「愛子さまを天皇に」「波風立てずに見守れ」皇位継承議論、弁護士たちの声 「女性天皇」賛成が75%、「いま結論を」57%
愛子さまが4月より日本赤十字社の嘱託職員として勤務することが内定し、公務でお姿を拝見する機会も増えることになりそうです。しかし現在、皇位継承順位は1位が秋篠宮さま、2位が悠仁さま、3位が常陸宮さまとなり、若い世代での男性皇族は悠仁さましかいません。皇位継承の安定性には不安が残されています。
2021年12月には、皇位の安定的継承に関する有識者会議が報告書をまとめ、皇族数を確保するため(1)女性皇族(内親王・女王)が婚姻後も皇族の身分を保持する、(2)皇族として認められていない養子縁組を可能にし、旧11宮家の男系男子を皇族とする、の2案を提示しました。
安定的に皇室制度を維持していくために、皇位継承のあり方、議論はどうあるべきなのでしょうか。弁護士ドットコムでは、会員弁護士にアンケートを実施し、258人から回答が寄せられました(実施期間:2月14日〜2月20日)。
女性天皇については「賛成」が53.1%、「どちらかといえば賛成」が21.7%。続いて「どちらともいえない」が12.4%。「どちらかといえば反対」(6.6%)「反対」(6.2%)となりました。
一方で、「男系男子による継承」ではなくなる「女系天皇」については「賛成」が43%、「どちらかといえば賛成」が16.3%となる一方で、「反対」とした人は15.9%にのぼります。
「皇室のあり方をめぐる議論のタイミングについて、どう考えますか?」との質問については「もはや手遅れ」(20.2%)、「いま結論を出すべき」(56.6%)となり、「悠仁さまが即位するまで先送りすべき」の11.6%を大きく離しました。
以下、詳しくみていきます。
●天皇制に「賛成」「どちらかといえば賛成」が60.8%
「そもそも現行憲法下での天皇制に賛成ですか、反対ですか」と質問したところ、「賛成」が36.0%、「どちらかといえば賛成」が24.8%で、60.8%が賛成であることがわかりました。
「どちらともいえない」は20.5%。「どちらかといえば反対」(9.3%)「反対」(9.3%)で、18.6%が反対の立場でした。
なぜ天皇制度に賛成・反対なのか。次のような声があがりました。
「象徴として、国民に親しまれている。外交上も重要な役目を担っている」(賛成)
「天皇の存在は憲法が制定される前よりも我が国に定着したものであり、天皇制云々を憲法の下で論ずるべきではない。天皇の存在を前提とした憲法づくりをすべき」(賛成)
「日本の文化であり、歴史であって、世界に誇るべき存在であるから」(賛成)
「皇室の方々のニュースを見るのが楽しいから」(賛成)
「法の下の平等に関する例外として意味があるのかは不明だが、諸外国の要人を国賓としてもてなすことに一定の外交メリットはあると思われる」(どちらともいえない)
「あまり考えたことはない」(どちらともいえない)
「皇族に自由がなくて気の毒」(どちらともいえない)
「第二次世界大戦で天皇が果たした役割につき、責任を取っていない。また、皇室の維持に費用が掛かりすぎる」(どちらかといえば反対)
「法の下の平等、個人の尊厳の理念に反する。天皇崇拝の非合理的な思想や行動をはびこらせる」(反対)
「天皇制は直ちに廃止すべき。その起源からして嘘で塗り固めた天皇制は民主主義制とは相容れない」(反対)
「日本国憲法が依拠する近代人権思想の理念に反する。天皇制こそ民営化すべき」(反対)
●女性天皇に「賛成」「どちらかといえば賛成」が74.8%
女性天皇については「賛成」が53.1%、「どちらかといえば賛成」が21.7%。「どちらともいえない」が12.4%。「どちらかといえば反対」が6.6%、「反対」が6.2%でした。
理由としては、次のような声が並びました。
「ジェンダーで分けることは現代社会の倫理からかけ離れている。天皇が象徴ならなおのこと恥ずかしい」(賛成)
「歴史上、女性天皇もいた」(賛成)
「憲法上禁止されていないし、男性・男系に限る合理的理由もない」(賛成)
「別に男性でも女性でも資質に差はないし、年長の者がいるのに、男子だからといって幼少の者に天皇を継がせることに合理性がない」(賛成)
「世界の趨勢。男系などと力んでも神話の時代からの話のこじつけ」(賛成)
「なぜダメなのか皆目わからない。当然良い。性別でわける意味は全く見出せず、むしろ不自然不可解」(賛成)
「象徴としての機能や各種行事を遂行できれば足りる。健康かつ一定の品位を備えていれば男女間に特段の優劣はなく、女性であっても問題が生じるとは思われないから」(賛成)
「やむを得ない」(どちらかといえば賛成)
