フィットネスマシンを設置しているだけのchocoZAPは、店舗単体の競争優位性が低いという特徴があります。差別化が図りづらく、誰でもマネできる形態です。

 しかし、店舗数を拡大して全国で利用できるようにすると、会員は実家への帰省中や出張、旅行中でも店舗を利用できます。つまり、chocoZAPは地理的な面を獲得することにより、競争優位性を生み出したのです。従って、店舗を急拡大することがこのビジネスを成立させる条件の一つだったと考えられます。

 出店スピードを抑制すれば利益は出やすくなるものの、優位性が失われかねません。そこで、chocoZAPは退会者のつなぎ止めに向けた取り組みを開始しました。それが「ちょこっとサポート・コンシェルジュ」。RIZAPのトレーナー500名体制、コンシェルジュ100名体制で、会員のサポートを行うというのです。ライザップはこのサービスに70億円の費用を投下する予定です。

 chocoZAPの会員は、フィットネスジムのライト層。もともとの意識が高いわけではないため、最も退会しやすい部類に入ります。店舗にカラオケやランドリー、ワークスペース、ゴルフ、セルフ脱毛、セルフホワイトニングなどを導入したのは、ライトユーザーを何としてでも退会させないという苦肉の策といえるでしょう。

 RIZAPグループが今期に営業黒字化を実現できるのか。フィットネスジム業界最大の関心ごとの一つだと言えます。

◆一方のエニタイムは、テレビCMで利益を下押し

 日本で初めて24時間営業のフィットネスジムを行ったのがエニタイムフィットネス。アメリカに本社があり、日本ではFast Fitness Japanがフランチャイズ契約を締結してサービスを提供しています。

 店舗数は1134。国内では2割のシェアを握っています。Fast Fitness Japanの業績は堅調そのもの。2024年3月期の売上高は前期比7.0%増の158億円、営業利益は同4.2%増の35億円でした。

 この会社は3期連続で営業利益率が20%を超えています。高利益体質なのは、フランチャイズを主体としたビジネス展開をしているため。1134店舗のうち、957店舗(84.3%)がFC店となっています。

 実はFast Fitness Japanは、2024年3月期の4Q単体の営業利益が6億4000万円となって前年同期間比で1割以上減少しました。その要因の一つが広告宣伝費。同期間に1億4300万円を投じていますが、前年は9100万円ほどでした。

 エニタイムフィットネスは2023年12月から2024年1月にかけてテレビCMを放映しています。chocoZAPも大々的なテレビCMを継続的に流していることは知られている通り。エニタイムがライバル意識を燃やしているのは間違いないでしょう。

 FC店が多いエニタイムフィットネスは、集客に苦戦してフランチャイズオーナーが儲からなくなるというのが最悪のシナリオ。chocoZAPとの激しい戦いが予想されます。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界