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SNS上に被害者の名前が記載された投稿が残り続けていることに関して、ある事件で子どもを殺害された遺族がプライバシー権の侵害などとして投稿の削除を求めた裁判で、東京地裁が今年3月、訴えを退けていたことがわかった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●「まとめサイト」に掲載→Xに投稿

これまで、加害者側が実名報道された過去の記事やSNSの投稿を削除するよう求めることはあったが、事件で亡くなった被害者の遺族が削除のために提訴し判決まで至ったケースが明らかになることは珍しく、デジタルタトゥーの問題が顕在化されつつある。

3月にあった東京地裁の判決によると、原告は数年前に子どもを殺害された。発生当時に新聞などが報じた記事では、被害者の名前や年齢とともに事件現場がラブホテルであったことなどが書かれていたという。

ニュースサイト上での事件記事の扱いについて、新聞社やテレビ局の多くは一定期間経てば削除する運用を取っており、今回争われた事件でも大手報道機関の元の記事はすでに削除されて読めなくなっている。

しかし、事件発生時に新聞社などが報道した内容を踏まえて誰かが作成した記事がまとめサイトに掲載され、その記事の概要を紹介する文章がツイッター(現・X)に投稿されたまま今も見られる状態で残っている。

これに対して原告側は「不特定多数の好奇の目に晒されるような状況は親にとって耐え難い苦痛である。本件被害者の氏名を現在も公開し続ける社会的必要性や公共性は失われている」などと主張。

原告の故人に対する敬愛追慕の情の侵害やプライバシー権の侵害だとして、これらの投稿を今も表示できるようにしているXに対して投稿の削除を求めて提訴した。

●裁判所の判断は?

東京地裁は判決で「現在では閲読される可能性は著しく低減しており、現実的には今後、本件各記事が新たに人々の目に触れる可能性は限りなく低いと考えられる」などとして原告の訴えを退けた。

弁護士ドットコムニュースの取材に対し、原告は弁護士を通じて「現在では社会的必要性の低い、当時投稿されたまま放置されている記事に重きを置き、被害者側の心情、意見は、何年経ってもいつまでも無視され、置き去りにされています。このような状況が継続されることは不自然で不公平だと思います」とコメント。すでに控訴したという。