「男性天皇以上に結婚相手探しに苦労することが目に見えているので、安定的な皇位継承にさほど有益ではないし、ご本人も気の毒だから。眞子様の結婚であれだけ世間から色々いわれて可哀想だったのに、女性天皇となるとあれ以上に色々言われるのは間違いない」(どちらかといえば反対)
「皇位継承の継続性に繋がらない」(どちらかといえば反対)
「男系男子の次期天皇への中継ぎとしてなら認めてもよいと思うが、それ以外は反対」(どちらかといえば反対)
「血統が途切れるから」(反対)
●女系天皇に「反対」は15.9%、「女性天皇反対」の2倍以上に
女系天皇については「賛成」が43.0%、「どちらかといえば賛成」が16.3%。「どちらともいえない」が17.4%。「どちらかといえば反対」が7.4%、「反対」が15.9%でした。反対の声は女性天皇に反対とする人(6.2%)の数を倍以上上回りました。
理由は様々です。
「男系、女系を理解している国民はほとんどいない」(賛成)
「男女平等の要請から女系天皇を排除する合理的根拠もないように思うから」(賛成)
「憲法上禁止されていないし、男性・男系に限る合理的理由もない」(賛成)
「男系でも女系でも遺伝子的には変わらない。不合理な制度である」(賛成)
「逆に、女系天皇を反対する理由がないのでは」(賛成)
「天皇という存在に血筋を厳格にする必要はない」(どちらかといえば賛成)
「何をもって女系天皇と定義するかについての知見を持ち合わせていないから」(どちらともいえない)
「1代限りの女系天皇では意味がないし、恒久的な女系承継を想定するには議論が不足している」(どちらかといえば反対)
「万世一系の血筋は守るべき」(反対)
「我が国の血統として家制度と男児血統が伝統的に認められ、女系は傍流の認識であるから」(反対)
「天皇制は廃止すべきであり、天皇制の存続につながる制度改革には反対」(反対)
「今まで男系だったから」(反対)
「神武以来というつもりはないが、ある程度長期間にわたって男系の系譜を維持していたのであるから、一時代の価値観で変更するべきではない」(反対)
●女性宮家の設立、「賛成」「どちらかといえば賛成」が過半数
女性宮家の設立については「賛成」が34.1%、「どちらかといえば賛成」が16.7%。「どちらともいえない」が26.7%。「どちらかといえば反対」が10.5%、「反対」が12%でした。
その理由について、次のような声が並びました。
「男女平等の原則から女性宮家を排除する合理的根拠もないと思うから」(賛成)
「反対する理由がないし、女系天皇制度であれば、女性宮家は自然な流れなのではないか。ただし男性・女性関係なく宮家が増えすぎないようにする方策は必要」(賛成)
「皇族の絶対数が増えなければ、安定的な皇位継承などできるはずがないから」(賛成)
「皇室外交の必要性」(どちらかといえば賛成)
「皇統男子と婚姻した場合のみ女性宮家賛成」(どちらともいえない)
「天皇制の継続には必要だが、対象となる個人の負担は重いと思うから」(どちらともいえない)
「皇位継承権を持たない以上、必要性に乏しい。旧皇族の方々を養子あるいは婿に迎えるなら別」(どちらかといえば反対)
「歴史上女性宮家はほとんど存在していないから」(どちらかといえば反対)
「皇族の公務の担い手が少ないという理由であれば、公務を減らせばよい」(反対)
「そこまでして天皇制を維持する理由がない」(反対)
「配偶者問題で皇室の権威が損なわれる」(反対)
「皇室の維持に費用が掛かりすぎるので、これ以上宮家を設けるべきでない」(反対)
●「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」案、賛成が26.4%
「女性皇族(内親王・女王)が婚姻後も皇族の身分を保持する」との案については「賛成」が26.4%、「どちらかといえば賛成」が17.8%。「どちらともいえない」が27.9%。「どちらかといえば反対」が11.2%、「反対」が16.7%でした。
理由について質問しました。
「女性天皇を認めるのであれば認めざるを得ないから」(賛成)
「女性のみ皇室を出ることに違和感があるから」(賛成)
「男女分けない結果の必然」(賛成)
「女性のみ婚姻によって身分が大きく変わる合理的理由がないから」(どちらかといえば賛成)
「婚姻後も皇族から自由意思で離脱できるようにするのであれば良いと思います」(どちらともいえない)
「本人に選択肢が与えられるようにする方が良いと思う」(どちらともいえない)
「当該女性皇族に皇位継承権を認めないのであれば賛成」(どちらともいえない)
「皇位継承権を持たない子供が生まれることになり、不安定な地位におくことになる」(どちらかといえば反対)
「皇室の血を持たない皇配に一定の権威を認めうる可能性があるから」(どちらかといえば反対)
●「旧宮家の男系男子を皇族に」→「どちらかといえば反対」「反対」が43%
