話題を呼んでいる『ドラえもんのどら焼き屋さん物語』の魅力とは?(画像は任天堂公式サイトより)

ドラえもんとのび太がどら焼き屋を経営

Nintendo Switchで発売された『ドラえもんのどら焼き屋さん物語』が大きな話題になっている。本作は、藤子・F・不二雄のマンガ作品『ドラえもん』などを題材にした経営ゲームである。ひょんなことから、ドラえもんとのび太がお手伝いとしてどら焼き屋を経営していく作品だ。

材料を集め、どら焼きはもちろん大福にせんべいといったさまざまな商品を開発し、客席や自動販売機など設備を設置していくのが基本的な流れになる。売り上げが増えたら、ひみつ道具「ひろびろポンプ」でお店を拡張して広げ、空き地や「どこでもドア」などを設置できるようになる。


さまざまなひみつ道具が登場し、入手するたびに経営の幅がどんどん広がっていく(画像は任天堂公式サイトより)

もともと『ドラえもん』は人気マンガといえるし、関連ゲームはいろいろと登場している。しかし、Nintendo Switchのダウンロードソフトランキングで1位に躍り出るなど、本作は特に人気を集めている。なぜだろうか?

ドラえもんのどら焼き屋さん物語』で驚くのが、とにかく藤子・F・不二雄作品の要素が豊富すぎるところである。

ドラえもん』のみならず『キテレツ大百科』『パーマン』『エスパー魔美』といった他作品のキャラクターも登場するのだ。


ほかの藤子・F・不二雄のマンガ作品と世界がつながると、そのキャラクターが登場するようになる(画像は任天堂公式サイトより)

人間と牛の立場が変わった世界を描く『ミノタウロスの皿』、あるいは恐ろしいウサギ型宇宙人の物語を描いた『ヒョンヒョロ』など、メジャー寄りのマイナーといえる短編作品もフォローしている。

さらには『ぞうくんとりすちゃん』といったあまり知られていない作品までカバーしているうえ、それぞれの小ネタがたくさんゲームに盛り込まれているわけだ。

タイトルを見ると『ドラえもん』ファン向けのゲームに思えるが、そうではない。藤子・F・不二雄作品のマニアまで喜べるゲームとして作られているのである。

老舗ゲーム会社が開発

ドラえもんのどら焼き屋さん物語』を開発したのはカイロソフトである。カイロソフトは25年以上の歴史がある、経営シミュレーションゲームの老舗といえるゲーム開発会社だ。

もともとは個人開発のゲームをPCやガラケー向けなどに展開していたが、現在は家庭用ゲーム機・PC・スマホ向けのゲームを世界向けに配信している会社である。アプリのランキングなどでも顔を出すことがあるので知名度もあるだろう。


経営シミュレーションとして捉えるとゲームとしてはかなりシンプルだが、これこそカイロソフトの味だろう(画像は任天堂公式サイトより)

何より、独特の雰囲気があるゲーム会社だ。カイロソフトはこれまで70作品以上をリリースしており、牧場経営、ゲーム開発会社経営、サッカークラブ経営、学校経営など、幅広いモチーフを採用している。ここまでたくさんの作品を出せるのは、基本のシステムを流用しているからだと考えられる。

ゆえに、「どれも似通ったゲーム」だとファンから言われることがある。ゲームの操作も慣れるまでわかりにくいところがあったりと完璧ではないのだが、今回は『ドラえもん』と非常にうまく噛み合っている。

ドラえもんのどら焼き屋さん物語』がうまくいった理由はいくつか考えられる。1つは開発陣に熱心な藤子・F・不二雄ファンがいたことだろう。かなりのこだわりがあったことが見てとれる。

そして、カイロソフトのゲームとキャラクターものの相性がよいのも重要だ。本作は経営シミュレーションといえなくもないのだが、そう書くと語弊があるのも事実である。

というのも、実際のゲームプレイにおいては、増築して商品を増やしていってイベントをこなしていけば、どんどん成功するからだ。

通常の経営シミュレーションであれば戦略が失敗して破産といった可能性もありうるが、本作は資金が尽きそうになるとドラミちゃんが未来からやってきて現金をくれるのである。持つべきものは頼れる妹だ。

経営シミュレーションというよりクリッカーゲーム

いわゆるクリッカーゲーム(ボタンを押してどんどん数字が増えていく様子を楽しむゲーム)や、放置ゲーム(ほったらかしていてもお金やアイテムが増えていくゲーム)といったほうが、ゲームのジャンル説明としてはより正確といえよう。

ゆえに、『ドラえもんのどら焼き屋さん物語』は経営シミュレーションとしては歯ごたえがない。しかし、さまざまなキャラクターが登場するゲームとして捉えると、それはそれでよいのである。


ドット絵もかわいらしい。大きなテレビに映すと解像度が足りなく感じるものの、携帯モードで遊ぶには十分だ(画像は任天堂公式サイトより)

本作に求められているものは何か? それはやはり、さまざまな藤子・F・不二雄キャラクターが出てくることと、それに関連したイベントがあることだ。もしゲームとしての難易度が高ければ、それらを楽しむ障害になりうるのである。

このように、本作は藤子・F・不二雄のキャラクターとカイロソフトのゲームがうまく噛み合った一作になっている。今後もカイロソフトと有名キャラクターのコラボレーションがありえそうなほど、相性がよいゲームといえるだろう。

(渡邉 卓也 : ゲームライター)