超絶コスパ!バーミヤン「300円セット」の"衝撃"

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SNSでは「コスパ最強」「価格がバグり散らかしてるな」など、その“超コスパ”が話題を呼んでいます(筆者撮影)

人気外食チェーン店の凄さを「いぶし銀メニュー」から見る連載「チェーン店『至高のいぶし銀メニュー』を訪ねて」。今回は、すかいらーくグループの中華料理チェーンであるバーミヤンの「アジフライ・ごはんセット」を取り上げます。

飲食チェーンには「代名詞」「定番」というべきメニュー以外にも、知られざる企業努力・工夫を凝らされたものが数多く存在します。本連載では、そうした各チェーンで定番に隠れがちながら、根強い人気のある“いぶし銀”のようなメニューを紹介していきます。


高いコスパで人気のバーミヤン(筆者撮影)

「コスパ最強」「価格バグ」超太っ腹セットが話題に

今回のテーマは、すかいらーくグループの一角を占め、コストパフォーマンスが高い中華料理チェーンとして人気のバーミヤン

バーミヤンラーメン」(659円)や「本格焼餃子」(3個219円)といったお手軽価格の看板メニューだけでなく、「サバ唐揚げ甘酢しょうゆ」(384円)や「選べるソースの蒸し鶏」(329〜362円)、「海老マヨネーズ」(439円)などの小皿も充実しています(価格はすべて税込み)。

【画像】絶品アジフライ2枚とご飯でわずか「297円」!神コスパ「バーミヤン」のセットメニューの様子を見る(11枚)

そんな中で今回扱うのは「アジフライ・ごはんセット」(297円)です。バーミヤンは先ほど挙げた単品メニュー以外に「お得なセット」としていくつものセットメニューを展開しているのも大きな特徴。例えば麵メニューにプラスできる「餃子・半チャーハンセット」(418円)や、「サラダ・ドリンクセット」(330円)などがあり、アジフライ・ごはんセットも、麺に合わせられるセットの一つです。

アジフライ・ごはんセットはその名の通り、アジフライとごはんのセット。とはいえ、それだけでなくスープバーもついており、さらに午前10時〜午後5時はごはんの大盛りが無料と、何とも太っ腹なセットです。何ならこのセットだけで1食が成り立つほどにも思えます。

実際にSNSでは「コスパ最強」「価格がバグり散らかしてるな」など、その“超コスパ”が話題を呼んでいます。「中華料理店でアジフライ?」と若干不思議には思いますが、実際に足を運んで食べてみましょう。

1000円ほどで超充実のセットが実現

訪問したのは都内郊外の、幹線道路沿いにあるバーミヤン。まだお昼時ではなかったからか、入店待ちはなしで入れました。席の埋まり具合は5割ほどといったところで、好きな席にどうぞといわれたので、店内中ほどのテーブル席へ着席します。


幹線道路沿いのバーミヤンへ(筆者撮影)

さて、アジフライ・ごはんセットを注文するのは当然ですが、それに合わせる商品に悩みます。しばしメニューをにらみながら、やはり王道メニューをと、バーミヤンラーメンと焼餃子を注文しました。すかいらーくグループはオペレーションの効率化が進んでおり、注文はタブレットで。

注文を終えて、アジフライ・ごはんセットに付属しているスープバーへ向かいます。スープバーといっても、この日にあったのは1種類。醤油ベースと思われるワカメスープでした。鍋の底から念入りにかき回し、浮いたワカメをタイミングよくキャッチしてカップに注いでいきます。


アツアツのワカメスープ。この後おかわりしました(筆者撮影)

席に戻り、アツアツのスープを味わっていると、バーミヤンラーメンから到着しました。続いてアジフライ・ごはん、焼餃子。なぜか配膳ロボットではなく、全てスタッフが持ってきてくれました。


これだけ頼んでわずか1000円ほどと、素晴らしいコストパフォーマンス(筆者撮影)

並べてみると、満漢全席……には遠く及びませんが、日常で味わう小さな幸福としては十分過ぎる絵面です。これが1000円ほどで楽しめるとは、バーミヤン恐るべし。

中華料理店のアジフライ、楽しみ方は無限大

まずは焼餃子からいただきましょう。写真を撮っていた間にちょうどいい温度に冷めてくれて、臆せず一口。皮を破るとたっぷりの肉汁が出てきて驚きました。ほぼ羽なしのシンプルな餃子ですが、王道中の王道で、アジフライを食べる前にごはんが進んでしまいます。


王道ど真ん中の焼餃子。肉汁がたっぷり(筆者撮影)


バーミヤンラーメンも忘れずにパシャリ(筆者撮影)

麺が伸び切ってしまわないように、ラーメンも適度にいただきながら、ごはんがなくなる前にアジフライもいただきます。大ぶりなアジフライ2枚と、たっぷりのマヨネーズに加え、罪悪感を減らしてくれる野菜が添えられているのはうれしい誤算でした。


緑もあるのがうれしいアジフライ(筆者撮影)


裏側はこんな感じ。野菜も食べられてこのお値段とは(筆者撮影)

