ナイキ(Nike)は3年前に卸売りから撤退したが、より多くのブランドがパートナーとの販売のメリットを求めるなか、現在はこのモデルを再び受け入れている。

卸売の復活



ナイキは3月21日、2024年度第3四半期の決算発表で、ここ数年のD2C一辺倒のアプローチに比べて明らかに異なるトーンを打ち出した。同社の最高経営責任者(CEO)ジョン・ドナホー氏は電話会見で、卸売パートナーシップに関して、「重要な調整を行う必要がある」ことは明らかだと述べた。

ナイキは、パートナーとの小売売上高が2ケタ成長し、卸売売上高は一部の市場で12%、全体では3%増加したと報告した。一方、ブランドのダイレクト販売の伸びは低く、一部の市場では1%も減少し、全体では比較的横ばいだった。

パンデミックが始まった当初、ナイキはダイレクト販売事業に資金を注ぎ込み、多くの卸売パートナーとの関係を断ち切った。しかし、同ブランドがその戦略への対抗策を口にしたのは、これで2四半期連続となる。2023年12月には、50%以上のパートナーとの提携解消が在庫管理に悪影響を与えたことが明らかになったため、卸売パートナーシップに再投資することを示唆したのだ。

卸売はここ数カ月、小売業界で大きな復活を遂げている。たとえば、ワークウェアブランドのブラント(Brunt)は2月、23社のパートナーと提携し、卸売に参入した。

卸売が果たす役割



しかし、卸売モデルにはまだ課題がある。シチズンズ・オブ・ヒューマニティ(Citizens of Humanity)グループのCEOエイミー・ウィリアムズ氏は、2月のGlossyポッドキャストで、卸売はブランドの全商品ラインナップのほんの一部しか顧客に見せないことが多いと語った。そのため卸売は、D2Cと連携するのがもっとも効果的であり、ブランドを知ってもらう前に、できれば最初の購入後にD2Cに移行してもらうための手段である。

卸売チャネルへの参入を目指すD2Cブランドは、しばしばノードストローム(Nordstrom)を利用する。パーシヴァル(Percival)、ウォッチファインダー(Watchfinder)、アンディ・スイム(Andie Swim)、ヴオリ(Vuori)といったD2Cブランドは昨年、唯一の、あるいは唯一の卸売パートナーとしてノードストロームと取引している。3月19日には、ノードストローム一族が同社を非公開化しようとしていると報じられた。ノードストロームは今後、前四半期に15%売上を伸ばしたディスカウントストア、ノードストローム・ラック(Nordstrom Rack)への注力を強めていくと予想される。

ノードストローム・ラックは、フリーピープル(Free People)やグッドアメリカン(Good American)など、ノードストロームの本店と同じD2Cブランドの多くを扱っている。また、ブランド各社は卸売で販売される際の大幅な値引きを嘆くが、低価格は興味を引くのに最適な方法だ。ナイキは、前四半期にジョーダン・ブランドを中国で大々的にプロモーションしたことで、北米で3%、中国で5%売上を伸ばすことができたと話した。

[原文:Weekend Briefing: What Nike’s strategy shift means for wholesale]

DANNY PARISI(翻訳・編集:戸田美子)