UGC かインフルエンサーか? 「次世代の買い物客は本物のコンテンツを探し求めている」
シャイナ・レインフォード氏は、ローズマリーとビタミンをたっぷり含んだオイルを作り、自分と妹の抜け毛を改善させたことをきっかけに、ヘアケア用品の会社であるバスク&レイザー(Bask & Lather)を創業した。しかし、同氏はいまだに年に1回しかブランド用の撮影を行わず、その代わりに主にソーシャルメディアで顧客がシェアする画像や動画に頼っている。
キラキラの黄色いネイルをしているある顧客は、頭皮の毛髪が回復した様子を見せている。また10万回近く再生されている別の動画では、ノットレスブレイズ(細かく分けた毛束を三つ編みにして作り上げる髪型の1種)のあいだにオイルを塗る方法を紹介している。動画はヘアサロンで撮影されたものもあれば、バスルームやキッチンで撮影されたものもある。
「なんでも共有する。多くのブランドがクリエイティブに数百ドル、数千ドルも費やしているのを知っているが、我々はそんなにお金をかける必要がない。顧客が毎日、同ブランドの商品が登場する動画を作成してくれるからだ」とレインフォード氏は話す。
2月下旬にパームスプリングスで開催されたリテール業界イベント「eTail West(イーテールウエスト)」では、いくつものブランドが自社マーケティングとコンテンツ戦略について語った。そこで多くのブランドは、従来のような有償のインフルエンサーコンテンツに代わって、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やすことへの関心の高まりを報告した。この話題はプログラムの大きな焦点でもあり、いくつものパネルディスカッションにおいて、顧客にブランドストーリーを共有してもらう方法について検討していた。ビリオンダラービューティー(Billion Dollar Beauty)のようなブランドが、バスク&レイザーとともに、UGCがTikTokで何百万回も再生されることについて語る一方、ヘアカラー企業であるオーバートーン(Overtone)のCEOバーバラ・ロール・カーディエル氏は、ほかのソーシャルメディアでの取り組みをより強化させるためにUGCを使用していることについて話した。
このように、お金を払ってセレブリティやインフルエンサーを起用する代わりに、顧客のコンテンツに注目することは、業界全体に広がっている現象だ。バザールボイス(Bazaarvoice)の最近の調査によると、ブランドの約86%が、UGCはペイドメディアやオウンドメディアよりも業績向上に効果的だと考えている。
バスク&レイザーのレインフォード氏は、顧客が正直なレビューやフィードバックを投稿することを条件に、無償で商品を提供するアフィリエイトプログラムも運営していると語る。このプログラムはTikTokのクリエイターネットワークに参加することで、さらに効果的になる。しかし、UGCは人々がダイレクトメッセージで動画や画像を送るという、また別の方向に効果がある。
それでも、これはただコンテンツを再シェアすればいいという単純なものではない。TikTokやインスタグラムには投稿できるものとできないものについての規定があるとレインフォード氏は話す。たとえば、ブランドコンテンツとしてどのように商品を紹介しなければならないかといったことだ。同氏は、この戦略を見つけだし手順を示してくれたのは、15歳になる息子のジェイデンだったと語る。コンテンツ自体について、レインフォード氏は特定の美的センスを求めているわけではなく、むしろ顧客に自分たちのありのままの生活を見せてほしいと思っている。
幅広い顧客が商品を使用し、シェアしてくれることで、「我々は常に新しいオーディエンスにリーチしている」と同氏は言う。
動画コマース企業のFirework(ファイヤーワーク)で収益担当のシニアバイスプレジデントを務めるビリー・クラデック氏は、ブランドがUGCでもっとも強調したいことはオーセンティシティ(信憑性)だと語る。たとえば、誰かが商品を使用しているところを見せて正直な感想を伝えたり、あるいは手に入れた複数の衣服を試着したりしているところなどだ。「我々が関わっているミレニアル世代の消費者の多くは、あまりにも修正された、完成度の高い動画を信用していない。オーセンティシティというレンズを通して動画を見極めている」。
しかし、すべてのブランドにとってUGCが有効なわけではない。香水のサブスクリプションサービスを提供しているセントバード(Scentbird)の共同創業者兼CTOを務めるアンドレイ・リボーン氏は、同社マーケティングにUGCを一切使用していないと話した。その代わりに有償インフルエンサーとのあいだで、ブランドがコンテンツを二次利用できるように契約を結んでいる。これによって、より的確なブランドコントロールが可能になるという。
