広州交易会は1957年の初開催から60年超の歴史を持つ。写真は2024年春期の会場のメインゲート(広州交易会の公式ウェブサイトより)

広東省広州市で毎年春と秋に開催される広州交易会(正式名称は中国輸出入商品交易会)は、中国最大級の貿易商談会であり、輸出産業の景気動向を示す「風向計」と呼ばれている。

「コロナ禍の期間に世界各地で積み上がった在庫がほぼ消化され、(海外から来場した)バイヤーたちが新たな買い付けを始めている」

4月15日に開幕した2024年春期の広州交易会(会期は5月5日まで)の会場を財新記者が取材すると、出展企業の多くからそんな声が聞かれた。

例えば広東省佛山市の電子機器メーカー、索爾電子実業の担当者は、記者の取材に対して「2024年1〜3月期の受注は前年同期比約20%増加した」と明かした。インバーターと蓄電装置が主力製品の同社は、受注増加に対応すべく、春節(中国の旧正月、2024年の元日は2月10日)明けに数百人の従業員を緊急採用した。

欧米からの受注が2割増加

山東省青島市の雑貨メーカー、山海家居用品の最高経営責任者(CEO)を務める尚勁松氏によれば、欧米の取引先が在庫圧縮に追われていたため、同社は2023年7〜9月期まで受注も出荷も低迷していた。しかし同年10〜12月期を境に、受注が徐々に戻り始めた。

同社はコップや保存容器などの家庭用雑貨を主に欧米向けに輸出している。尚氏によれば、2024年1〜3月期の出荷量は前年同期比18%増加し、4〜6月期に関しては「現時点の受注量は前年同期より2割以上増えている」という。

輸出業者にとって新規受注の回復は朗報であるものの、彼らの心中は複雑だ。なぜなら、戻ってきた需要を中国の同業者が奪い合い、価格競争がエスカレートしているからだ。


広州交易会の出展企業は、海外のバイヤーからの受注獲得を激しく競っている。写真は広州交易会の会場内(中国進出口商品交易会展館のウェブサイトより)

「業界内の値引き競争は熾烈だ。価格競争に加わらなければ、同業者に受注をさらわれるのを黙って見ているだけで、従業員を養えなくなる。さりとて価格競争に参戦すれば、年間100万ドル(約1億5477万円)の損失が出るかもしれない」

広州交易会に出展したある減速機メーカーの担当者は、財新記者の取材に対してそう実態を打ち明けた。

人民元安でも利益は残らず

最近の(対ドル為替レートの)人民元安は、輸出企業の経営にとって有利な要素のはずだ。しかし「中小企業の場合、人民元安の利益は価格競争の原資に回さざるを得ず、ほとんど残らない」と、ある出展企業の担当者はため息をつく。


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輸出量は増えているが、輸出価格は下がっている――。これは広州交易会の出展企業に限らず、中国の多くの業界が抱える共通のジレンマだ。

業界団体のまとめによれば、2024年1月から2月までの中国の鋼材輸出量は前年同期比32.6%増加したが、重量当たりの平均輸出単価は同32.1%も下落した。そのほかの分野でも、例えば石油製品の平均輸出単価は同5.3%、アルミニウム製品は同8.6%、タイヤは同2.4%それぞれ下落している。

(財新記者:王婧)
※原文の配信は4月24日

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