新車に「踏み間違い“防止”装置」義務化へ! 日本主導で「世界」も動かした!? 「アクセル」と「ブレーキ」“誤操作”事故も激減か
日本発の「アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置」が世界基準になる!?
「アクセルとブレーキを踏み間違えた」。高齢者だけではなく、広い世代のドライバーが起こす様々な事故の原因として、ドライバーがそう証言することが少なくありません。
そのため最近の新車は軽自動車から高級車まで、多くのモデルがいわゆる「アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置」(誤発進抑制装置)を装着していますが、これがまもなく「義務化」されるといいます。どのような流れとなるのでしょうか。
踏み間違い防止装置は、駐車場で前面や後方に壁や駐車しているクルマがいたり、または低速で走行中に歩行者がいたりする場合、仮にアクセルを思い切り踏んでもエンジンの出力を制御して急加速しないようにする仕組みです。
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そうした仕組みの装着が義務化されるといいます。
まず、一部報道で義務化に関するニュースが出ましたが、その後、斉藤鉄夫 国土交通大臣は6月28日、閣議後の記者会見で記者からの質問に答えるかたちで、次のようにコメントしています。
「ドライバーの意図しない加速による衝突を抑制する『ペダル踏み間違い時加速抑制装置』については、これまでの日本国内でのペダル踏み間違いによる悲惨な事故の発生状況などを踏まえて、2022年に日本がその国際基準策定を提案するなど、議論を主導してきたものです。
現在開催中の国連自動車基準世界フォーラム(WP29) の作業部会において、加速抑制装置の性能基準が決まりました。
次回本年11月のWP29(親委員会)で正式に採決予定になったところです。
今後は、来年6月に予定されている国連基準の発効に合わせて、国内基準を整備し、義務化に向けた準備を進めていきたいと思っています。
国土交通省としては、引き続き、自動車の安全性向上を推進してまいります」
今後は「型式指定の認証」にも「踏み間違い防止装置」が含まれることに
斉藤 国土交通大臣が話す「国連自動車基準世界フォーラム(WP29)」とは何でしょうか。
国土交通省の物流自動車局が2024年6月21日、筆者(桃田 健史)を含む一部メディア向けに開いた「自動車の国際基準調査と認証の相互認証」に関する勉強会で提出した資料があります。
それによるとWP29とは、自動車の国際的な基準と認証ルールを策定する唯一の機関です。
またWP29に関連して、2つの国連協定があります。
ひとつは1958年協定で、日本、欧州連合(EU)、韓国、マレーシア、南アフリカなど62カ国が締約。基準調和と相互認証のための協定です。
もうひとつが1998年協定で、日本、EU、アメリカ、中国など39カ国が締約。こちらは基準調和のみのための協定となります。
WP29には、本会議の下に6つの作業部会があります。
自動運転、衝突安全、排出ガス、騒音・タイヤ、灯火器、安全一般の6つの領域です。
このうち自動運転の作業部会では、自動運転システム、サイバーセキュリティ及びソフトウェアアップデート、作動記録装置、そしてペダル踏み間違い加速抑制装置の4項目についての議論を行っています。
WP29は3月、6月、11月の年三回、スイスのジュネーブで開催されており、今回の事案については、6月開催時にペダル踏み間違い加速抑制装置の国際基準がまとまり、次回11月の全体会議(親委員会)での採択の目処がついたということになります。
自動運転の作業分科会は、日本が議長や副議長をつとめるなどリーダーシップをとってきており、国内での事故事例を背景として、ペダル踏み間違い加速抑制装置についても日本がWP29に提案を出したものです。
要するに踏み間違い防止装置はペダル踏み間違い加速抑制装置として今後国際基準となり、日本だけではなくグローバルで生産・販売される新車での装着が義務化されることになります。
そのため、近年大きな話題となっている型式指定の認証についても、ペダル踏み間違い加速抑制装置が国のよる正式な試験項目に入ることになります。
これまでは、第三者が市販されている自動車の安全性能を格付けして公表する自動車アセスメントのJNCAP(ジェーエヌキャップ)で、ペダル踏み間違い時加速抑制(発進時のペダル踏み間違え時の加速抑制)という項目があり、直近では歩行者との事故に対応した評価が導入されています。
自動車メーカーは現時点で、JNCAPへの対応を主体として同機能を開発してきました。
これからはWP29における国際基準を踏まえた型式指定の認証による、ペダル踏み間違い加速抑制装置の義務化を念頭においた研究開発が進むことになります。
WP29による国際基準の発効は来年2025年6月ですので、日本国内での義務化はそれ以降の早い段階で実施されることになるでしょう。