15万人近いユーザーと約1億6000枚の写真を抱えているという写真共有サイト「EyeEm」の利用規約が改定され、「EyeEmコミュニティにアップロードされた写真をAIのトレーニングに利用する」旨が追記されたことがわかりました。30日以内に削除しないと、サイトに残っている写真は規約に基づいて、あらゆる使用がOKとなるライセンスが付与されることになります。

Photo-sharing community EyeEm will license users’ photos to train AI if they don’t delete them | TechCrunch

https://techcrunch.com/2024/04/26/photo-sharing-community-eyeem-will-license-users-photos-to-train-ai-if-they-dont-delete-them/

EyeEmはドイツで2011年に創業した写真共有コミュニティです。

EyeEm | Authentic Stock Photography and Royalty-Free Images

https://www.eyeem.com/



2014年からはストックフォトサービス・Getty Imagesとパートナーシップを結んで写真の提供を開始したほか、マーケットで写真の販売が行えるようになりました。

ベンチャーキャピタルなどから総額2400万ドル(約37億9400万円)を調達していたEyeEmですが、2021年4月、スイスに拠点を置くSNS運営企業・Talenthouseが4000万ドル(約63億2300万円)で買収。

しかし2023年初頭、Talenthouseは事業整理のため、スペインを本拠とするストックフォトサービスのFreepikなどを展開するEQTにEyeEmを売却しています。売却価格は明らかになっていません。近年、EyeEm事業に携わっているのは、長らくEyeEmに携わっており直近のCTOでもあったピーター・ウィラート氏と従業員わずか3人という最小構成だったそうです。

そのEyeEmが新たに示した利用規約の第8条第1項「権利の付与」の項目によると、EyeEmにアップロードされたコンテンツについて、「複製、頒布、公衆展示、変形、翻案、二次的著作物の作成、公衆への発信、および/または販売促進を伴う非独占的・全世界的な譲渡可能・サブライセンス可能な権利を当社(EQT)に許諾する」と定められているとのこと。

特に、「ソフトウェアやアルゴリズム、機械学習モデルのトレーニング、開発、改良のためにコンテンツを使用する譲渡可能かつサブライセンス可能な権利が含まれる」ということが明示されています。

なお、第8条第1項で付与された権利は、「第13条に従ってEyeEmコミュニティおよびパートナープラットフォームから完全に削除されるまで有効」となっています。

第13条の削除手順として示されているのは、EyeEmマーケットやパートナープラットフォームに登録されているコンテンツの削除方法です。手順によると、「support@eyeem.com」に対して削除したいコンテンツのIDを伝達した上で、アカウントからも削除するのか、マーケットからのみ削除するのかを選んで申請を行ういう流れになっていて、最大で180日かかるとのこと。

ところが、別途「完全に削除される前に締結されたすべてのライセンス契約、およびそれによって付加された使用権は、削除要求または削除の影響を受けません」との文言があり、また、第10条で「アカウントを削除した場合、自分の仕事に対する報酬を受け取る権利を放棄する」ことが定められています。

このため、EyeEmにアップロードしたコンテンツをAIのトレーニングに利用されたくないユーザーは、1カ月以内に手動ですべてのコンテンツを削除するしかないと、ニュースサイトのTechCrunchは指摘しています。

TechCrunchによれば、ユーザーが対応を行う期限までの猶予がわずかしかないため、EyeEmからのコメントを得られていない状態ながらも、情報を公開することにしたとのことです。