「gay furry hackers(ゲイでケモナーのハッカー)」を自称するハッカー集団のSiegedSecが、アメリカの保守系シンクタンクであるヘリテージ財団をハッキングして機密データを公開しました。これに対しヘリテージ財団は、ハッキングは世間の注目を集めたいSiegedSecのうそだと主張し、ハッキングを受けたこと自体を否定しています。

'Gay furry hackers' attack Heritage Foundation and release sensitive data related to Project 2025 | TechRadar

https://www.techradar.com/pro/gay-furry-hackers-attack-heritage-foundation-and-release-sensitive-data-related-to-project-2025



Heritage Foundation insists ‘gay furry hackers’ did not breach its systems - The Verge

https://www.theverge.com/2024/7/11/24196554/siegedsec-heritage-foundation-project-2025-hack-gay-furry

SiegedSecは「ゲイでケモナーのハッカー」を自称するハッカー集団であり、2024年6月にはアメリカ最大級の原子力研究所であるアイダホ国立研究所(INL)をハッキングしました。その際、INLから盗んだ従業員の機密データを非公開にすることと引き換えに、「INLが『ネコ娘』の創作を研究する」ことを要求したことで話題を呼んでいます。

自称「ゲイでケモナーのハッカー」が核研究所をハッキングして要求した衝撃の内容とは? - GIGAZINE



そんなSiegedSecは7月に、ワシントンD.C.に本拠を置くヘリテージ財団から2GB相当の内部データを盗みだして公開しました。ヘリテージ財団は保守系のシンクタンクであり、小さな政府や伝統的なアメリカの価値観、国防強化といった原則に基づいた保守派の政策を提言してアメリカ政府に大きな影響を与えています。

SiegedSecは今回のハッキングを、極右メディアや反中絶・反トランスジェンダーを掲げる州政府機関などを攻撃するキャンペーン「OpTransRights」の一環だと位置づけています。また、ヘリテージ財団が2024年の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した際に備えて発表した政策提案リスト「Project 2025」への報復も動機のひとつだとしています。

今回公開されたヘリテージ財団の内部データには、財団と関係がある右翼系メディア・The Daily Signalに関連する情報が含まれているとのこと。SiegedSecは、データにはヘリテージ財団とやり取りした人々のフルネーム・電子メールアドレス・パスワード・ユーザー名などが含まれているとして、ヘリテージ財団についての透明性をもたらすものだと主張しました。



これに対しヘリテージ財団の広報担当者であるノア・ウェインリッヒ氏は、財団がSiegedSecのハッキングを受けたことを否定し、「注意を引こうとする犯罪トロールによる虚偽の物語と主張です」と反論しています。

ウェインリッヒ氏は、今回公開されたものと同じデータを含むアーカイブが、ウェブ上で入手できるようになっていたことをある団体が突き止めたと説明。SiegedSecはこのデータを再公開しただけであり、ヘリテージ財団のいかなるシステムも侵害されていないと主張しました。

一方でヘリテージ財団のオーバーサイト・プロジェクトでエグゼクティブディレクターを務めるマイク・ハウエル氏は、自分が「ゲイでケモナーのハッカー集団」を解散させたとXへの投稿でアピールしています。



SiegedSecもハウエル氏と交わしたチャットのログを公開し、その中ではハウエル氏が「なぜヘリテージ財団をハッキングしたのか」を尋ね、ハッカーの身元を特定して公開すると脅している様子が読み取れます。ハウエル氏はウェブメディアのDaily Dotの問い合わせに対し、このやり取りが正確なものだと認めています。

その後、SiegedSecは解散することを決定したとテレグラムへの投稿で報告しました。SiegedSecのリーダーである「vio」と名乗る人物は海外メディアのThe Vergeに対し、ヘリテージ財団がハッキングを否定するのは予想していた通りであり、多くの企業や団体は面目を保つためにハッキング自体を否定しようとすると指摘。しかし、ヘリテージ財団は実際にハッキングされたのであり、SiegedSecを解散させようとしたハウエル氏の言動がそれを裏付けていると主張しました。

なお、SiegedSecは左翼的な政治的な主張をもってハッキングを仕掛けていると主張していますが、ロシアによるウクライナ侵攻の数日前に現れてNATO諸国をターゲットにしていることから、実態は親ロシアのハッカー集団である可能性も指摘されています。