元製薬会社研究員が「バファリンの半分はやさしさ」を化学で説明してみた
あなたが普段飲んでいるその薬は、なぜ症状をやわらげるのか? 「薬」の奥深き世界を、元製薬会社研究員の著者が超わかりやすく解説した本『「なぜ薬が効くのか?」を超わかりやすく説明してみた』が刊行された。胃腸薬や風邪薬、抗うつ薬、睡眠薬、そして抗がん剤に至るまで、さまざまな薬のメカニズムを知識ゼロからでも楽しく理解できる一冊だ。本書の刊行を記念して、今回はその一部を特別に公開する。
バファリンの「やさしさ」の正体とは?
ひと昔前に打ち出されていた『バファリンの半分はやさしさでできている』という興味を引くキャッチコピーは、今も記憶に残っている人も多いと思います。
バファリンは発熱と痛みに効果をもつOTC医薬品で、現在は「バファリンA」という名称で販売されています。名前(BUFFERIN)は、「緩和するもの」を意味する「buffer」と「aspirin(アスピリン)」に由来しています。ここから、解熱鎮痛薬のアスピリンが含まれていることがわかります。
ここでの「緩和」は、胃へのやさしさを意味しているそうです。つまり、あのキャッチコピーが意味するのは「胃にやさしい」ということになりますね。
結論をいうと、バファリンAの半分を占めるやさしさとは「合成ヒドロタルサイト」です。この成分の構造は複雑なので詳細は割愛しますが、マグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)といった元素を含む、「アルカリ性」を示す物質です。この物質によって、バファリンAはアスピリンの効き目と、胃へのやさしさを両立させています。
胃を攻撃するのは強い酸性を示す胃液です。合成ヒドロタルサイトは、酸の作用を打ち消すアルカリ性を示すため、胃液に含まれる酸を中和して胃を守ることができるのです。
(本記事は、『「なぜ薬が効くのか?」を超わかりやすく説明してみた』(山口悟著)の一部を抜粋・編集したものです)