日大藤沢で10番を背負う布施克真【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

写真拡大 (全2枚)

高卒プロか大学か…日大藤沢高校MF布施克真が下した決断

 高3の夏。

 この時期は進路に迷う時期だ。高校サッカーに打ち込む選手たちの中で、高卒プロか大学に進むかの選択で揺れ動く選手も少なくない。U-18日本代表で、日大藤沢のボランチで10番を背負うMF布施克真は、この2択に対して昨年の段階で1つの結論を出した。

「高卒プロになってもBチームで試合に出られなかったり、練習試合でしか経験を積めなかったりする人もいる。そういう現実に加え、自分の実力、現在地をしっかりと見つめ直したうえで、僕は大学でしっかりと力を積み上げてからプロの世界にチャレンジするべきだと考えました」

 布施はフィジカルが強く、運動量も豊富で、鋭い読みを駆使してボールを奪い取る技術に長けている。パスセンスやキープ力もあり、ボールを受けてからのゲームメイク力は高いものがある。チームのために汗をかけて、かつ攻守をつなぐパイプ役もできて、リズムも作れるチームの心臓として高2の頃から評価を高めてきた。

 昨年11月のU-17ワールドカップ(インドネシア)のメンバーに安定感を買われて選ばれると、選手権にも注目選手として出場。今年は「世界で戦うためにはもっとフィジカルが必要だと感じた」と筋トレを重点的に行い、かつ身長も伸びたことで、より屈強なボールハンターとして存在感を放っている。

 今年8月に行われた和倉ユースサッカーフェスティバルでは全国の強豪校、強豪Jユースを相手に激しい球際と鋭いインターセプト、奪ってからの展開力を存分に披露して優勝の原動力となった。8月22日から始まるSBSカップ国際ユースサッカーに出場するU-18日本代表にも選出されるなど、高卒プロも十分に狙えるタレントだ。

 実際に彼に興味を示していたJクラブは複数あった。しかし、前述したとおり彼は早々に大学行きを決断した。

「そもそも日藤に入った頃はまさか自分がプロに興味を持ってもらえる選手になるなんて思ってもみませんでした。有難いことにJクラブから練習参加のお声掛けはいくつかいただいていたのですが、今の僕はやっぱり焦らずに大学でフィジカルや技術、周りとのコミュニケーション力に加えて、サッカーを多角的な視点で見ながら学ぶことで、プロで戦える土台を築いてからでも遅くはないと考えました」

Jデビュー済み、広島の逸材タレントに脱帽「敵わない」

 実はそう考えるきっかけになったのが、U-17日本代表で同じボランチだった中島洋太朗の存在だった。すでにサンフレッチェ広島でJ1リーグ7試合に出場し、かつて広島でプレーした中島浩司氏を父に持つ。類まれな才能を見せて将来を嘱望されている18歳の“大物”のプレーを目の当たりにし、現実と自分自身を見つめ直す機会を与えてもらったという。

「代表メンバーの中で自分のフィジカルは誰よりも強かったりするのにもかかわらず、中島選手にはその武器であるフィジカルをそもそも当てることができなかったんです。彼は360度、コート全体が見えていますし、その状況下で一番いい選択を常にするんです。相手がうしろから来ていても奪われないし、3、4人きても交わしていく。なんでもできる選手で、僕が寄せに行こうとしても敵わない。練習でやっていても『こんなに違うんだ』と感じるほど凄くて、『自分は大したことないんだな』と思わされた選手。こういう選手が高卒プロで行くべきだと思いました」

 自らの考えは固まった。あとは4年後プロになるために何をすべきか、残りの高校サッカーで何をすべきか。頭の中には具体的なビジョンが構築されている。

「去年は全国でも上を狙える代でプレーさせてもらって、色々なことを学ぶことができたし、周りの3年生に僕の良さを引き出してもらえたという感覚でした。でも、今年は自分がそれをやらないといけない立場なので、普段の練習のあとでも遠征の宿舎でも、同級生や後輩など周りの選手とコミュニケーションを積極的にとって、イメージを共有したり、疑問に対して答えたりすることで、チーム力の向上に少しでも貢献できたらと思っています。インターハイを逃したぶん、選手権には絶対に行きたいので、足元と上を見つめて進んでいきたいと思います」

 自分を知り、現実を知ったうえで、自分が何をすべきか、どのような道を歩んでいくべきかを考えて突き進む。これらがあれば、どちらの道を選ぼうがきっとそれが正解となる。彼の言葉からは強い意志を感じた。(FOOTBALL ZONE編集部)