生活習慣病の改善に必要な「運動療法」と“我流”では何が違うの?【医師解説】

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生活習慣病は文字通り、日常的な生活習慣が原因となって発症する疾患のことをいいます。そのため症状の改善には生活習慣を改めることが必要であり、なかでも運動療法は非常に重要です。自分で行う運動と、医師が処方する運動療法では一体何が違うのでしょうか? 地域・総合クリニック十日市場の布目先生に話を聞きました。

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監修医師:
布目 英男(地域・総合クリニック十日市場)

富山医科薬科大学医学部(現:富山大学)卒業後、富山医科薬科大学附属病院(現:富山大学附属病院)、成田赤十字病院で研修。東京女子医科大学、水戸済生会総合病院、板橋中央総合病院にて糖尿病診療・総合診療に従事。葛西内科皮膚科クリニック院長を経て2024年4月医療法人知粋会 地域・総合クリニック 十日市場管理者就任。

生活習慣病にはなぜ、運動療法が必要なのか?

編集部

生活習慣病にはなぜ、運動療法が必要なのですか?

布目先生

生活習慣病には高血圧や糖尿病などさまざまなものがありますが、いずれも発症には運動不足が大きく関わっています。運動不足は肥満につながるほか、体内でインスリンの効きを悪くし、糖尿病の原因になります。そのため治療には運動を取り入れることが必要なのです。

編集部

そもそも運動療法とはなんですか?

布目先生

「障害や疾患の治療や予防のために運動を活用すること」と定義されています。たとえば骨折や腰痛など整形外科の領域における疾患でも運動療法は有効ですし、生活習慣病や心疾患、呼吸器疾患などさまざまな疾患に対しても広く用いられています。

編集部

生活習慣病の人が運動療法を行うことで、どのような効果が期待できるのですか?

布目先生

それ以上疾患が進行するのを予防したり、症状を改善したりするほか、新たな疾患の発症を予防したり、再発を防いだりする効果も期待できます。もちろん無理なく、適切な範囲で運動を行うことが大切ですが、研究により、生活習慣病は身体活動の量が多ければ多いほど、罹患発症リスクが低くなることがわかっています。

編集部

なぜ、運動療法が生活習慣病の予防や改善につながるのですか?

布目先生

運動をするなど、身体活動の量が増えると脂肪細胞が減少し、インスリンの効きが良くなります。その結果、細胞への糖の取り込みがよくなり、血糖値が低下します。また、運動をすることは、肥満解消にもつながります。肥満は生活習慣病の元になるので、減量することは症状の改善や予防に効果的です。

編集部

さまざまな効果があるのですね。

布目先生

はい。それから内臓の働きが活発になることで、糖や脂質の代謝が促されたり、血流がスムーズになったり、血管壁の伸縮性が高まったりします。それにより、血糖値や血圧、脂質の状態がよくなることが期待できます。

運動療法とは具体的に何をするのか?

編集部

具体的に運動療法とはどのようなことを行うのですか?

布目先生

有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチングなどの種類があり、症状や疾患、体力、年齢などに応じて選択します。これらを行うことによって、エネルギーを消費して肥満を解消したり、筋肉量や筋力を改善して代謝をあげたり、運動機能を高めたりすることを目指します。

編集部

有酸素運動とはどのようなことを行えば良いのですか?

布目先生

私がよく患者さんにおすすめしているのは、歩くようなスピードで行うスロージョギングやゆっくり踏み台を昇降するスローステップです。体力に自信のない高齢者でも安全に行うことができ、有酸素運動としても有効です。

編集部

自分で行う運動と運動療法は違うのですか?

布目先生

運動療法は理学療法士や医師の指導のもとで行われる運動のことをいいます。運動療法の目的はあくまでも疾患の治療や予防です。そのため運動療法においては、専門家による身体評価や日常生活における指導が重要になります。

編集部

具体的に、どのような指導をお願いできるのですか?

布目先生

理学療法士や医師による運動療法では、「運動の種類」「運動の強度」「持続時間」「実施時間帯」などに考慮して指導が行われます。また、運動療法を行う際には、たとえば糖尿病の患者さんであれば、低血糖にならないようにあらかじめ防止策を講じておくなど、準備が必要なこともあります。自分で運動を行い、低血糖などの事態が起きると危険です。その点、専門家の指導のもとで行えば、疾患や怪我のリスクもコントロールしてもらうことができます。

編集部

運動療法はどこで行うのですか?

布目先生

医療機関の中に運動施設が備わっていれば院内で行われることもありますし、指導者が常駐している民間の運動施設や保健センターなどでも行われます。もちろん、先述の指導の下であれば家庭や自宅近くの公園など、どこでも行うことができます。

生活習慣病に対して運動療法を行うときに注意すべきことは?

編集部

運動療法を行うときにはどのようなことに注意すれば良いでしょうか?

布目先生

運動療法は継続してこそ、はじめて効果が得られます。そのためあまり無理に強度を上げず、苦痛がなく、少し汗ばむ程度の運動を継続するようにしましょう。また、体調が悪いと感じたときには無理せず休息したり、中止したりすることも必要です。

編集部

ほかに気をつけることはありますか?

布目先生

いきなり運動を開始するのではなく、まずは医師によるメディカルチェックを受け、心臓や肺に問題はないか、腰や足に異常はないかなどを確認してもらうことが大事です。怪我や事故を予防するために、必ず医師のチェックを受けてから運動を行うようにしましょう。

編集部

運動療法を行ったら、薬を使わなくても良いのですか?

布目先生

いいえ、生活習慣病の治療は運動療法と食事療法、必要に応じて薬物療法という3本柱が基本です。このなかで特に重要なのは食事療法や運動療法で、これらを行うことで薬を使わなくてよくなったり、減薬できたりすることもあります。反対に薬物療法だけに頼ると肥満が助長されることもあります。そのため運動療法を行っているからといって自己判断で服薬を中断することなく、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

布目先生

運動療法を行うことで大事なのは、一喜一憂しないということです。「運動を頑張っているのに全然痩せない」「ちっとも効果が現れない」といって、途中で諦めてしまう人も多いのですが、運動療法はなによりも継続することが大切。また、継続することで少しずつ持久力や筋力もつきますし、「歩行が困難だった高齢女性が、スロージョギングを始めたところ、やがてマラソンもできるようになった」というケースもあります。途中で投げ出したくなったら医師や理学療法士に相談したり、力を借りたりしながら、根気よく続けるようにしましょう。

編集部まとめ

医師や理学療法士の指導のもとで運動を行えば、ひとりで行うよりもずっと効率的ですし、また、継続するモチベーションにもなります。生活習慣病と診断された人はもちろん、予備群に当たる人もぜひ運動療法を生活に取り入れ、健康的な生活を取り戻しましょう。

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