トマトを食べるなら「朝」が正解!? いま注目の「時間栄養学」を医師が解説
「体にいいものを食べているのに、効果が出ない……」それはもしかすると、食事の内容ではなく、食べる時間帯が間違っていたからかもしれません。今回は、時間栄栄養学の権威である大塚邦明医学博士による著書『大切なのは「いつ食べるか」でした。』(三笠書房)から、効果的な食事タイミングについて少しだけお届けします。
食事のタイミングで、「栄養の吸収」が変わる!
近年、「体内時計」の研究が進み、「時間」を考慮した栄養学の必要性が提唱されるようになりました。「何を食べるのが健康によいか」ではなく、「いつ食べるのが健康によいか」が注目され調べられるようになったのです。
たとえば、血糖を下げるホルモンのインスリンの効果は、朝・昼・夜の順に大きいので、朝食はたくさん食べても、夕食に比較して血糖が上がりにくい(すなわち、糖尿病になりにくい)ということがわかっています。
また、魚の脂(フィッシュオイル)は、朝にとるほうが夜にとるよりも中性脂肪を下げる効果が大きく、脂肪肝を改善する力が強いことがわかっています。
体内時計のリズムに合った食べ方こそ、健康原点であると考えられ、「時間栄養学」と呼ばれています。
朝の「トマト」は高血圧を予防する!?
トマトの赤い色素の「リコピン」には、血管をしなやかに若々しく保ち老化を防ぐという強力な働きがあって、血圧も下げてくれるということはよく知られるようになりました。そして、リコピンは朝に最も効率よく吸収されることがわかっています。
では、高血圧にならないためにはどれくらいのトマトを食べることが必要なのでしょう。
タイのマヒドル大学のメタ解析調査によれば、10〜15mgのリコピンを含むトマトジュースを飲んでいると、8週間で上の血圧は6mm 低下し、5年後には高血圧になる危険性が40%にまで減少するそうです。それではどれくらいの量をどれくらい長く食べれば十分な効果が得られるのでしょう。中国の楊教授グループの18年間の追跡調査では、高血圧になる頻度が最も少なかったトマトの量は1日当たりわずか10〜13gでした。
朝のトマトの効用は高血圧に限らず、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの予防効果も期待されます。少量のトマトを朝食の定番にということですね。リコピンはトマト以外にもニンジンやスイカにも含まれています。
夕食後の「日本茶」は血糖値スパイクに効果アリ
ポリフェノールは、植物が光合成によって生成する「抗酸化物質」のことです。糖質の吸収を和らげて血糖値を上げにくくする作用があります。
この効果は朝食後よりも、夕食後のお茶で顕著に現われます。高濃度のカテキンが含まれている高カテキン茶は、夕食後の「血糖値スパイク」の予防に有効です。
「血糖値スパイク」とは、食後に血糖値が急上昇し、短時間で急降下を起こす現象のこと。脳梗塞や心筋梗塞、がんや認知症のリスクを増大させますので、食事習慣で予防することが大切です。
とはいえ、お茶にはカフェインも含まれています。睡眠への影響を考えて夕食後のお茶は、カフェインが少なめなものを選びましょう。
「朝の柑橘類の香り」は、やせる手伝いをしてくれる!?
朝の柑橘類の香りには、自律神経に作用して体温を上げ、体調を整える働きがあります。香りの成分「リモネン」が、脂肪組織に分布する交感神経の活動を高めて体を温めてくれます。体が温まることで脂肪の分解が促進され、食欲を抑える効果もありますので、ダイエット食品としても人気があるようです。
本文は『大切なのは「いつ食べるか」でした。』(三笠書房)より一部抜粋・編集・追記しています。
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書籍紹介
『大切なのは「いつ食べるか」でした。』(三笠書房)
糖質制限など食べものに気をつけているのに全然やせない!
「健康にいいもの」を食べているのに効果が出ない……
それは、食事の「内容」ではなく、「いつ食べるか」が間違っていたからかもしれません!
ノーベル賞受賞で注目を集めた「体内時計」。
そして、その「体内時計」に合った食事をとることに着目した「時間栄養学」。
本書では、時間栄養学の観点から、「食べる時間で健康が決まるワケ」「肥満、高血圧、高血糖を予防・改善する食べもの・食べ方」等を、わかりやすく解説。
□骨粗しょう症対策のヨーグルトは「いつ」とる?
□血糖値が気になる人も「朝食に米を食べたほうがいい」のはなぜ?
□「食後のお茶」が発揮するものすごい効果とは?
□納豆と牛乳は、朝と夜で「役割」が違っていた!? …
「いつ食べるか」を意識した「時間栄養学」で、あなたはもっとラクに、健康で長生きできる!
著者紹介
大塚 邦明(おおつか くにあき)
1948年、愛媛県伊予三島市生まれ。東京女子医科大学名誉教授。医学博士。専門は循環器内科学、高齢者総合内科学、睡眠医学、時間医学。ミネソタ大学ハルバーグ時間医学研究センター特任研究員。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員研究員。九州大学医学部卒業。高知医科大学を経て、1998年、東京女子医科大学東医療センター総合内科教授、2008年、同大学東医療センター病院長に就任。日本自律神経学会会長、日本時間生物学会会長、日本循環器心身医学会会長、世界時間生物学会会長などの要職を歴任。ミネソタ大学との共同研究で開拓したクロノミクス・メディシンを取り入れた「時間治療」の開拓実践に取り組んでいる。1000を超える英文論文をはじめとして、『病気にならないための時間医学』(ミシマ社)、『最高のパフォーマンスを引き出す習慣術』(フォレスト出版)などの著作がある。