【世紀の事件の真相】ノルドストリーム爆破事件の犯行国はウクライナではなく、あの大国!!

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天然ガスパイプラインが爆破

2022年9月26日、ロシアからドイツへ天然ガスを供給するためのパイプライン(PL)、ノルドストリーム1(NS-1)とノルドストリーム2(NS-2)が爆破された(下の地図と写真を参照)。その犯人はいまだにわかっていない。しかし、ドイツ検察庁は、同事件に絡む初の逮捕状を発行したことが最近になってわかった。

NS-1とNS-2は、バルト海の下に敷設され、ロシアからヨーロッパへ年間最大1100立法メートルのガスを輸送する。このプロジェクトには、ロシア(世界有数のエネルギー企業ガスプロム)、ドイツ、オランダ、フランスの企業が参加した。

そのPL4本のうち3本が深さ約80メートルで爆破された事件は、ロシア、ドイツ、スウェーデン、デンマークの法執行当局が刑事手続きを開始した。後者2カ国は、今年初めに捜査を打ち切り、自国の管轄権はこの事件には適用されないと宣言した。ドイツだけがヨーロッパで事件の捜査をつづけていたことになる。

ドイツ側は、ウクライナ国籍のダイビング・インストラクター、ヴォロディミル・ジュラヴレフが妨害行為に関与した疑いがあるとみている。ドイツのメディアによると、彼はバルト海の海底に爆発物を仕掛けるために使われたと疑われているアンドロメダ号に乗っていたという。しかし、容疑者が滞在していたポーランドの政府が、ドイツからの身柄引き渡し要求を無視したため、容疑者を拘束することはできなかった。

ドイツの報道

8月14日、ドイツの3大メディア(ARDテレビ局、南ドイツ新聞、ディー・ツァイト紙)は、この事件に関する共同調査の結果を発表した。たとえば、「ツァイト」は、逮捕状の出た人物を「ヴォロディミル・S」と記し、その家は、ワルシャワ南西の郊外プルシュクフの閑静な住宅街にあると書いている。記事によれば、ドイツ政府は6月の段階でポーランド側に逮捕状を送っていたという。

ドイツ側の捜査の結果、Sは爆発の起きる2週間以上前の2022年9月8日の夜、リューゲン近郊で白いシトロエンに乗っており、乗組員をヨットに案内していた。スピードカメラの写真には、Sと思われる男が写っているという。

ドイツ捜査当局は、爆発物を積んだヨット「アンドロメダ号」には、5人が乗っていたことを突き止めた(航海は2022年9月7日[6日説もある]に始まり、9月23日に終わったとみられ、26日の爆破は遠隔操作した)。5人全員がウクライナ語を話すとされているが、偽造パスポート(ブルガリアとルーマニア)を所持していた可能性がある。

そのうち3人は民間人(ダイビングスクールの運営者であるエヴェン・Uとその妻スヴィトラーナ、そして、彼らの友人で、ダイビング・インストラクターのS)だという。ドイツ当局は、船上からオクトゲン(主に軍で使用される爆発物)の痕跡を発見したと主張しているという。

ARDは、ドイツが指名手配したのがウクライナ人の「ヴォロディミル・Z」であると記述している。「13日の短い電話会談で、Zはこの告発に驚きを示した。彼はノルドストリームへの攻撃への関与を否定した」と書かれており、どうやらARDは独自に容疑者に接触し、Zは爆破事件への関与を否定したというのだ。

ドイツ捜査当局は、「アンドロメダ号」が犯行に使われたとみなしている。「あらゆる種類のDNAの痕跡や指紋に加え、捜査当局は、主に軍で使用される爆発性の高い特殊爆薬の痕跡も発見した」と書かれている。

小さすぎる「アンドロメダ号」

しかし、ドイツ捜査当局の見立てがまったく奇妙であることは明らかだ。理由は簡単だ。ヨット「アンドロメダ号」は小さすぎるのである。下の写真から想像しても、このヨットの一回の航海で3カ所に爆弾を仕掛けることはできそうもないのだ。

