担々麺ブームを牽引した名店と、名古屋中華料理界のレジェンド・チャーハン先生の完璧チャーラー【チャーラー祭り実食ルポ】
『おとなの週末Web』で好評連載中の「ニッポン“チャーラー”の旅」から端を発した(!?)、スタンプラリー型の食べ歩きイベント「チャーラー祭り2024夏 supported by おとなの週末」が、2024年8月31日まで愛知県内の中華料理店全12店を舞台に開催中。公式アンバサダーを務めるライター・永谷さん自ら全店制覇を目指します。その第5弾。今回も2軒巡りました。
担々麺の名店がチャーラー祭りに参戦!
6月15日(土)に開幕した「チャーラー祭り2024夏 supported by おとなの週末」も終盤に入った。参加店の大半は昔から地元の人々に愛される中華料理店、いわゆる町中華だが、今回紹介する『想吃担担面(シャンツーダンダンミェン)』は担々麺の専門店。
もともと中華料理店として1954年に創業し、18年前に名古屋駅新幹線地下街「エスカ」内に『想吃担担面』1号店を開店させたところ、名古屋で担々麺の1大ブームを巻き起こした。筆者もここの大ファンで、とくに「汁なし担々麺」(990円)にハマって、頻繁に足を運んでいる。だからこそ、チャーラー祭りに参加してくれたことがとてもうれしかった。
しかも、提供されるのは、ハーフサイズの汁あり・汁なしの担々麺2種と半チャーハン、搾菜をセットにした夜限定の「チャーラー定食」(1600円)。『想吃担担面』は愛知県内に6店舗展開しているが、チャーラー祭りに参加しているのは、名駅南店のみなのでご注意を。
これが「チャーラー定食」。もう、圧巻のビジュアル! 名物である汁あり・汁なし2種類の担々麺が同時に味わえるのは、店のファンとしてはこんなうれしいことはない。
どれから食べようかと迷っているうちに麺が延びてしまわないように、まずは汁あり担々麺からいただいた。ストレートの細麺を箸で持ち上げると、麺にスープが絡みまくる。自家製の芝麻醤をたっぷりと加えているのでスープの表面にとろみがあり、それが麺をコーティングするのだ。
麺を頬張ると、口の中いっぱいにゴマの風味とラー油の辛味が広がる。複雑な味わいがするのは、ベースとなるスープのクオリティの高さとラー油に配合された香辛料のバランスが秀逸だからだろう。
汁なし担々麺の具をのせた“担々チャーハン”
無性にチャーハンが食べたくなった。チャーハンはチャーシューとネギ、卵とシンプル。担々麺とのセットゆえに個性は不要なのである。口の中に充満した汁あり担々麺の風味を中和させるためにガッツリと食べたいところだが、汁なし担々麺が控えているので、ここはグッとガマンすることに。
筆者の大本命である汁なし担々麺は、まぜそばのように麺とタレ、具材をしっかりと混ぜて食す。コシのある平打ち麺に濃厚な芝麻醤とラー油がよく絡む、というよりも麺とタレとが一体となっている。濃厚なゴマの風味とラー油や香辛料の香りと刺激がとても心地よい。
汁あり担々麺を食べた後と同様に、いや、それ以上にチャーハンが食べたくなるが、敢えてここでチャーハンには手を付けず、汁なし担々麺を完食した。チャーラーはチャーハンとラーメンを交互に食べるのが作法である。しかし、汁なし担々麺の場合は異なる。
『想吃担担面』は担々麺を注文すると、無料で麦入りのご飯が付く。しかも、大盛りもおかわりも自由。汁なし担々麺の楽しさは、麺を食べ終わった後、器に残った肉味噌やネギをご飯にのせて担々飯にして〆ることができる点だ。筆者はこれ目的で汁なし担々麺を注文していると言っても過言ではない。
しかし、チャーラー祭り限定の「チャーラー定食」は、ご飯ではなくチャーハン。汁なし担々麺の具をのせた担々チャーハンはどんな味になるのか。搾菜もトッピングしていただきます!
……。思わず言葉を失った。チャーハンと濃厚な芝麻醤、ラー油がケンカすることなく、見事なまでに調和しているのだ。担々麺の具をのせたチャーハンは反則といわれればその通りかもしれないが、こんな旨いチャーハンを食べたのは後にも先にもないだろう。いやー、大満足だった。
半世紀以上にわたって地元で愛される老舗町中華
7月は「チャーラー祭り2024夏 supported by おとなの週末」の公式アンバサダーとしてのPR活動が忙しかった。地元FM局、ZIP FM『SUPER CAST』に出演させていただいたとき、ナビゲーターを務める芸人の町田こーすけさんがチャーラー祭りのスタンプシートを見て、開口一番「おーっ! うれしい!」と感激していた。
彼が幼い頃から通っていた『中国料理 大洋苑』が参加店としてエントリーしているのを見つけたからだ。『中国料理 大洋苑』は、半世紀以上も地元の人々に愛されている老舗の町中華であり、町田こーすけさんには思い出が詰まった店のようだ。
実はこの日の昼に筆者はここで「チャーラー」(950円)を食べてきたところだったので、絶好のタイミングだった。これがチャーラー祭りで提供されているランチメニューの「チャーラー」。チャーハンとラーメンはそれぞれハーフサイズ。日替わりの小鉢とデザートも付く。このボリュームなら少食の方でもペロリと平らげることができるだろう。
まずはラーメンからいただくことに。チャーシューとメンマ、ネギがのるシンプルな、いかにも町中華のラーメンである。
スープは油控え目で醤油の味や香りよりもベースとなる鶏ガラの深いコクを感じる。王道中の王道の味わいとはまさにこのラーメンのことを言うのだろう。緩やかに縮れのある中太麺も旨い。
門下生3000人! チャーハン先生の絶品チャーハン
実は、ここのチャーラーの真骨頂はチャーハン。ビジュアルを見る限り、ごくフツーのチャーハンのように思えるが、ひと味もふた味も違う。『中国料理 大洋苑』のご主人、西脇信義さんは地元の調理師専門学校で中国料理コースの講師も務めていて、チャーハンを通して中国料理の基本である鍋振りの基礎をこれまで3000人の門下生に教えてきた。
しかも、長年にわたって中国料理業界の経営改善や衛生環境の改善に尽力し、旭日単光章を受章された名古屋中華料理界のレジェンドなのである。西脇さんは門下生たちから親しみを込めて“チャーハン先生”と呼ばれている。そんな“チャーハン先生”による至極のチャーハンをいざ実食!
うん、旨い! お米の一粒ひと粒に旨みがしっかりとコーティングされていて、パラパラの食感。具材のハムとネギを細かく刻んでいるので、見た目も美しい。これほどシンプルでおいしいチャーハンはあまり遭遇したことがない。やはり、チャーハンは中華料理の基本であり、奥が深いのである。
この日の小鉢はエビ餃子。プルプル食感の皮に包まれた餡もエビの甘みがしっかり。お得なランチセットだけに1個なのがニクイ。10個くらい食べたい(笑)。あ、もしかしてこれはアラカルトメニューのプロモーションなのか(笑)? デザートの杏仁豆腐を食べたら口の中が完全にリセットされた。もう、チャーラーとしては完璧だ。
これでスタンプは10個。全店制覇まで残り2個。ということは、いよいよ次回がチャーラー祭りの実食レポのラストとなる。お楽しみに!
取材・撮影/永谷正樹