がんや早死にのリスクを高めるだけ…和田秀樹が「女性は絶対に飲んではいけない」と話す危険な薬の名前
※本稿は、和田秀樹『コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■コレステロールを下げる薬を飲む必要はない
本章では、コレステロールや脂肪をめぐる「薬と医療の問題点」について話したいと思います。
まずはコレステロールを下げる薬です。
検査の数値を見た医師から「コレステロール値が高いですね。薬を使って下げましょう」と言われる人がたくさんいます。でも、はっきり申し上げておきます。
薬を飲む必要はありません。
とくに高齢者の場合は、薬を使ってコレステロール値を下げるのは、百害あって一利なしです。
もちろん、若い世代や脂質異常症などの病気がある場合は、話は別です。しかし、ただ検査の数値だけを見て「値が高いから」というだけの理由で薬を使うのは、寿命を縮める行為とさえ言えます。
「コレステロール値が高いままだと動脈硬化になりますよ」と医師から言われたとしましょう。では数値を薬で下げたら動脈硬化にならないのか、実はそんなこともないのです。
なぜなら、動脈硬化のいちばんの原因は「加齢」だからです。
■動脈硬化を防ぐことはできない
年を取れば、どんな人も動脈硬化が進行します。多くの人は50代、60代から少しずつ進み始め、70代では大半の人がかなり進行します。さらに80代になると、ほぼ全員の動脈硬化が“完成”してしまいます。
どんなに規則正しく、健康にいいと言われる生活をしていても、加齢による進行は防ぎようがありません。薬を飲んでも止められません。コレステロール値を下げることはできますが、動脈硬化は防げないのです。
それでも薬を飲むのか? ということを、高齢のみなさんは考えるべきです。
私はよく、患者さんに次のようなたとえをします。
「高齢になってから動脈硬化を心配して薬を飲むのは、年を取ってシワだらけの顔になってから『シワ予防の美容液』を塗るようなものですよ」と。微妙な効果はあるかもしれませんが、おそらくそれほど変わりません。
■50代後半くらいからは「ちょい太め」でいい
若い世代や中年世代はどうしたらいいのでしょう?
基本的に、若い世代は放っておいても免疫力があり、活力もあります。体内でコレステロールを生産する能力も高いのです。
食事から摂取されるコレステロール量は、若い世代も高齢世代も変わらず、たかが知れています。なので、血液中のコレステロール値が高いなら、何らかの原因があると考えて、薬を検討してもいいかもしれません。動脈硬化や、そこから始まる心筋梗塞はやはり、若い世代にとっては大きなリスクですから。
ちなみに30〜40歳代には、心筋梗塞が少ないのは事実です。なので、それほど数値が高くないなら、動脈硬化に神経を尖らせることはないと思います。
50代、60代から動脈硬化が少しずつ進行していきます。このため、50代後半くらいからは“コレステロールが高め”や“ちょい太め”でも、私はいいと考えます。個人差があるので、やはり断言はできないのですが。
若いうちは「引き算医療」、高齢になったら「足し算医療」――と。
若いうちは体の余分なものを落としてもいいけれど、高齢になったら体に足りないものを足していく、という私の考え方です。
■心筋梗塞の真犯人はいまだわからない
私がよく引き合いに出す話に「フレンチ・パラドックス」があります。簡単に説明します。
アメリカ、イギリス、ドイツでは、心筋梗塞で多くの人が死んでいます。「肉を食べてコレステロールが高いから」というのが、理由になっています。
ところが、同じように肉を多く食べ、コレステロールが多いとされているフランスやイタリアでは、心筋梗塞による死者が少ないのです。アメリカの3分の1から2分の1と圧倒的に少ない。この矛盾を「フレンチ・パラドックス」と言います。
なぜ、こんな矛盾が起きるのか? 世界中で議論が巻き起こりました。
有力な説と考えられているのが、「赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用が心筋梗塞を抑えるのではないか」というものです。フランスやイタリアでは、ワインを多く飲みますから因果関係が推論されたのでしょう。日本でも赤ワインがブームになりましたが、この説がきっかけと言われます。
他にも「魚介類の脂肪(DHAやEPA)がいいのではないか」などとも言われましたが、このパラドックスが完全に説明されたわけではありません。
つまり、心筋梗塞の“真犯人”についてはいまだによくわからないし、何がそれを防ぐのかもよくわかっていない。“推測の域”を出ていないのです。にもかかわらず、コレステロールや脂肪が疑われ、日本ではいまだに害悪視され続けています。世界では見直されているのに、日本は遅れを取っているわけです。
■飲む必要のない薬を飲み不健康になる
コレステロールに関する“常識の遅れ”は脂質低下薬の使用にも見られます。
日本では、中高年の女性にコレステロールを下げる薬を飲む人が多数います。しかし、女性に対してコレステロール値を下げる薬を出しているのは、日本だけです。欧米では、女性には“脂質低下薬”なるものは処方しません。たとえ糖尿病でも、薬で下げることはしないのです。
なぜか? 飲む必要がないからです。
もともと女性は男性に比べるとコレステロール値が高いのですが、心筋梗塞になる人は少ない。その割合は、男性の3分の1〜5分の1ほどです。
女性は閉経すると、女性ホルモンの分泌量が減るため、コレステロール値がじわじわと上がってくる傾向が見られます。体を守るための自然な反応であり、コレステロール値が上がるのは、いわば当然のことです。なので、欧米では当たり前のように放っておかれます。
ところが、日本では「コレステロール値が高い=病気」と診断されてしまいます。そして、薬を処方されてしまうのです。
しかも、日本の基準値は欧米に比べ、低く設定されています。少なくない患者さんが「異常」と判断され、薬を飲んでいるのだから、大変です。
コレステロールを下げたらどうなるかは、これまでさんざん話してきました。死亡率は高くなるし、がんで死ぬ人も増えていきます。
下げる必要のないコレステロールを、無理やり薬で下げている。飲む必要のない薬を飲み、がんや早死にのリスクを高めている――。この現実を、女性のみなさんはどう思うのでしょうか。ご家族はどう考えるのでしょうか。
私はとても恐ろしいことだと思っています。だから非難されるのを覚悟で、このような声を上げているのです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)