ロシア側の分析報道によれば、この「アンドロメダ号」は、スウェーデンの造船所ナジャドで建造され、モデルはアフロディーテ42(数字は船の長さをフィートで表す)、全長12.8メートル、全幅3.7メートル、排水量9.5トンである。これらのヨットは1990年代に建造されたが、その多くはまだ現役であるという。

まず問題なのは、爆薬の量とその設置方法だ。ドイツのBILDの「テロ実行に使われたとされるヨットについて」という昨年3月17日付の記事によると、3回爆発させれば、少なくとも1500kgの爆薬(TNT)が必要だったはずだが、「アンドロメダ号には、そのような量を水中で降ろすための特別なクレーンはない」と書かれている。

先のロシアの分析では、爆薬を仕掛けるためには、ヨットを何らかの方法で長時間一箇所に留めておく必要があったはずだが、水深70〜90メートルに複数のアンカーを設置することは不可能だという。さらに、爆発が起きた地域の9月18日から25日の天候は、水中での作業に適していたとは言い難いという。風速10ノット以下が観測されたのは、9月21〜22日と23〜25日だけで、他の日は水中での作業には適さない天候だった。

潜水機材も多く、また重いことにも留意しなければならない。40メートルを超える水深で行われる作業用に「水中スクーター」(下の写真)が使われる。ロシアのダイビング・インストラクターの話では、「スクーターは通常、長さ1メートル、幅30〜40センチだ。強力なバッテリーと強力な電気モーターを搭載している」。

もちろん、ダイバーは12リットルまたは15リットルのボンベ(背中にある)と、減圧用のステージボンベが必要になる。これらは別々に、通常は特別なハーネスで脇と背中に装着する。別の選択肢として、いわゆるリブリーザー(閉鎖式[または半閉鎖式]で呼吸を循環させる装置)と呼ばれるクローズドサイクル装置(これも背中に装着する)を使用することができる。

この場合、より小さなシリンダーが使用され、混合物は精製され、繰り返し使用することができる。しかしこの場合も、リブリーザーが故障した場合に備えて、予備のステージシリンダーを用意する必要がある。

これらはいずれも、少なくとも3人分は必要だろう。さらに、何度も潜るとなると、混合ガスを準備するために、ヨットにガスがなければならない。ヘリウムと酸素を入れた40リットルのボンベがいる。そのためには、ヨットにコンプレッサーがあることが条件となる。

どうだろうか。これだけの「荷物」を「アンドロメダ号」に積んで、2週間以上の航海が本当に可能なのだろうか。

WSJの報道にも疑問

8月14日、今度は「ウォール・ストリート・ジャーナル」が「ノルドストリーム・パイプライン妨害事件の真相」なる記事を報じた。記事は、「2022年5月、ウクライナの軍幹部やビジネスマンたちが集まり、ロシアの侵攻を食い止めた自国の目覚ましい成功に乾杯した。酒と愛国心に酔いしれ、だれかが次の段階として、ノルドストリームの破壊を提案した」と書いている。

つまり、爆破は民間企業が費用を負担し、軍が実行する取り決めで、当時のヴァレリー・ザルジニー総司令官に報告され、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領も当初、計画を承認したという。だが、オランダの情報機関が計画を察知し、情報を伝えられた米中央情報局(CIA)が計画の中止を求めたが、ザルジニーは実行役がすでに派遣されており、外部との連絡を断っていると説明、爆破が実施されたとしている。

しかし、この筋書きは「アンドロメダ号」による犯行を前提としており、ここで説明した物理的困難という疑問にまったく答えていない。つまり、「真っ赤な嘘」である可能性が高い。現に、「ワシントン・ポスト」は昨年4月3日付の記事で、「捜査当局が手がかりを求めて捜索した50フィートのヨットが、おとりである可能性を疑っている」と書いている。

犯人はアメリカ政府!?

