止まらぬSNS被害 ブレイキンで女子ダンサーが“嘲笑の的”に 豪選手団が猛反発「泣いていることもあった」【パリ五輪】

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独自のスタイルで話題を生み出したガン。(C)Getty Images

 日本でも小さくない話題をさらった競技で生じた“問題”が波紋を呼んでいる。

 現地時間8月9日と10日に行われたパリ五輪の女子と男子のブレイキンは各国から熱視線が注がれた。DJが即興で流す音楽に合わせてそれぞれがパフォーマンスを披露し、1対1で対決。「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の5つの要素からなる採点でメダルを争う同競技は、パリ大会で五輪初採用。新時代の“スポーツ”としてSNSなどでも話題となった。

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 各国ダンサーたちのユニークな試技が会場を盛り上げた。一方でSNSでは一部の視聴者から選手を嘲笑するような意見が噴出。誹謗中傷とも取れるコメントも目立つ異常事態となった。

 9日の女子部門に出場した豪州代表のレイチェル・ガン(ダンサー名・Raygun)に対するそれは、下劣さを極めた。もちろんポジティブな意見もあったのだが、同競技で全体最下位となった彼女の「『創造性』が何よりも重要だった」(本人談)というオリジナルダンスに対して、「酔っぱらいのようだ」「最悪のダンスだ」「二日酔いなの?」「こんなんでオリンピック出られるのか」などの辛辣な意見が相次いだ。

 当人は大会後に「若い選手たちに力強さじゃ勝てない。私は常に弱者だったし、違う方法で自分の足跡を残したいと思っただけ」とコメント。周囲の反響など意に介さなかったが、あまりの嘲笑的なコメントの多さには、関係者が警鐘を鳴らす。

 英公共放送『BBC』の取材に応じた豪選手団のアンナ・ミアーズ団長は、「SNS上の荒らしだったり、ネット戦士の酷いコメントをこうして取り上げないといけないこと自体が、本当に残念なことだと思う」と強調。「私は彼女の勇気が大好きだし、人柄も愛している」と訴え、持論を展開した。

「彼女のような愛すべき人がこういう被害に遭ってしまうことが残念でならない。彼女は2008年に男性中心となっているこのスポーツに唯一の女性として参加して泣いていることもあった。自分が愛してやまないスポーツに参加する機会を得るために大きな勇気が必要だったんです」

 批評の域を越えたアンチコメントは言語道断。選手たちの重ねた努力を称える文化が根付くことを願うばかりである。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]