19日、スイス・ジュネーブで、常設展示が始まった「伸ちゃんの三輪車」を復元した彫刻作品と制作者ら(共同)

 【ジュネーブ共同】スイス西部ジュネーブの国際赤十字・赤新月博物館で19日、広島の被爆者の遺品「伸ちゃんの三輪車」を復元した彫刻作品の常設展示が始まった。作品は国際非政府組織(NGO)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が博物館に寄贈した。

 彫刻作品「未来の記憶」は博物館に入ってすぐのスペースに設置された。ジュネーブで記者会見したICANのパーク事務局長は「来館者が作品を見逃すことはないだろう。核兵器の非人間性をより訴えかけてくる」と述べた。

 遺品は、広島市の原爆資料館の代表的な展示である鉄谷伸一ちゃんの三輪車。伸一ちゃんは3歳だった1945年8月6日、爆心地から1.5キロの自宅前で、三輪車で遊んでいる時に被爆。全身にやけどを負い、その日の夜に死亡した。

 会見に同席した、鉄谷さんの親族に当たる長谷部瞳さん(39)=横浜市=は「子どもが楽しく遊ぶ三輪車が焼け焦げて痛々しい姿になったのを見てほしい」と話した。

 作品は、ICANから委託を受けた日米のアーティストらが2022年に制作。遺品の三輪車をデジタル技術でスキャンしたデータを基に、スイスで実物大のブロンズ彫刻として鋳造した。