疲れた様子で元気がない。表情も暗くて、学校に行くのもつらそう。そんなお子さまの様子に心配が募ることもあるかもしれません。どう声をかければいいか迷ってしまうこともありますよね。「休ませたほうがいいのかな」と迷うこともあるでしょう。

今回は、心も体も疲れた様子のお子さまとのやり取りの体験談をマンガ化。スクールカウンセラーの経験を持ち、学校心理学が専門の相樂直子先生にアドバイスをいただきました。

この記事のポイント

学校に行くのがつらそう……どう接する? まずは受け止め、子どもの思いに寄り添って 声かけは事情を知ることだけではなく「もやもやに付き合う」ことも大切 学校をお休みするかは、親子で話し合って決める 抱え込まずに相談を 子どもが疲れてしんどそうな時、ほかの保護者はどうした?

学校に行くのがつらそう……どう接する?

少しずつ元気を取り戻したカホの様子にホッとしたかたもいらっしゃるかもしれません。疲れてしんどそうな様子のお子さまの気持ちを傷付けず、心が回復するようにサポートするには、どうすればいいのでしょうか。相樂直子先生に伺いました。

まずは受け止め、子どもの思いに寄り添って

相樂先生:お子さまが疲れて元気がないのは、保護者のかただからこそ気付いてあげられるもの。普段一緒に過ごしているからこそ、ちょっとした変化も感じることができるんですね。「疲れていそうだな」「つらそうに見えるな」といった気付きを受け止めることが出発点です。

お子さまに声をかける際は、2つのステップを意識できるといいですね。1つ目は保護者のかたから見た、普段とは異なるお子さまの状況について伝えること。「少し顔色が悪いよ」「いつもより元気がないように見えるよ」など、保護者のかたが気付いた心身の状況を率直に伝えてあげてください。たとえお子さまの反応が薄かったとしても、お子さまは「自分を見てくれているんだな」と実感し、安心感を覚えるでしょう。

「どうしたの?」「何があったの?」と、いきなり聞かれると、抵抗を示すお子さまもいます。その場合には、保護者のかたが気付いたお子さまの様子にそって、具体的に聞いていきましょう。お子さまが答えやすくするためには、「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンから始めて、徐々に自由に答えてもらうオープンクエスチョンを投げかけていくのがポイントです。

たとえば、お子さまが疲れて眠そうな様子が見られるのであれば、まずはクローズドクエスチョンで「よく眠れてる?」と質問。「眠れてない」とのことであればオープンクエスチョンで「どうして眠れなかったのかな?」と具体的に問いかけて、自分の言葉で説明してもらいましょう。
とはいえ、うまく話せなかったり、話したくなかったりして回答がストップすることもよくあるもの。そういう場合は「寝る時間はこれまでと変わらない?」など、クローズドクエスチョンを挟んで、事情を把握していくようにしましょう。
無理に聞き出そうとせず、お子さまが話せること・話したいことを、安心して表現できるような場を作ることが大切です。

低年齢のお子さまや、言葉による表現が苦手なお子さまには、筆談をしたり、イラスト・吹き出しを使ったりする方法が有効な場合もあります。

声かけは事情を知ることだけではなく「もやもやに付き合う」ことも大切

お子さまが元気がない時は、心配のあまり事情を聞き出さなければと思ってしまうこともあるかもしれません。ですが、ここではお子さまの安全面を確認したうえで、お子さまのペースに寄り添った関わりを持つことが大切です。

元気がなかったり、もやもやしてしまったりする理由は、お子さま自身が気付いていないことも多いもの。うまく言語化できていなくて当たり前。だからこそ、保護者のかたの問いかけをきっかけに、お子さまが話しながら自分の状態や気持ちに気付いていくことがとても大切です。なかなか思うように事情が把握できないと焦ることもあるかもしれませんが「これも双方にとって必要なプロセス」ととらえ直すことが必要です。

また、お子さまが保護者のかたと、つらさやしんどさを共有したり、一緒に考えたり、話したりすることで安心感を得ることもあります。

学校をお休みするかは、親子で話し合って決める

お子さまの様子を受けて、学校をお休みするか、そうでないかは、正解があるわけではありません。
どんな結論を出すにせよ、大切なのは、お子さまが自分の意見を表現できる機会を確保しながら、話し合い、決めていくことです。お子さまの訴えや意思(どうしたいか・どうなりたいかなど)を丁寧に聞き、ともに考えるというプロセスから、自ずと結論が見えてくることもあるでしょう。

