2024年4月1日に、シリアのイラン大使館周辺がイスラエルによるものとされる空爆を受けたことへの報復として、イランが4月13日にミサイルや自爆ドローンを用いたイスラエルへの大規模攻撃を行いました。中東での緊張が高まる中、SNSでは無関係な事件の写真や生成AIを用いた画像による偽情報が大量に拡散されています。

Misleading and manipulated content goes viral on X in Middle East conflict - ISD

https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/misleading-and-manipulated-content-goes-viral-on-x-twitter-in-middle-east-conflict-iran-israel-strikes/

イギリスのシンクタンクであるInstitute for Strategic Dialogue(ISD)によると、無人機がイランからイスラエルに発射されてから7時間以内に、進行中の状況の様子だと主張する虚偽や誤解を招くことを目的とした偽情報、およびAIが生成した画像や動画が34件X(旧Twitter)に投稿され、合計で3700万回以上表示されたとのこと。

虚偽を拡散したアカウントの77%は認証済みの有料プレミアムアカウントで、Xでの収益化を狙った物でした。また、ISD確認した34件のうち、その時点でコミュニティノート機能による注釈が付けられていたのは2件だけだったとのこと。また、イラン政府が国営テレビでチリの山火事の映像を放映し、イランの攻撃でイスラエルが受けた被害だと主張していたことも確認されました。

以下は、ドバイのニュースメディア・Al Arabiya Englishが、「イランの国営テレビによりイスラエルの被害の模様だとして放送されたチリの山火事」だと指摘している映像です。

Iran state TV airs Chile fires footage - YouTube

イスラエルではなくテキサス州の山火事だと指摘されているものもあります。



イギリスの公共放送・BBCで偽情報や陰謀論の検証をしているジャーナリストのシャヤン・サルダリザデ氏は、Xに投稿された偽情報の訂正を行っています。

例えば、以下はアメリカの30の基地がイランを取り囲んでいると主張する画像に対し、サルダリザデ氏が「アメリカはパキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタンに軍事基地を保有していません」と述べているポストです。



また、イラクで撃墜されたイランの無人機のものだという映像は、実際には無関係なシリアの映像とのこと。



イランのドローンから身を隠しているイスラエル人だとされている動画が、2023年の古い映像だったこともありました。



ウクライナ戦争では、ゲームの動画が実際の戦場の映像だとして出回ったことがありますが、今回のイスラエルへの攻撃でも同様に、軍事シミュレーションゲーム「Arma 3」の動画が拡散されています。



パレスチナでのラマダン関連の行事の様子が、「パレスチナ人がイスラエルに対するイランの報復攻撃を祝っている動画」として使用された例もあります。



「ミサイル攻撃でパニックに陥っているイスラエル人の動画」として500万回近く再生された動画が、実際にはアルゼンチンである歌手のファンが集まっている様子を映したものだったこともありました。



サルダリザデ氏以外のXユーザーも、偽情報の拡散を指摘するポストを投稿しています。Xユーザーのアルセニオス・ケクリコグル氏によると、パリの地下鉄の映像がイスラエルのテルアビブ空港の映像だと主張されているとのこと。



偽情報を拡散しているアカウントの多くは、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)を名乗っているとISDは指摘しています。サルダリザデ氏も、「このプラットフォーム上の『OSINTアカウント』による大量のBS(Bullshit:うそっぱち)には付き合いきれません。エンゲージメントのために投稿されているだけの大量のゴミです」と述べました。