冷凍生餃子を無人で24時間販売する「祇園餃子」

 コロナ禍の巣ごもり需要で急増した、餃子の無人販売店。24時間営業のため、消費者にとっては利便性が高く、事業者にとっては人件費などのランニングコストを抑えられるメリットがある。帝国データバンクの調査によれば、2023年7月時点で全国におよそ1400店あり、
3年で10倍以上に拡大しているという。

 その陰で窃盗事件が相次ぎ、防犯カメラに映った犯行動画がしばしばニュースになっている。3月26日には、FNNが、6日間で8回、合計4万3000円の商品が同一人物に盗まれたと報じている。

 明らかな犯罪だが、ネット上では《リスクを承知で無人販売所ですよね?》など、店に対する厳しい声も散見される。はたして、店も悪いのだろうか? 小売業に詳しい弁護士の西浦善彦氏に聞いた。

「無人であっても、販売している商品をお代を払わず持って帰る行為は、窃盗罪に該当します。無人販売所というと、昔は田舎で野菜が売られているイメージでしたが、防犯システムが進化した現代では、店番を置かずとも、店内の客の様子や商品の状況をリアルタイムで記録できるので、被害の届け出が容易になっています。人件費節約の意味でも、営業側にとって合理的だと思います。

『人を置かないから仕方ない』『被害者面するな』『店側に責任はないのか』という意見もあるようですが、店側にまったく責任はありませんし、もちろん盗む側の言い訳にもなりません」(以下、西浦氏)

 ニュースで流れる犯人の顔を隠した映像については、「顔を映せばいい」という声もある。

窃盗動画を見て、『明らかに犯罪してるでしょ。顔を見せて社会的制裁も加えられるべき』とヤキモキしがちですが、有罪認定や刑の判断は裁判所の仕事です。

 また、一般人の犯罪でむやみに顔を映したり実名報道することは、プライバシー侵害になります。仮に自分や自分の家族が窃盗犯と間違われ、顔が映った動画を報道された場合、その後の人生はどうなるでしょうか? 想像してみてください」

 無人販売店は「モラルの高い日本だから成り立つ」「海外ではあり得ない」という声もよく聞かれる。その国の文化がビジネスの成否を決めるということはあるのだろうか。

「アメリカ、イギリス、フランスなどの諸外国でも、セルフレジが導入されています。入店と会計がクレジットカードに紐づいたシステムで運用されるなど、窃盗対策もされています。

 ただし、イギリスでは200ポンド(約3万7000円)、アメリカでは950ドル(約14万3000円)以下の窃盗は軽犯罪にすぎないので、移民によるセルフレジでの窃盗が増えていると言われています。

 たしかに、犯罪率の低い日本だからこそ、無人餃子店が成り立つのかもしれません」

 犯罪が増え、結局、無人販売店がなくなってしまうのは避けたい話だ。