「皇族として認められていない養子縁組を可能にし、旧11宮家の男系男子を皇族とする」との案については「賛成」が14.3%、「どちらかといえば賛成」が17.1%。「どちらともいえない」が25.6%。「どちらかといえば反対」(14.3%)「反対」(28.7%)でした。
その理由を詳しくみていきます。
「最も現実的な皇室を維持する方法」(賛成)
「男系男子を軸とする皇位の安定的継承に資するから。旧11宮家の廃止がGHQによる占領下での特殊な経緯によるものであることも考慮すべき」(賛成)
「実現可能であればよいが、当事者の意向を無視した議論が多すぎる」(賛成)
「男系を維持するためには必要だと思う」(どちらかといえば賛成)
「状況としてやむを得ない場合にはそれも選択肢。それでも、養子選定には血統の重みを最優先の判断基準にすべき」(どちらかといえば賛成)
「旧宮家の男系男子を皇族にして、男系男子の維持することが重要と考えるから」(どちらかといえば賛成)
「どうしようもない場合に皇室廃止となるよりはマシ」(どちらかといえば賛成)
「過去にはあったかもしれないが、養子縁組までくると天皇制そのものを一度リセットしたほうがよい」(どちらともいえない)
「議論の内容を知らない」(どちらともいえない)
「養子縁組を可能とする制度には賛成だが、皇族を男系男子に限定することへの合理的理由がない」(どちらかといえば反対)
「そこまでしてやる必要がない」(どちらかといえば反対)
「愛子内親王の配偶者としてとかならともかく、いきなり養子で天皇と言われても象徴としての機能は果たせないのでは」(どちらかといえば反対)
「旧宮家も既に皇籍離れて久しく、皇別摂家と区別する理由が乏しい。悠仁さまの次代と考えると、皇籍離脱から平気で1世紀経つことになる。むしろ男系にこだわるならば、旧宮家よりもよっぽど一部の皇別摂家の方が近い」(反対)
「遺伝学的な経緯から女系天皇を排除するなら、男系旧宮家の方が血が薄いと思う」(反対)
「旧宮家は遠すぎる。国民意識に合致しない。国民意識に合致する女性天皇を認めればよいだけ」(反対)
「女性天皇、女系天皇で十分と思われる。旧宮家の方は既に一般人として長く生活しており、今さら皇室に戻してどうにかなると思われない」(反対)
●議論のタイミング「いま結論を出すべき」が56.6%
「皇室のあり方をめぐる議論のタイミングについて、どう考えますか?」との質問については「もはや手遅れ」(20.2%)、となり、「悠仁さまが即位するまで先送りすべき」の11.6%を大きく離しました。
また「そのほか」の意見としては、「引き続き議論を続ければよい」「手遅れだが、それでも結論を直ちに出すべき」と議論を続けるべきだとする声も目立ちました。
●「早急に法改正を」「波風立てずに見守るのがよい」など様々な声
最後に「現在の皇室について考えることをできる限り具体的にお答えください」と質問したところ、次のような声が並びました。
「イギリス王室のような広報活動をすべきと考える」
「愛子さまが天皇となれるように早急に法改正を行うべき」
「国民としては波風立てずに見守るのがよいと思っている」
「できるだけ現状を変えないまま制度を維持して欲しい」
「皇族が減る前に減ることを想定した議論をしておく必要があるとは思う」
「なぜ、ここまで皇位継承の結論を先送りにして、問題解決を先延ばしにしたのか」
「その立場からいろいろな義務や制約があると思う。それでも国民を想い国民の精神的支柱となる活動をされていることには感謝です」
「現天皇家の長女愛子様に次の天皇になってほしいという意見はかなり強いのではないか。長子優先女性も可とする制度に変更されることを期待」
「学生時代に皇室について論文を書いた私としては、その時から皇位継承の議論が進展していないことに強い危機感を覚えます。左派には基礎的理解のレベルを上げていただきたいですし、右派には理想論だけではなく現実的に実現可能な形を模索するようにしていただきたいです」
「承継者を嫡子のみを想定した皇室制度は配偶者の精神的負担が大き過ぎる(これは女系天皇を認めても同様である)。現状を前提とした弥縫策だけでなく側室制度の復活など大胆な見直しも検討すべき。諸外国に目を向ければ、イスラム諸国のように、当然のように側室を維持している国は多数あるのであって、キリスト教国でないのにいきなり側室制度を廃止した我が国がむしろ異例であり、復活を議論することは本来何らおかしくない」
「天皇制は維持すべきだと思いますが、女系天皇の容認を含め、少しずつ時代に合わせた変化は受け入れても良いと思いますし、活動の範囲や内容についてはもっと皇室や天皇家に裁量を与え、宮内庁を通さずとも皇室の生の声が聞こえるような「開かれた皇室」を目指しても良いのではないかと思います」