとり感がすごくマッチしています」

ペルー大使が改良した「セビーチェ」を実食 評価は…

 9月上旬、メニュー開発を担当する中村さんは東京にいました。向かったのは、ペルー大使館。改良したセビーチェを試食してもらうのです。

 ペルー大使と大使館のシェフが同席。張り詰めた空気の中、くら寿司特製のセビーチェが運ばれます。本場の味に仕上がったのでしょうか。

(ペルー ロベルト・セミナリオ駐日大使)「みんなセビーチェが大好きなんだ。これはとてもいいものだと思うよ。」
(ペルー大使館 ウゴ・ルエダシェフ)「魚の新鮮さ絞りたてのライムなどペルーならではの要素を尊重してくれていてうれしく思います」

 反応は上々。しかし、改善点も・・・

(ロベルト・セミナリオ駐日大使)「使った材料は?」
(中村重男さん)「タレは唐辛子ベースで、コショウ、砂糖、塩。お酢を少し使っています」
(ロベルト・セミナリオ駐日大使)「ぼくらは砂糖を使わないんだ。ペルーのものはもっとしょっぱいんだ」

 レシピ通りにつくったはずですが、本場より甘い味付けになってしまったようです。

(中村重男さん)「すぐ改良できる部分なんで、また調整してよりもっとおいしく仕上げられたらと思います。回転レーンを活かして世界各国の料理がおすしと一緒に流れてくるっていうのは当社にしかできないと思いますので、たくさんのお客さんに楽しんでいただけるんじゃないかなと思います」

 回転レーンに世界の味が並ぶ日まであと半年。中村さんはメニューを磨き続けます。