子ども自身が学習の計画を立てられるよう、子どもでも無理なく続けられる「手帳活用術」とはどのようなものでしょうか?(写真:C-geo / PIXTA)

4月から新学年が始まるのを前に、子どもの塾や家庭学習について、取り組み方を見直そうという保護者もいるでしょう。そこで首都圏、関西圏に展開し、これまで10万人以上を指導してきた中学受験塾・SAPIX(サピックス)小学部監修の「手帳」活用術から、小学生でも無理なく続けられる勉強の習慣化と、保護者のサポートについて考えます(本記事は『SAPIX式 頭のいい子が使っている学力アップ手帳』から一部を抜粋し、再編集したものです)。

長年の中学受験サポートからわかったメソッド

わが子に「頭のいい子」になってほしいと願わない保護者はいないでしょう。では具体的に、頭のいい子とはどのような子どもだと思いますか?

それは、ひと言であらわすと「自発的に学び続けられる子」です。自ら学び続けられることこそが、先の見えない時代を生き抜く「頭のよさ」であると考えています。

自発的に学び続けて学力を上げるためには、子どもが学びを楽しいと感じることが必須条件。できたことを自他ともに認めることで、学ぶ楽しさに加え「もっと学びたい」「もっと知りたい」といった好奇心・探究心が育ちます。

そこでおすすめしたいのが、手帳の活用です。

たとえば月の初めに「今月の目標」を立て、月の終わりに振り返りをしましょう。目標への意識づけができるように、お子さん自身が目標を書くようにしてください。記入例を下図で解説します。

*外部配信先ではすべての画像を見られない場合があります。その場合は東洋経済オンラインのサイトでご覧ください


(画像:『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIX式 頭のいい子が使っている学力アップ手帳』)

毎月の初めに記入

【STEP1】「目標」欄には、4教科の勉強の目標に加えて、生活習慣の目標も書きましょう。勉強習慣をつけるには、生活の基盤を整えることも重要です。または、習い事の目標を生活の項目に書くのもおすすめ。スモールステップでレベルアップできる目標がベストです。

【STEP2】「何をする?」欄には、目標の欄に記入したことを達成するためには、どんなことをこの1カ月間にすればいいのかを考えて書きます。どうやって考えればいいのかわからない子も多いので、一緒に考えてあげてください。


実際の記入例(画像:『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIX式 頭のいい子が使っている学力アップ手帳』)

毎月の終わりに記入

【STEP3】1カ月間どうやって過ごしたか、目標に近づくことができたかをお子さんと一緒に確認します。そして目標を達成できたかをお子さんが記入します。1カ月の振り返りをする際は、「できたこと」を認める声かけを心がけましょう。

【STEP4】お子さんの1カ月間のがんばりを、文字にして認めてあげます。STEP3の振り返りのときに声にだして「できたこと」を認めながら、この欄に書き残すことも大切です。できたこと以外にも、がんばっていたことや心に残ったお子さんの行動を書くのもいいですね。

記入の自由度を高くする

毎日「〇〜〇時まで算数の問題集を解く」「●〜●時は食事と休憩」といったように時間軸でこまかく管理・実行することは、小学生にはまだ難しいでしょう。

大人でも計画通りに動ける人は少ないはずです。予定が緻密すぎることで実行できず、手帳ぎらいになる可能性すらあります。それでは本末転倒。


1カ月カレンダーの使い方(画像:『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIX式 頭のいい子が使っている学力アップ手帳』)


1週間カレンダーの記入例(画像:『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIX式 頭のいい子が使っている学力アップ手帳』)

小学生でも書きやすく、続けやすくするために、毎日の予定を書く欄は、自由度の高いつくりが良いでしょう。まずは、「続けられた!」という自信を育むことで、学ぶ力を高めることができるのです。

勉強でも生活習慣においても子どもの自主性は、まわりの大人がサポートをして少しずつ手を離していくことで育ちます。ただサポートとは、あれもこれもと手をかけて先回りすることではありません。

本来のサポートとは「きっかけや機会をつくること」です。たとえば、自分で計画を立てたり自分で振り返ったりする機会が増えれば、子どもは自ら考えて行動できる自主性が身につきます。

