さんまが内臓まで食べられるのは、胃がない魚だから。内臓にはビタミンAも含まれ、肌や喉の粘膜ケアに有効
まだまだ暑い日が続きますが、秋の気配がしてきました。秋になると、サンマの塩焼きにスダチをきゅっと搾って、炊き立ての新米で、日本酒で……。想像しただけで嬉しくなってきます。サンマといえば、不漁の話題が続いていました。平成20年には35万トン近くあった水揚げ量が令和に入ってからは5万トンを下回る大不漁続き。「サンマが獲れない」「サンマ1尾1000円」などのニュースも飛び交い、食べるのを断念した年もありました。でも、今年の8月は昨年の4倍以上の豊漁! 嬉しいニュースを祝して、気になるサンマの内臓のこと、美味しさの秘密、栄養についてなどをまとめてみました。
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サンマの内臓はなぜ食べられる?
サンマの魅力の一つがほろ苦い内臓(ワタ)です。でも、「食べていいの?」「寄生虫が心配」という理由で、食べないという人が増えているようです。
そもそも、なぜ他の魚は内臓を取り除くのに、サンマの内臓は食べられるのでしょう。「サンマはプランクトンを食べているから、内臓も食べられる」と答えた人。正解です!もっと正確に言えば、プランクトンを食べているサンマには胃がなく、腸も短め。胃や腸の中に未消化の内容物が溜まっていないから、消化管内で腐敗して臭くならない。だから内臓まで美味しく食べることができるのです。こうした魚は「無胃魚」と呼ばれ、イワシやトビウオ、鯉やメダカ、金魚も、同じく無胃魚の仲間です。
寄生虫が気になって怖くて食べられないという人。安心してください。もし、寄生虫がいたとしても、加熱すれば死滅するので害はありません。塩焼きで内臓まで火を通せば、内臓も食べてOK。まったく問題なしです。
ちなみに、サンマの内臓にときどきウロコが入っているのは、漁獲時に網の中で剥がれたウロコを飲み込んでしまったせい。食べても問題ありませんが、気になる場合は、口に入れる前に軽くチェックして取り除いておくといいでしょう。
サンマのお腹の青い点は何?
イメージ(写真提供◎Photo AC)
鮮魚売り場に並ぶサンマを見た際、腹のあたりに青いインクのシミのような点があるサンマを見かけたことがありませんか?
「もしかしてカビ? 病気? 寄生虫?」などと心配になるかもしれませんが、これはウロコの色。
肝臓で作られた胆汁に含まれるビリベルジンという青色の色素が骨やウロコに影響して青色になることがありますが、天然色素なのでまったく問題ありません。
サンマだけでなく、サヨリやダツという魚の骨も青色になることがあり、初めて見るとびっくりしますが、これも同様の理由で無害です。
サンマの内臓は肝が美味しい!
胃がなく腸も短いサンマの内臓。あのほろ苦い味はいったい何の味なのでしょう? 答えは肝臓。大海原でプランクトンをたくさん食べて健やかに育った肝臓が美味なのです。
ツウの中には肝(肝臓)を取り出して醤油と混ぜて肝醤油を作り、フライパンでサンマの肝醤油でソテーにしたりするそうです。ほろ苦い肝醤油の風味をまとったサンマ、お酒に合うこと間違いなしでしょう! 新鮮なサンマが手に入ったら、試してみたいものです。
ちなみに、サンマの栄養成分をチェックしてみると、たんぱく質はもちろん、葉酸、ビタミンB2、B16をはじめとするビタミンB群、ビタミンD、鉄、カルシウム、オメガ3のDHA・EPAなどが多く含まれています。
内臓にはビタミンAも含まれているので、肌ケア、ノドなどの粘膜のケアに有効。また、鉄やビタミンB群は、貧血からくる疲労対策、代謝アップをサポート。オメガ3による血液サラサラ作用も期待できます。
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極暑の疲れで免疫が低下したり、空気が乾燥し、感染症が気になる季節がやって来ます。初秋のサンマは季節の変わり目の体のケアにピッタリ。何より、豊漁の今年はサンマの肝を美味しくいただくチャンスです。美味しいものは逃すと悔しいですから。