秘境駅(写真はイメージです)

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全国の“秘境”を一挙紹介

 今や有名な観光地に行けば、外国人だらけということも珍しくなくなった。お盆休みは、人が少ないところで、ゆっくり過ごしたいという人もいるかもしれない。都会の喧騒を離れ、自然に囲まれた“秘境”を、鉄道に詳しいライターに聞いた。

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【写真】無人駅、自然に侵食された路線…秘境駅、ローカル線のギャラリー集

 今、どうしても行っておきたいのは、広島県にある「備後落合駅」。知る人ぞ知る秘境駅です。広島駅から新見駅まで、岡山と広島の山間部を走る芸備線と、島根県の宍道駅からこの駅までを結ぶ木次線が交わるターミナル駅となります。

 ターミナル駅だったため、昔はにぎわっていたのですが、現在は、利用客も減り静けさに包まれています。昔の線路や駅舎がそのまま残っていて、その風景はまるでタイムスリップしたかのような気分にさせてくれます。過疎化が進む中、今でも利用可能な駅として残っていること自体、奇跡かもしれません。

秘境駅(写真はイメージです)

 また、芸備線の岡山側の始発は新見駅です。新見駅は寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の停車駅でもあります。東京駅から備後落合駅に行く場合、乗り換えは1回で済むので、「乗り換え回数」だけで見たら意外と気軽に行ける場所でもあります。時間さえ気にしなければ、山陰と山陽をローカル線で乗り継ぐ時に訪れておきたい場所です。

 ただ、芸備線の利用者は年々減っていて、廃止の話が持ち上がっています。あまり想像したくはありませんが、鉄道の廃線が決まればさらにファンが殺到するでしょう。一度は行っておきたい駅ですね。もっとも、少ない列車本数にすでに旅行好き、鉄道好きの旅人が集中しているので、地方とはいえど列車は意外と混みます。

 もうひとつおススメしたいのが、北海道にある室蘭本線の「小幌駅」です。トンネルとトンネルの間に挟まれた場所にあり、周りには何もありません。集落もほとんどなく、山の中にひっそりと佇んでいる感じです。まさに秘境の名にふさわしい駅です。

不便さも魅力に

 小幌駅は無人駅であり、特急列車が走っていますが、停車することはありません。山に囲まれた同駅の狭いホームで、特急列車が爆速で通過していく様子をみるのはスリリングだと思います。

 備後落合駅と比べて、小幌駅は乗り換えも多く、東京から片道6時間以上もかかるなど、とても行きにくい場所です。ただ、その不便さが訪れる人にとっては大きな魅力となっています。

 駅ではありませんが、今のうちに見ておきたいのが北海道・十勝地方にある「タウシュベツ川橋梁」です。かつては士幌線という鉄道に使われた橋梁ですが、現在は廃線となって、橋だけが残されています。壮大な景観は、一度は訪れる価値があると思います。

 アーチ上の橋梁が、年月を経て姿を変えながらも、今なお雄大な姿を保っていますが、崩壊の危険があるので橋を渡ったりすることはできません。ただ、雨などで川が増水すると、橋が浸食されてしまうんです。そのため、年々劣化が進んでいます。いつ崩壊してもおかしくない状況にあるので、行けるうちに行っておいたほうがいいと思います。

 あと、福井・敦賀の「旧北陸線トンネル群」も魅力です。すでに廃線になっていますが、一部のトンネルは道路に転用されていて、歩いて入ることもできます。昔に鉄道で使われていたトンネルが、そのまま現存しているのは非常に貴重です。

 トンネル群は文化財にも登録されていて、13本、存在します。“廃墟っぽさ”が魅力で、夏だとトンネル周辺の緑が美しい。SNSで“映える”スポットとなります。

デイリー新潮編集部