ボクシング世界戦で異例の会見 “仲良し”武居&比嘉がニコニコ舌戦「殺気を持ち…」「よろしく」
武居由樹VS比嘉大吾
ボクシングのWBO世界バンタム級タイトルマッチ12回戦が9月3日に東京・有明アリーナで行われる。王者・武居由樹(大橋)と同級1位・比嘉大吾(志成)が対戦。両者は8月31日、神奈川・横浜市内のホテルで会見したが、親交が深いためにこやかな時間となった。NTTドコモの映像配信サービス「Lemino」で独占無料生配信。戦績は初防衛戦の28歳・武居が9勝(8KO)、29歳の比嘉が21勝(19KO)2敗1分け。
異例の“にこやかな舌戦”が繰り広げられた。王者・武居は「こんにちは、足立区から来た大橋ジムの武居です」といつも通りの言葉で挨拶。隣りに座る比嘉の印象について「試合が決まってから初めてお会いするけど、いつもと変わらないニコニコした感じ。そこに騙されないように自分が殺気を持って倒しに行きたいと思います」とニヤリと笑った。
武居は育ての父として慕う格闘技ジム「POWER OF DREAM」の古川誠一会長と二人三脚でK-1世界王者に。大橋ジムでボクシング転向後は、元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーに師事し、21年3月にボクシングデビューした。8勝(8KO)のパーフェクトレコードで今年5月の東京ドーム興行で世界初挑戦。ジェイソン・マロニー(オーストラリア)に判定勝ちし、涙の王座奪取を果たした。
この日は「5月の試合ではバチっと倒し切れなかった。今回は大吾さん、すみません、バチっと倒させていただきます」と丁寧にKO宣言。「自分の距離と自分が当てたいパンチをバンバン当てて倒れてもらいます、すみません。絶対にKO決着になると思うので皆さん楽しみにしていてほしいです、すみません」と何度も比嘉に恐縮しながら強気の言葉を発し、会場の笑いを誘った。
武居と師匠の八重樫東トレーナーは過去、比嘉を指導する野木丈司トレーナーの過酷な階段トレーニングに参加し、親交が深い。マイクを握った比嘉は「沖縄県から来た比嘉です」と武居の挨拶文句を引用。「体重も順調。練習もしっかりできているので万全な状態で挑みます」と力を込めた。
武居については「やっぱり仕上がっている。(日焼けで)黒いし、走り込んできたのがわかります。全試合の中で一番いい試合をしたい」と気合い。こちらも笑顔を交え、丁寧に応戦した。
「やっぱり武居君はパンチ力が一番。KO率を見たらそこに目がいく部分もあると思う。でも、距離感が自分の中では評価しているところ。遠い距離から踏み込んできたり、距離を取るのがうまい選手。そういうことを見越しながら練習してきた。僕も倒す練習しかしてこなかったので、よろしくお願いします」
両トレーナーも敬意&火花、八重樫氏「大吾の性格もわかってる」野木氏「大吾は頭を下げて…」
比嘉は18年4月に世界戦では日本人初の体重超過を犯し、2度防衛したWBC世界フライ級王座を剥奪。資格停止処分を経て1敗したが、再起後4連勝で6年5か月ぶりの世界戦にたどり着いた。バンタム級は武居のほか、WBAに井上拓真、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑が就き、全4つの王座を日本人が独占。拓真は10月13日に元日本王者・堤聖也の挑戦を受け、那須川天心も同級で世界獲りを見据える。
サバイバルに臨む両選手のトレーナーも敬意を持って意気込んだ。武居を指導する八重樫トレーナーは「野木さん、大吾とはずっと一緒にトレーニングしてきた仲間でもありますが、今回はこういう立ち場でしっかり乗り切って、敬意を持って戦いたい」とした。
「僕は現役の頃から野木さんに指導を受け、トレーナーとしても先輩になる。大吾の性格もだいたいわかっている。それこそ野木丈司トレーナーの頭の中をしっかり考えた上で武居といろいろなプランを練ってきた。見ている方がびっくりする展開になるのではないかと思います」
対する野木トレーナーは「非常に仲間意識の強い同士みたいな関係。きついことを積み重ねていくと絆が生まれる。そういう間柄ではありますけど、大吾は頭を下げて入ります」と試合プランを不敵に宣言。15戦連続KO勝ちの日本記録を持つ愛弟子に期待した。
「当日のリングに上がる時には獰猛な、獣みたいな比嘉大吾とその手綱を引くトレーナーになります。メンタルを瞬時に切り替えてやりたい。一瞬で終わるような、決め手を持つ2人の試合なのでいつ終わるかわからない。そういうドキドキがある。いろいろな作戦をその都度、その都度駆使しながら状況を見極めて戦いたい」
試合はセミファイナル。メインイベントでは、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が元IBF王者TJ・ドヘニー(アイルランド)と4団体防衛戦を行う。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)