本当は、爆破事件の犯人はわかっている。拙著『帝国主義アメリカの野望』(106頁)では、つぎのように書いておいた。

「ピューリッツァー賞の受賞歴のあるジャーナリスト、シーモア・ハーシュは2023年2月8日、「アメリカはいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか」という長文の記事を公開した。そのなかで、彼は「作戦計画を直接知っている」ある無名の情報源を引用して、米海軍の「熟練深海ダイバー」が2022年6月の訓練中にC-4爆薬を仕掛け、その3カ月後に遠隔操作で爆発させた方法を詳述している。

バルト海海底に敷設されたガス輸送用PL爆破の命令を下したのは、ジョー・バイデン大統領であるというのだ。具体的には、バイデンの外交チーム(国家安全保障顧問ジェイク・サリバン、国務長官トニー・ブリンケン、国務次官ヴィクトリア・ヌーランド)がかかわっていたという。

バイデン大統領の直接関与

バイデン大統領は2022年2月7日、ホワイトハウスでドイツのオラフ・ショルツ首相と会談した。その後の記者会見でバイデンは、「もしロシアが侵攻すれば、つまり戦車や軍隊が再びウクライナの国境を越えれば、ノルドストリーム2はなくなる。私たちはそれを終わらせる」と口走る(YouTubeを参照)。この発言は、「東京に原爆を置いて、それを爆発させると日本人にいっているようなものだ」と、その関係者が話したと、ハーシュはのべている。

読者もこのYouTubeをじっくりとみてほしい。バイデン大統領の「したり顔」に嘘はない。ウクライナ側が2022年5月に爆破を提案しなくても、2月の段階で、すでにアメリカ政府は爆破準備を進めていたのである。

バイデンはなぜ、NS-1とNS-2を爆破したのか。ハーシュは、バイデンが爆破を決断した理由について、「ヨーロッパが安価な天然ガスPLに依存する限り、ドイツなどの国々は、ウクライナにロシアに対抗するための資金や武器を供給するのをためらうだろうと考えたのだ」と説明している。

要するに、PLを利用不能にすることで、ドイツがロシア産天然ガス輸入を可能として、ドイツの対ロ依存関係を完全に解消させ、同時に、その代替として、アメリカのLNGを輸入するように仕向けることで、ドイツをアメリカの顧客に取り込もうとしたというのである。

このハーシュ説について、ホワイトハウスは昨年2月8日、ハーシュの投稿を否定した。国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、「これは全くの虚偽であり、完全なフィクションである」とのべた。米国務省の報道官も同じことを言った。

中央情報局(CIA)の報道官もホワイトハウスの否定に同調し、この報道を「完全な虚偽」だとした。これに対して、ロシア外務省は、2022年にノルドストリーム海底ガスPLを破壊した爆発に、アメリカが関与した疑惑について答える必要がある、とのべている。

国連による調査を阻むアメリカ

国連安保理で、この爆破事件の国際調査委員会の設立が進まないことをみれば、主犯であるアメリカに立てつけない各国の情けない状況が浮き彫りになってくる。国連は当初、デンマーク、ドイツ、スウェーデンの当局によるそれぞれの国内調査を待つという姿勢をとった。

爆発物の使用が漏出の原因であることを示す昨年7月10日付の議長宛ての3カ国による共同書簡が届くが、今年2月、スウェーデンとデンマークは調査終了を安保理に通知した。いずれも、自国の管轄権外の事件として、自国の司法権が適用されないため、調査は終了すべきとした。事件が意図的な爆破によるものであること以外には、まったく成果はなかったことになる。

今年3月、ロシアは懸念を繰り返し、ノルドストリームの爆破事故をさらに調査するための国際委員会の設置を求めた。4月26日の安保理では、この問題が話し合われたが、何の進展もなかった。要するに、アメリカに首根っこを押さえられているために、国際調査委員会の設置など実現するはずもない状況にあるのだ。ドイツ当局のお粗末な捜査が終わっても、状況はまったく改善されないだろう。

NATO諸国は『見ざる、聞かざる、言わざる』の三猿

唯一の成果は、この安保理で発言した、政治評論家でテロ対策の専門家であるラリー・ジョンソンが「NATO諸国は『見ざる、聞かざる、言わざる』の三猿の姿勢を取っているようにみえる」という言葉であったように思える。

こうした実態を報道しない欧米諸国や日本のマスメディアは、この「見ざる、聞かざる、言わざる」という政府のもと、アメリカ寄りの「嘘を見、聞き、言う」ことで、各国の国民を騙しているようにみえてくる。

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