創作の反応について、投稿した漫画家の真意とは?「創作どころか人が関わる全てがそーかもね」
漫画家の「洋介犬」(@yohsuken)さんは、創作活動のなかで感じていたことを童話『ごんぎつね』を例に挙げてXに投稿しました。
【漫画】投稿主作の『パラウドで逢いましょう』…これも解釈が分かれそう
「創作というのはたとえば100人に『ごんぎつね』を読んでもらったら
70人は『かわいそう』と言い
20人は『自業自得』と言い
9人は『意味がわからない』と言い
1人が『つまりごんは兵十の母親だったんですね』
と言い出すのを折り込み済みでいた方がいい。」
『ごんぎつね』は新美南吉さんの代表作。小学4年生の国語の教科書に採用されていて記憶に強く刻まれている方も多い作品なのではないでしょうか。
投稿した理由を洋介犬さんにお聞きすると、
「WEBで作品を発表するとダイレクトに感想が来ますが、その中でも作者の予想していないものが来るのがしばしばです。
それが面白く、膝を打つものなら快感なのですが、作者意図を真逆にとらえたり、ひどい時は自説のプロパガンダにされることもあり、『すべての人に物事を伝えるのは難しい、不可能に近いのではないか』という意図がありました」
と話します。
「すべての人に物事を伝えるのは難しい、不可能に近いのではないか」
つまり作品の意図とは異なる反応があることを理解しておこうという投稿でしたが、もともとさまざまな解釈や論争がある『ごんぎつね』を例にしたこともあり、リプライは『ごんぎつね』の内容そのものへの論争が始まってしまいます。
「『たとえば』とポストにつけたのは、『ごんぎつね』以降すべてが『あくまでたとえ話』であり、実際にリサーチしたものではないし、『ごんぎつね』は本質や主題ではないという意味を込めての四文字でした。
他の方も言及しておられましたが、『ごんぎつね』も回答例も主題ではないのですが、あまりにパワーワードすぎたのかそこに議論が白熱してしまったので、やはり『物事を伝えるのは難しい』ことを実感しました」(洋介犬さん)
Xユーザーからは、
「ほんとそう思います。神経くたびれました。Orz」
「『つまりごんは兵十の母親だったんですね』を言い出す人の割合はTwitterならもうちょっと多いかもしれませんし、ごんと兵十がハッピーになる二次創作を描く人も当然出てきます」
「創作ってこの心持ちでいるのが、けっこう大事なんですよね。全員が全員同じ感想とはならないですし、解釈が多少分かれてる方が自然かなくらいでトントンかと」
「創作どころか人が関わる全てがそーかもね」
などとコメントが寄せられました。
実は洋介犬さんは2019年に全く同じ内容のポストをしていました。そのときも5.5万の「いいね」がつく話題になりましたが、「界隈で話題になったものでも他方では『そんなポストあったんだ』というのはあるあるです。それと、『ユーザーは5〜10年で入れ替わる』という説もあり、それへの実験的な意味もあり」再投稿しました。今回も4.5万の「いいね」がついたので、おおよそ考察通りの結果だったようです。
「人はつい『言語が同じであれば自分の伝えたいことは100のうち100を伝えられる』と誤解しがちですが、実態は『20伝われば上等』なのを作家として感じています。その齟齬が諍いや曲解を生むのを承知で、言葉は選ばないといけない…ということをお伝えできれば幸いです」と洋介犬さんは話されています。
伝えることの難しさを普段から感じ、書かれていることをしっかり読み取ろうとしている筆者ですが、洋介犬さんのポストを間違って捉えていたことに取材をしていて気がつきました。伝えることも理解することもどちらも難しい。だからこそ諍いにならないような伝え方が大切だとあらためて感じています。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)