飼っているネコが部屋に入ってこないようにドアを閉めると、ドアの前にいるネコがとてもイライラしながら、隙間から腕を突っ込んだり、ドアを足で引っ掻き始めたり、興奮した鳴き声をあげながらドアを攻撃したりすることがあります。なぜネコが閉じたドアを嫌うのかについて、科学系ニュースサイトのLive Scienceが解説しています。

Why do cats hate closed doors? | Live Science

https://www.livescience.com/animals/domestic-cats/why-do-cats-hate-closed-doors

獣医行動学の専門家であるカレン・スエダ博士は、ネコが閉じたドアを嫌う理由の1つとして「見逃すことへの恐怖(Fear Of Missing Out:FOMO)の一種です。ネコは『向こう側に何があるのかわからないから、見に行って確認したい』と考えるのです」と解説しています。

FOMOはネコに限らず、人間でもソーシャルメディアの普及にともなって顕著になったと言われている心理現象で、動物の生存本能とも深く関連しているといわれています。ネコは本来捕食者であると同時に、大型の肉食獣にとっては被食者になり得る動物です。そのため、常に周囲の状況を把握し、潜在的な危険を見逃さないようにする本能が働いているというわけです。



ネコ行動コンサルタントのイングリッド・ジョンソン氏は「ネコは空間へのアクセスや基本的な欲求、そして縄張りをコントロールしたがります。これはネコが捕食者でありながら被食者でもある種として、生き残るために狩りをしなければならず、同時に安全を確保する必要があるからです」と述べています。

ネコ専門の行動学者であるジェーン・エーリッヒ氏は「ネコが嫌う3つのC」として、「選択肢(Choice)がないこと」「制御(Control)できないこと」「変化(Change)すること」を挙げています。閉じたドアはこの3つのCをすべて含んでいるため、ネコにとっては大きなストレス要因となります。



また、ネコと飼い主の関係性も無視できない要素です。2017年の研究によると、ネコは食べ物やおもちゃよりも人間との交流を好むことが明らかになっています。閉じたドアはこの人間との交流を妨げる障害物としてネコに認識されている可能性もあります。

加えて、ネコは人間のような時間の概念を持っていません。そのため、ドアが閉じているのは一時的なことだとは理解できず、自分の居場所や重要なリソースへのアクセスが永久に失われたと誤解してしまうこともあります。



ジョンソン氏は、突然のルール変更はネコにストレスを与える可能性があるため、ネコが特定の部屋に立ち入ることを禁止する場合は常時禁止のルールを維持するなど、一貫性のある環境管理を推奨しています。

また、スエダ博士は「ドアに対するネコの行動が極端に激しい場合や、激しく鳴く、耳を平らにする、シーシーと唸るなどの行動が見られる場合は健康上の問題がある可能性もあるため、獣医への相談を検討すべきです」とアドバイスしています。