化粧品ブランドのローラゲラー(Laura Geller)による40歳以上の女性をターゲットにしたキャンペーン「成熟した女性の日(Mature Women’s Day)」は、45%の売上増と、メディアのハロー効果をもたらした。

成熟した女性にとって美容習慣は「機能的なもの」



市場調査会社ミンテル(Mintel)の新しい2023年のデータによると、40歳以上の女性はほかの世代と比較して、スキンケアやボディプロダクト、ヘアケア、オーラルケア、デオドラントなど、ほとんどのパーソナルケアおよび美容カテゴリーに多くの金額を費やしている。しかし、若い買い物客の消費額がわずかに多いのは、化粧品とフレグランスである。これは、成熟した女性にリーチするためには、よりニュアンスのあるメッセージを採用することが、業界のマーケターにとって事業を拡大させる好機であることを示している。

ミンテルの美容およびパーソナルケア担当シニアアナリストのカーソン・キッツミラー氏は米グロッシーに、「便利で、長持ちし、時間を節約できるという製品の宣伝文句は、女性が年を重ねるにつれてますます重要になり、多くの顧客が時間の節約に役立つ製品により多く支出したいと考えている」と語った。また、「40歳以上の女性はこのカテゴリーでの経験を重ねており、ルーティンが確立されているので、若い消費者とは異なり、美容品やパーソナルケア製品の購入について友人や家族に相談したりはしない」。

さらに、「55歳未満の女性、特に35〜54歳の女性はまだ新しいブランドや製品を試すことに興味を持っているが、55歳以上の女性ではそうした人の数が激減する」と付け加えた。

同氏は、若い消費者は気分を高揚させるための「セルフケア」として美容習慣を実践することがあるのに対し、成熟した女性は自分の美容ルーティンを機能的なものだと考えていることが多いとも報告している。

インフルエンサー、バイラルソーシャルメディア、口コミマーケティングに頼ることは、年配の消費者に対しては効果が薄いかもしれない。彼女たちは「効果と信頼性の指標として、個人的な知識や信頼できるブランドから提供されるコミュニケーションに頼っている」とキッツミラー氏は述べた。

年齢に応じた割引が受けられるキャンペーン「Own Your Age」



年配の女性へのリーチに成功しているブランドにとっては、それは結果を見れば明らかだ。

そのひとつがローラゲラーだ。4月9日に開始した「オウンユアエイジ(Own Your Age、年齢を愛そう)」キャンペーンは、ローラゲラーが制定し、2021年に登録された毎年4月9日の記念日「全国成熟した女性の日」に合わせて行われたものだ。キャンペーンではコメディアンのリアン・モーガンを起用した広告や短編のナレーション動画が展開され、ブランドのD2Cサイトでは、3年連続となる1日限りの年齢に基づく割引が提供された。

「52歳なら52%オフ。73歳なら73%オフ。つまり、年を重ねれば重ねるほど、実際に経済的な利益が得られるようにしている」と、ローラゲラーのほか、化粧品会社のジュレップビューティー(Julep Beauty)やカバーFX(Cover FX)、ブリス(Bliss)、マリービューティー(Mally Beauty)を子会社とするASビューティー(AS Beauty)のブランドマーケティング担当バイスプレジデントであるサラ・ミッツナー氏は語った。

この日のベストセラーは、ローラゲラーのベイクトバランスアンドブライトファンデーション(Baked Balance-n-Brighten Foundation)、ベイクトスターターキット(Baked Starter Kit)、ブレンディングビューティーブラシセット(Blending Beauties Brush Set)、オウンユアエイジキット(Own Your Age Kit)だった。

ローラゲラーはマーケティングソフトウェアのクラビヨ(Klaviyo)を使用して、プロモーションのロジスティクスを合理化した。顧客が連絡先情報と生年月日を入力すると、すぐに専用の割引コードが表示されるが、これは4月9日から1週間使用できる。ミッツナー氏は発行したコードは4万4731件で、そのうち1万8382件が新規顧客に向けたものだったと米グロッシーに語った。4000人以上の顧客がその場で購入し、当日の平均サイト滞在時間は1分28秒増加。売上は前の週の同じ時間より45%増加し、直帰率は24%減少したという。

さらに、アーンドメディア全体でハロー効果も見られた。ニューヨーク市のテレビ番組フォックス11ニュース(Fox 11 News)と「グッデイニューヨーク(Good Day New York)」がこのセールを取り上げた結果、売上とトラフィックが急増した。また、雑誌のフォーブス(Forbes)、プリベンション(Prevention)、アドエイジ(Ad Age)、ハッピー(Happi)、ニュービューティ(New Beauty)、ザ・ドラム(The Drum)、ポッドキャストのグロスエンジェル(Gloss Angeles)のほか、Yahooのピックアップ記事でも取り上げられた。

