キンタロー。

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圧倒的なフィジカル

 ものまね芸人・キンタロー。の勢いが止まらない。かつて元AKB48の前田敦子のものまねネタで大ブレークした彼女が、今では再ブレークと表現しても過言ではないほどの活躍を見せている。

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 キンタロー。の再ブレークのきっかけとなったのは「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の「30-1グランプリ」という企画。そこで披露した「北京オリンピックで見た天才子供トランペッター」「中国の京劇 変面のラスト30秒あたり」「お隣の国の幼稚園児のお遊戯」などが話題になり、業界内での評価が急上昇した。

 その後も「千鳥の鬼レンチャン」(フジテレビ系)で披露した「ジャック・ニコルソン」「ドッスン」「ピカチュウ」などのものまねネタも大反響を巻き起こした。

キンタロー。

 9月23日放送の「キンタロー。のオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)では、「佐久間宣行」「あの」「女性DJ」「サザエさんの中島くん」などに扮して、最後までものまねキャラを演じ続けて1人で番組を終えるという離れ業を見せた。

 今の彼女はどこに出て行っても百発百中で爆笑をもぎ取るようなインパクト抜群のネタを量産している。見れば確実に笑ってしまう。

 しかも、安心してクスッと笑えるというような生易しいものではなく、一度見たら最後、腹を抱えて死ぬほど大笑いしてしまうようなものばかり。見た目のインパクトが強く、日本語がわからない外国人にもウケそうだ。キンタロー。がここへ来て再ブレークを果たしたのはなぜなのか。

 ものまね芸人としての彼女の魅力は、圧倒的なフィジカルの強さだ。顔と体の大きさのバランスが絶妙で、天性のコメディアンとして生まれてきたと言うしかない。体そのものが1つの才能である。

 しかも、キンタロー。は長年ダンスに打ち込んでいて、ダンス講師だった過去があり、動きのキレも尋常ではない。基本的なものまねの技術に加えて、見た目の強さと動きの巧みさがあるのだから非の打ち所がない。

島田珠代が鋭い分析

 最近のキンタロー。の好調の要因については、10月1日放送の「証言者バラエティ アンタウォッチマン!」(テレビ朝日系)の中で、彼女の先輩である島田珠代が鋭い分析をしていた。

 キンタロー。は、2人の娘を持つ母親である。島田も娘を持つ身であり、体を張ったギャグやパフォーマンスを売りにしていて、キンタロー。の芸風とも通じるものがある。

 そんな島田自身は、娘を持つようになってから、娘が自分のことでいじめられたりからかわれたりすることがないように、今まで以上に強く生きないといけないと思うようになった。キンタロー。も子供が生まれてからその意識が芽生えて、芸がパワーアップしたのではないかというのだ。

 最近のキンタロー。の活躍を見ていると、たしかにこれも一理あるような気がする。最初にブレークした頃からキンタロー。の芸には力強さがあったが、それが年々パワーアップしている印象はある。それは子供を守りたいという母性本能によるものなのかもしれない。

 さらに言えば、キンタロー。は2024年3月に松竹芸能を退社して独立している。事務所に頼らずに自分1人で生きていかなければいけない立場になったことで、さらに意識が高くなっている可能性もある。

 結婚、出産、そして独立。キンタロー。は芸人としても人間としても着実にステップを踏み、進化を続けているのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部