中華料理店が出すアジフライの味はどんなものか、気になりながら一口食べると、アジの肉厚さに驚かされました。


アジフライの断面はこんな感じ。青魚らしい臭みは当然なく、白身レベルのあっさり感(筆者撮影)

揚げ加減もちょうどよく、サクっとした衣と柔らかいアジの身がいいコンビネーションです。マヨネーズを付けてもよし、付属のソースをかけてもよし、2枚あるので食べ終えるまでにさまざまな食べ方を楽しめます。

ラーメンも合わせながら、ごはんを食べ進めます。無料に甘えて大盛りにしましたが、これだけの役者がそろっていれば、食べ終えるまであっという間でした。

「安すぎる」アジフライ1枚→2枚で大人気に

ここであらためてバーミヤンの紹介です。

すかいらーくホールディングスの公式Webサイトによると、バーミヤンの1号店がオープンしたのは1986年。2024年3月末時点で店舗数は354です。安価なだけでなく、甜麵醬やネギ油など、さまざまな調味料を自社開発して作った本格的な味わいも魅力の人気チェーンとして知られています。

バーミヤンのメニュー開発シェフを務める福島宣嘉さんによると、名前の由来はアフガニスタンの古都・バーミヤンからとっているとか。シルクロードに位置し、東洋と西洋が交わる地という点から、中華料理で人々を結び付ける店でありたいという思いが込められています。

また、特徴的な桃のロゴは司馬遷の「桃李不言下自成蹊」という言葉にちなんでいます。桃や李の美しさ、おいしさに人が集まり道ができることを表現した言葉で、また桃が中国で縁起物とされていることからも採用したそうです。

さて、そんなバーミヤンがアジフライ・ごはんセットを始めたのは2023年7月。福島さんがさまざまな食べ合わせを検討しながらメニューを研究する中で、アジフライとラーメンの相性がいいのではないかと気づいたのがきっかけだそうです。

「アジフライと中華料理の組み合わせは珍しく感じるかもしれませんが、もともと、中華料理でアジを使ったメニューはいくつかあります。ただ、フライではなくから揚げにして、ソースをかけるものが多い傾向にありました。

一方、アジフライはごはんとの相性もいいですし、ラーメンとも意外と合うんです。これまでラーメンと合わせるのは餃子が“鉄板”でしたが、アジフライも売れるのではないかと感じて発売しました」

そして誕生したのがアジフライ・ごはんセットです。とはいえ不思議なのが、アジフライ単体での販売がないこと。福島さんに聞いてみると、次のような答えが返ってきました。


「1枚時代」のアジフライ(提供:すかいらーくホールディングス)

「アジフライには、一般的なものより一回り大きなアジを使っており、かなり原価率の高い商品です。採算を考えると単品での販売が難しく、他のメニューと一緒に注文いただく形で、何とか販売にこぎつけました」

アジの大きさだけでなく、スープバーと野菜が付いているコスパのよさが魅力のアジフライ・ごはんセット。当初から爆売れしたのかと思いきや、苦戦が続いたと福島さんは振り返ります。

そこで「よりインパクトとお値打ち感を出すため」(福島さん)、発売から4カ月少々の2023年12月に、もともと1枚だったアジフライを2枚へ増量。にもかかわらず、価格は据え置きにしたというから驚きです。福島さんは笑いながら「通常では販売できないような値段だからこそ、注文していただける部分もあると思います。周囲からは『安すぎる』とよくいわれますしね」と話します。

圧倒的なコスパを誇る商品へと“魔改造”されたアジフライ・ごはんセットは、その後どんどんと話題を呼び人気商品に。販売数は現在、発売当初と比較して2.5倍に成長しているといいます。

増量でも価格据え置き「超コスパ」を維持できるワケ

アジフライ・ごはんセットの超コスパの裏には、さまざまな効率化の工夫が潜んでいます。

例えば、付属のマヨネーズは海老マヨネーズと同じものを使用。店舗オペレーションを考えるうえで、料理によって調味料を使い分けると間違いが生じやすいことから統一しているそうです。また、アジも工場で衣まで付けたものを店舗まで配送。店内では、温度を管理して揚げ、油切りをする程度のオペレーションで提供できるようにしています。

どんな食べ方をしている人が多いのか聞いたところ、1人で食べるのはもちろん、複数人で分けて楽しむ人も多いとか。ランチタイムを逃した人が、我流のランチセットとして注文するケースもあるそうです。

また、バーミヤンではボトルキープサービスも行っており、おつまみとして楽しむ人もいるといい、楽しみ方は多岐にわたります。一度注文した人が再度注文するケースも多く、着実にリピーターが増えています。

中華らしからぬメニューの一方、その圧倒的なコスパを武器に支持を広げるアジフライ・ごはんセット。次に続くメニューも気になるところです。福島さんに聞いたところ、あくまで構想段階という前置きのうえで「カキフライもいいですし、焼き鳥のように、香ばしく焼いて甘辛な味付けをしたチキンも中華料理と相性がよさそうですよね」と話してくれました。

わずか1000円ほどで、自分流の「最強セット」を作れるアジフライ・ごはんセット。今後はどんな商品が生まれるのか、目が離せません。


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(鬼頭 勇大 : フリーライター・編集者)