家族であれこれ悩んで相談する時間を共有したうえで、決めていきたいですね。いったりきたりしながらも、家族で話し合うこと自体に意味があるものです。

抱え込まずに相談を

お子さまの状況については、保護者のかたが抱え込まずに相談することも大切です。お子さまの様子や状態に合わせて、適切な相談先に当たれるといいですね。体調についてなら保健室の先生やかかりつけの医師、気持ちや心が疲れているのなら、スクールカウンセラーや心療内科、クラスの人間関係や学習面については担任の先生といった具合です。

また、お子さまと、(保護者のかた以外に)相談できる相手を一緒に探してみることも一つです。「この部分だったら、担任の先生に話せそう?」など、お子さまが話しやすい相手・話せる内容を共に整理していく方法もあります。

子どもが疲れてしんどそうな時、ほかの保護者はどうした?

子どもが疲れてしんどそうにしている時、ほかの保護者はどのような対応をとったのでしょうか。2,425名のかたからご回答いただいた中からご紹介します(※1)。

理由を聞いたうえで休ませる

学校に行きたくない理由を聞き、1日ゆっくり休むために学校に欠席の連絡をしました。理由を話す時とてもつらそうにしていました。きちんと理由を聞いて子どもと会話する時間がとれたのでよかったです。(小学5年・京都府) なぜ休みたいのかの内容をよく聞き、必要があれば学校の先生に連絡するなど、親も納得したうえで1日休ませました。休ませた時は心と体の充電ができたので、よかったと思います。(小学5年・長野県) 理由を聞いて、休息が必要だなと思った時は「お休みしてもいいよ」と、欠席にしました。学校にも、「本日行きたくないと言っているのでお休みさせます」と伝えました。大人でも行きたくなくて仕事をずる休みすることもあるし、有給休暇もある。子どもにも有給休暇は必要ですよといった記事を読んだことがあり、確かにね……嫌な時もあるよね……と思いました。休んでのんびりして満足して行けたからいいかな? と思います。(小学6年・都道府県不明)

1時間だけ登校など柔軟に対応する

休んで気分転換に遊びに行きました。初めて休みたい、と言われた日は混乱して、私が泣きながら、「お願いだから学校行ってよ!」と言ってしまいましたが、校長先生に「おうちが安全で居心地がいいんだね。学校っていろいろあって疲れるもんね。来られる時に、来られるところだけ来てもいいんだよ」と言っていただき、一緒に行ったり1時間だけ行ったりするなど自由にさせていたら、ちゃんと登校して卒業するまで元気に通えました。学年によって、行きたくない理由も違ったし対応も変えましたが、本人の心の本音の部分を聞けると、わりとすっと改善しました。(中学1年・奈良県) ゆっくり話をして気持ちを聞き出した。行ってしまえば楽しかったと言っていた。(小学2年・宮城県) 学校の先生、病院、スクールソーシャルワーカーのかたと話すなどして、遅刻しながら、別室にての登校に移行して対応してもらいました。(中学2年・長崎県)

休ませたケースも、登校させたケースも、うまくいっているご家庭で共通しているのは、お子さまとしっかり話し合っていることのようです。休むか否かより、お子さまの気持ちにどれだけしっかり向き合えるかが大切なのかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

疲れて学校に行くのがしんどそうなお子さまへの対応についてご紹介しました。勉強に部活、友達関係など、お子さまが疲れを感じてしまうことはよくあること。お子さまの変化に気付いて、気持ちを受け止めたうえで、適切なサポートをしてあげられるといいですね。保護者のかたが自分に向き合ってくれていると感じられること自体が、お子さまの気持ちにプラスに働くのかもしれません。

出典
※1
2024年5月に行った「保護者のかた向けアンケート」(2,425人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

プロフィール

相樂直子(さがら なおこ)

創価大学教育学部教授。博士(カウンセリング科学)。
学校心理学が専門で、子どもたちのメンタルヘルス、学校における多職種連携などについて研究している。
大学での養護教諭養成教育のほか、小・中学校のスクールカウンセラー、巡回相談心理士としても活動している。
著書に『先生に知ってほしい家庭のサイン』(少年写真新聞社)『教師・保育者のためのカウンセリングの理論と方法 : 先生をめざすあなたへ』(北樹出版)など。

プロフィール

マンガ:

さざなみ

子供の個性や成長と真剣に向き合う育児エッセイが共感を呼びSNSで話題となる。『「どんなときでも味方だよ」って伝えたい!』(KADOKAWA)書籍化。
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