三笘薫(C)日刊ゲンダイ

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 2026年北中米W杯アジア地区最終予選の初戦(5日=埼玉スタジアム)でFIFAランク18位の日本代表は、同87位と格下の中国代表を圧倒的に攻め立て、7-0で勝ち点3を難なくゲットした。

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 そもそも中国戦の圧勝劇は、それぞれの代表メンバーの所属先を見るだけで想定内だった。

 DF8人中、ドイツの板倉滉、英プレミアの菅原由勢ら半数の4人が欧州でプレー。MFとFWにいたっては16人中、パリ五輪世代の柏FW細谷真大以外の15人が、欧州各国リーグでプレーしている。中国は来日した27人すべてが国内の超級(1部)リーグに所属。実に対照的だった。

 森保ジャパンの攻撃系選手の中では、中国戦でプレーした「2列目」の充実ぶりが際立っている。

 先発組では2点目を決めた英プレミアの左FW三笘薫(27=ブライトン)、後半序盤に2得点のフランスのFW南野拓実、三笘のゴールをアシストしたドイツのFW堂安律、トップ下で存在感を示したスペインのFW久保建英(23=Rソシエダード)、そして後半18分から途中出場して5点目を決めたフランスの右FW伊東純也(31=スタッド・ランス)──。

 初の3人同時先発は実現しなかったが、「左・三笘、センター・久保、右・伊東」の組み合わせが成熟度を増せば、森保ジャパンの攻撃力も飛躍的にアップするだろう。元サッカーダイジェスト編集長の六川亨氏がこう言う。

「中国は引き分けに持ち込んで勝ち点1を狙うのではなく、負けてもいいから失点を少なくしたいという戦術を採用して、後半は4バックから5バックに変更して守りを固めた。しかし、実力差は歴然としていました。日本の2列目の選手の中では、左サイドの三笘は欧州でも屈指のドリブラーとして認められ、右の伊東はスピードスターとして仏リーグで傑出した存在となっている。この日はタイプの異なる両翼の同時出場はならなかったが、久保は三笘、伊東とそれぞれ絶妙の連係を見せながら、相手ゴールに迫っていった。三笘も伊東も7カ月ぶりの代表復帰だったが、特に伊東は5点目のゴールを決めた後、右サイドからクロスを入れてFW前田大然の6点目をアシスト。終了間際には左サイドからゴール正面の久保にラストパスを送り、7点目をお膳立てした。この三笘ー久保-伊東の3人が2列目に同時に入って機能すれば、アジア最終予選の先のW杯本大会で、目標とする8強入りも十分に期待できるでしょう」

主軸DF冨安はケガが度重なり…

 今招集メンバーで国際Aマッチ最多出場は、FC東京のDF長友佑都の142試合。英プレミアの遠藤航(31=リバプール)が63試合で続く。

 守備的MFとして攻守にわたって奮闘する遠藤は主将も務め、前半12分には先制点を叩き込んだ。森保ジャパンの心臓部のような存在なのである。

「湘南、ドイツと所属チームで主将を務め、本人も主将キャラであるという自負を持っている。この日、ゴールも決めて存在感を見せたとはいえ、背中で引っ張るタイプで、強烈なキャプテンシーを発揮しているわけではないのが実情です。しかも、リバプールで2年目となる今季は控えに降格となり、開幕3試合連続でベンチスタート。出場は第2節・ブレントフォード戦の後半追加タイムからの1試合のみ。ベンチウオーマーどころか、ベンチ外になりかねない状況に追い込まれ、年明け1月の移籍期間に放出という噂もチラホラ流れている。そうなると代表内での序列低下は免れない。でも、今の日本代表には後任の主将候補が見当たらない。出場試合数でいうと60試合の南野、55試合の伊東、52試合のスペインFW浅野拓磨ということになるが、3人ともピッチ内外でリーダーシップを発揮するタイプとは言い難い。ベテラン長友が盛り上げ役として代表入りしたが、中国戦もベンチ外だったように、戦力としてはとっくにピークを過ぎている。森保監督も<ポスト遠藤>が頭痛の種になりかねません」(サッカー関係者)

 8月29日に発表された代表メンバーの中でサプライズだったのが、DF高井幸大(川崎F)のA代表初招集である。

 4日に20歳となった高井は、主力DF冨安健洋、伊藤洋輝が故障で不在の中、パリ五輪の最終予選を兼ねていた4、5月のU23アジアカップ、五輪本大会で好パフォーマンスを発揮したことで抜擢された。若手を引き入れることでチーム内の競争心をあおる意味合いもあるのだろうが、欧州事情に詳しいサッカー関係者がこう言う。

「特に冨安はケガが多く、計算が立たない。しかも、中国戦に3バックのセンターで先発したベルギーの33歳DF谷口彰悟は、年齢的に下降線をたどっていく。後半26分に板倉滉に代わって交代出場し、A代表デビュー戦をそつなくこなした高井は、冨安、伊藤の代役ではなく、あくまでW杯本番でのレギュラー候補として期待を込めた選出であり、中国戦での起用だった」

 森保ジャパンの命運は、三笘ら5人のキーマンが握っているといえそうだ。