「幅広くさまざまな種類のメディアで取り上げてもらったことを誇りに思う」とミッツナー氏は述べた。「このことが、キャンペーンの多面性を物語っている」。

ローラゲラーは成熟した女性の肌のためのメイクアップグッズで知られており、キャンペーンには40歳以上の女性だけを起用しているが、ミッツナー氏は、このキャンペーンは「金銭的な動機づけと行動志向指」があったために特に強力だったといい、「我々が日々行っている視覚的な表現から一歩踏み込んでいる」と付け加えた。

ローラゲラーはソーシャルメディアアカウントを通じて、女優のフラン・ドレッシャーやパトリシア・ヒートン、アンジー・ハーモン、ジェニー・ガース、タレントのバンナ・ホワイトといった有名人が作成したコンテンツを定期的に紹介している。「成熟世代のタレントにリーチアウトしているとき、すでに別の美容ブランドと仕事をしているから参加できないといわれると嬉しくなる。それはとても珍しいことだからだ」とミッツナー氏は米グロッシーに語った。「あの領域で動いているのは、多くの場合、当社だけだ」。

女性のキャリアに焦点を当てたロレアルパリのキャンペーン



成熟した女性の日には、高級化粧品ブランドのロレアルパリ(L’Oréal Paris)も「ウォースイットレジュメ(Worth It Résumé、価値がある履歴書)」というキャンペーンをローンチし、ブランドアンバサダーとして女優のヘレン・ミレンやエバ・ロンゴリア、ジェーン・フォンダ、アンディ・マクダウェル、ケイト・ウィンスレット、アジャ・ナオミ・キングをフィーチャーしたが、このなかでもっとも若いのは39歳のキングだった。

ロレアルパリのキャンペーンは、女性のあいだでの知名度を高めると同時に、女性がキャリアで成功していると感じるために避けて通れない極度のプレッシャーについて話し合う機会を提供することにフォーカスしている。このキャンペーンはロレアルパリのブランド構築の取り組みで、製品や成分については言及されていない。先にあげた女性たちがLinkedInのプロフィールに失敗談を追加し、いかに挫折が成功につながるかを強調した動画や画像が中心となっている。

効能に関する直接的なメッセージを求める女性たち



しかし、美容キャンペーンの認知度が高まり、成熟した女性の表現方法に関するレトリックが変化しているにもかかわらず、ミンテルのキッツミラー氏は、40歳以上の女性の半数以上が広告で発信されている新たな「プロエイジング(加齢促進)」というメッセージに対して複雑な感情を抱いていると指摘した。彼女たちは「加齢に関する表面的な言葉の変化ではなく、効能に関する明確で直接的なメッセージの発信と、自分の年齢に合わせて設計された製品を求めている」という。

化粧品化学者でスキンケアブランドのビューティスタット(BeautyStat)の創業者であるロン・ロビンソン氏によると、成熟世代の顧客の最大の悩みは、深いしわ、ほうれい線、肌のハリが失われること、たるみ、シミだという。同氏は、研究開発において高濃度のビタミンC、レチノイド、ヒドロキシ酸、ペプチドを使い、これらをターゲットとしている。

「我々の調査で、これらの肌悩みが成熟した女性にとって最大の懸念事項であることがわかった」と、ロビンソン氏は米グロッシーに語った。「この肌悩みに対する公式化されたベストプラクティスや特効薬はない。本当に必要なのは実験とテストだ」。

ビューティスタットのリンクルリラクシングモイスチャライザー(Wrinkle Relaxing Moisturizer)がベストセラーになったのは、その効果について成熟世代の女性に語りかけたためだという。「ほとんどのブランドがソーシャルメディアでZ世代やミレニアル世代を賛美しているなか、当社のソーシャルメディアとウェブサイトでは成熟した女性にスポットライトを当てた。これにより、多くのエンゲージメントが生まれた」と同氏は述べた。「その結果、多くの消費者が当社の保湿剤についてさらに詳しい情報を求め、購入するようになった」。

「このパワフルな世代の女性を獲得する機会はまだ残されている」と、ミンテルのキッツミラー氏は述べた。「美容とパーソナルケアに関して決まった習慣やルーティンを確立しているかもしれないが、それでもまだ、肌の健康と見た目を改善する方法を探している」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: How brands are successfully reaching women over 40]

LEXY LEBSACK(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)