その意味で手帳は、子どもの「自立する力を育てる機会をつくる」ものとなります。

ただ、手帳を使う際に心がけてほしいのは、大きな期待を抱きすぎないことです。子どもが自立する力を身につけるには、時間がかかります。あせりすぎず、スモールステップで取り組みましょう。

宿題がおわらないときのサポート法

「塾は楽しそうに行きますが、宿題をこなせていないんです」

「うちの子、宿題が全部できていないみたいなんですが大丈夫でしょうか?」

宿題に関する保護者からのご相談はとても多くなっています。たとえ宿題がおわっていなくても保護者の子ども時代のように先生に叱られることはありません。SAPIXでも「やってきたことをほめる」ことを心がけています。

ただ、一足飛びに勉強量を増やすことはできません。4〜5年生で宿題に苦戦している子は、あせらずに、少しずつ勉強量を増やすスケジュールを作成しましょう。

たとえば、「平日におわらなかった塾の宿題は、日曜の朝にやろうか」と子どもと相談して、時間を確保していくご家庭が多いようです。

また、次第に子どもの心に火がついて、自ら復習をするようになっていくケースもあります。

SAPIXでは、授業時間や宿題の量が多くなる6年生になると「宿題にも優先順位をつけて取捨選択してください」とお伝えします。

たとえば、早くおわりそうな漢字・計算・知識問題から先に解くのもひとつの手。時間がかかりそうなものは、そのあとに取り組みます。

「宿題がおわらない」とあせってこなすのではなく、子どもと相談しながら、得意・不得意分野や志望校に合わせて取捨選択してください。

テストの間違い直しはどんな手順がいい?

テストが返却されたとき、「間違えたところを見直しておきなさい」と、子どもに声をかけていませんか?

そういった指導をされてきた大人は少なくないので、子どもに対しても同じように伝えている人は多いでしょう。しかし、もしかしたら子どもたちは「いつ」「どのように」復習すればいいか、具体的な方法を理解していないかもしれません。

重要なポイントは「なるべくはやく」間違い直しをすることです。テストに取り組んだ記憶が新しい状態で復習をしたほうが効率的です。

最近では、ほとんどの塾のテストがデジタルで返却されるので、テスト翌日には答案と解答・解説が送られ、2〜3日の間には電子採点がされた答案が表示されます。

このようにデジタルで答案が返却される場合は、下記の順で見直しをしましょう。

1.テスト翌日に計算問題や記号選択問題の答え合わせをします。間違えている問題があれば、解答・解説を見ながら「なぜ間違えたのか」を考えて見直しをします。

2.採点された答案が表示されたら、解答・解説を参考にしながら文章記述問題を振り返ります。

その際に、正答率が高い問題を中心に見直していきましょう。正答率5%前後の問題は「みんなができていない問題」なので、注力しすぎる必要はありません。そうした戦略を親子で一緒に立てていく時間も大切にしてください。

授業の復習はいつ、どのくらいすべき?

テストの見直し時期と同様に、授業の復習も「なるべくはやくする」が理想です。

SAPIXの授業は、4年生が週2日、5年生が週3日、6年生の前半が週3日、後半は週4日。6年生の前半までは、塾のある日と塾のない日が交互にあるので、「塾での学習→自宅で復習→塾での学習→自宅で復習」というリズムがつくりやすいでしょう。


SAPIXに通っていない子も、塾のない日を復習にあてるのがベストです。

とはいえ、理想と現実があるのも事実。まずは宿題が授業の復習になっているケースが多いので、最低限それができるように学習時間を設けられるといいですね。

宿題に加えて、授業中に書いたノートやプリントの見直しをする時間を少しずつとっていけると理想的です。

注意点は、「無間地獄」状態にならないようにすること。

子どもにとって一番つらいのは、やってもやっても「おわり」がこないことです。だから、「今日はここまでがんばろう」「今日は夕飯まで勉強しようか」など、区切りを決めることがすごく重要です。

「ここまでがんばったら遊べる」といった目標が明確にわかったほうが、集中して取り組むことができます。時間で区切るのがいいのか、「何ページまでおわらせる」といった内容で区切るのがいいのかは、子どもの様子や学習内容に合わせて変えていけるといいでしょう。

(SAPIX小学部)