14年連れ添った愛猫を失い、深い悲しみに暮れる日々 やんちゃな1匹の三毛猫が“猫型の穴”を満たしてくれた
なににも代えがたい存在の愛猫を亡くすと、暗闇の中にいるような気持ちになる。ぴっちゃんさん(@Popoi0629)は14年間、心と体に寄り添ってくれた愛猫ポポイさんを亡くし、深い悲しみに襲われた。
【写真】14年間を共にした、先代猫さん…段ボールに入れられ捨てられていた子でした
そんな“猫型の穴”を満たしてくれたのは新たに家族となった、やんちゃな猫ニアちゃん。
「ニアが来てから、笑顔や会話が増えました。やっぱり猫さんは、幸せをくれる最大の癒し。大好きな猫たちへの想いは、ずっと変わりません」
14年間を共にした愛猫が逝去
心の底から愛していたポポイさんは、段ボールに入れられ遺棄されていた子。名付け親は、当時、園児だった娘さん。「ポイポイ捨てるな!この日を忘れないように、ポポイだよ」と、意味のある名前を贈った。
ポポイさんは人間を噛んだり引っ掻いたりしない、お利口さん。飼い主さん家族は日々、たくさんの愛を注いだ。
亡くなる前は時折、みられていた膀胱炎を発症。いつものように薬を貰い、治療をするも体調は回復せず。飲食ができなくなったため、動物病院を受診し、カテーテルで流動食を入れもらった。
「誰もいなくなる夜中の院内で、ひとり亡くなったら耐えられないと思い、日帰り入院を希望しました」
帰宅後、ポポイさんは流動食を嘔吐。ずっと閉じていた目を見開き、深い呼吸をし始めたため、飼い主さんは隣で様子を見ることに。
深夜、飼い主さんの手のひらを枕にして目を閉じていたポポイさんは、ゆっくり息を引き取りました。
「肉球は真っ白。冷たく固くなっていくポポイさんを撫でながら話しかけていると、涙が止まりませんでした」
まるで寝ているかのようなポポイさんを猫吸いするも、いつもとは違う香りがし、胸が締めつけられたそう。
「体から、お薬のにおいがしました。いつもは、お日様のにおいがしていたのに。起きてくれるかなと、何度も何度も名前を呼びました。あの時の匂い、硬さ、冷たさは忘れられません。たくさん頑張ってくれた自慢のポポイさんです」
時間が経っても愛猫を亡くした悲しみは癒えず
愛猫の姿が見えず、気配も感じられない生活は飼い主さんにとって苦しいものに。ポポイさんが使っていたものは直視できず、水さえ喉を通らない日々。
しかし翌日、娘さんがコロナ陽性となったため、「食べないとダメだ!」と自分に言い聞かせ無理矢理、食べ物を摂取して泣きながら看病に励んだ。
「できることならもう少し、ひとりでポポイさんを想う時間を過ごしたかったけれど、食べることはできるようになりました」
その後、時間が経つにつれ、少しずつ日常を取り戻していくも、心の奥にある悲しみはずっと癒えず。ふとした時にポポイさんへの想いが募って涙が出るなど、心が不安定な日々を送っていた。
「次の子を迎えようとは全く考えられず、ずっと沈みがちでした」
そんな姿を心配したのが、娘さんと娘さんの友人。ある日、娘さんの友人は「子猫が産まれたので、ぜひ」と、写真を見せてくれた。
飼い主さんはお迎えを迷い、真剣に検討。子猫を迎えようと決めた。
先代猫とは対照的な性格の新入り猫に癒されて
子猫には、「ニア」という名前をプレゼント。母猫やきょうだい猫と暮らしていたニアちゃんは環境の変化に戸惑い、お迎え後は大鳴き。しかし、人間がそばにいると落ち着き始め、お迎え当日からご飯を食べ、トイレも済ませてくれた。
人間の姿が見えないと大声で鳴く寂しがり屋であったため、飼い主さんはけりぐるみをケージ内のベッドへ。できるだけ傍にいたり、夜にはケージの隣で一緒に寝たりするなどのメンタルケアを行った。
そうした配慮を3〜4日ほど続けると、夜、静かに寝てくれるように。やがて、やんちゃで気が強い本来の性格を見せ始めた。
「ロケットのようなやんちゃさん。以前、登ってはダメなところを教えたら、逆ギレして噛みついてきました(笑)。かわいい子です」
明るく元気なニアちゃんは、愛くるしい「やんのかポーズ」で威嚇をすることも。しかし、意外とビビリで、窓を開けた時には外の音や風に驚く。
「クイックルワイパーも敵です(笑)。寂しくないように毎日、めいっぱい“じゃらし遊び”をしています。人間が好きで、家族みんなの膝で寝てくれるようになりました」
ニアちゃんは家族の中でも特に、飼い主さんが大好き。日に何度も肩に手をかけ、鼻チュー。濃厚なスキンシップで飼い主さんを笑顔にしている。
完全には癒えなくても和らぎはした「ペットロスの痛み」
ポポイさんを亡くした悲しみは正直、今も完全に癒えてはいない。だが、日常は少しずつ明るい方向に変わっている。
「娘には『お母さんがひとりでずっと猫と喋ったり、変な替え歌を歌いながら家事したりするの、ポポイがいる時みたい』と言われました(笑)」
また、外出時にも嬉しい変化が。飼い主さんはポポイさんの通院時、「少しでも怖がらせずに送迎をしたい」と思い、車内で音楽を止めており、逝去後もカーオーディオをオンにできなかったそう。しかし、ニアちゃんと暮らすうちに車内で音楽を楽しめるようになった。
「ポポイさんが亡くなった後は体重が5kg以上減り、どれだけ食べても増えなかったのに、ニアが来て2kg戻ったのは不思議でした。悲しみって、カロリーを使うんですね」
なお、ニアちゃんは初めてポポイさんと同じ動物病院に行った時、大騒ぎしたそう。獣医師とスタッフは「ポポイさんは大人しかったよね」と笑った。
「ニアの茶色い毛並み部分がポポイさんに見えて、涙が出ることはあります。ニアの毛皮は、ポポイさんと実家で暮らしていた亡き三毛猫のみぃ〜ちゃんのパッチワークなのかも(笑)」
「大好きなんだから幸せを思い出してあげたい」
ペットロスは「動物が死んだだけ」と心の傷が軽視されることもあるため、当事者はぽっかり空いた“猫型の穴”の癒し方が分からなくなることも。飼い主さんも深く悩み、なんとか自分なりの受け止め方に辿り着いた。
「悲しみが深くて沈みすぎると、浮上するのに時間がかかりますし、何かを後悔をすることもありました。でも思い出すたびに辛い顔をしていたら、ポポイさんが可哀想だと思うようになったんです」
写真を見たり、在りし日の姿を思い出したりするたびに悲しがっていたら、きっとポポイさんも辛くなってしまう。大好きなんだから、「かわいいね」と笑顔で見て、幸せを思い出してあげよう。
時間をかけて辿り着いたこのペットロスの受け止め方は、亡き愛猫にできることを精一杯考えた飼い主さんなりの愛情表現でもある。
「東日本大震災の時、一緒に避難して子どもたちの成長も共に見届けてくれたポポイさんは私にとって特別な不動の一番。ポポイさんの面影を持ち合わせ、私と出会ってくれたニアは、かわいさ爆発で元気をくれる大好きな大事な家族。どちらも大切な子。一生守ります」
“猫と生きる”とは、どういうことなのか。そんなことも考えさせられる飼い主さんの猫ライフに触れると、自分にとっての“あの子”や“この子”がより愛しくなる。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)