同氏はUGCについて、「すべてのブランド向けではない。特に、特定のイメージや特定のコミュニケーションスタイルを維持したいなら不向きだ」と話した。
eTail Westに参加したナイキ(Nike)の元グローバル小売部門担当バイスプレジデントのケビン・エーテラム氏は、有料かUGCかという問いに対して、次世代の買い物客はどんな形式かは関係なく、本物のコンテンツを探し求めていると語る。
「若い世代はごまかしに敏感である。物事を深く掘り下げ、それが本物かどうかを見極める方法を熟知している賢い集団だ」。
しかし、一見UGCのように見える、飾りのないコンテンツの氾濫にも落とし穴がある。eTail Westに登壇したランジェリーブランドのサードラブ(Third Love)の共同創業者デビッド・スペクター氏は、インフルエンサーとコンテンツクリエイターは同じものを指すようになってきており、それは必ずしも良いことではないと語った。スポンサー付きのコンテンツを投稿するインフルエンサーには法的な要件があるが、UGCはそのカテゴリーに該当しない。「有償インフルエンサーなのか、無償の商品提供なのか、あるいはUGCなのか、ユーザーはその違いを本当に区別できるだろうか。私はそうは思わないし、これら2つの世界は消費者にとって不利な形で融合している。コンテンツが広告かどうかは明確に区別されるべきだ」。
アーユルヴェーダの健康食品会社バニヤンボタニカルズ(Banyan Botanicals)でパフォーマンスマーケティングシニアマネージャーを務めるステイシー・ハドロッフ氏は、動画コンテンツがわずか数カ月のうちに同ブランドのソーシャルチャンネルで最大のトラフィック推進要因になったのを目の当たりにした。しかし同社はこれまで、ハウツーやおすすめ商品など自社独自のコンテンツ作成に注力してきた。
ハドロッフ氏が自分のチームをeTail Westに参加させて学ばせたかった主なトピックのひとつは、UGCを促進する方法だった。
「これはユニークな視点を持つ人々と協働するということであり、とにかくやってみて、彼らがどう考えるかを見てみようと思う」。
[原文:Brands are mulling the UGC versus influencers conundrum]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)
Image via Bask & Lather
キラキラの黄色いネイルをしているある顧客は、頭皮の毛髪が回復した様子を見せている。また10万回近く再生されている別の動画では、ノットレスブレイズ(細かく分けた毛束を三つ編みにして作り上げる髪型の1種)のあいだにオイルを塗る方法を紹介している。動画はヘアサロンで撮影されたものもあれば、バスルームやキッチンで撮影されたものもある。
8割以上のブランドがUGC活用に肯定的
2月下旬にパームスプリングスで開催されたリテール業界イベント「eTail West(イーテールウエスト)」では、いくつものブランドが自社マーケティングとコンテンツ戦略について語った。そこで多くのブランドは、従来のような有償のインフルエンサーコンテンツに代わって、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やすことへの関心の高まりを報告した。この話題はプログラムの大きな焦点でもあり、いくつものパネルディスカッションにおいて、顧客にブランドストーリーを共有してもらう方法について検討していた。ビリオンダラービューティー(Billion Dollar Beauty)のようなブランドが、バスク&レイザーとともに、UGCがTikTokで何百万回も再生されることについて語る一方、ヘアカラー企業であるオーバートーン(Overtone)のCEOバーバラ・ロール・カーディエル氏は、ほかのソーシャルメディアでの取り組みをより強化させるためにUGCを使用していることについて話した。
このように、お金を払ってセレブリティやインフルエンサーを起用する代わりに、顧客のコンテンツに注目することは、業界全体に広がっている現象だ。バザールボイス(Bazaarvoice)の最近の調査によると、ブランドの約86%が、UGCはペイドメディアやオウンドメディアよりも業績向上に効果的だと考えている。
バスク&レイザーのレインフォード氏は、顧客が正直なレビューやフィードバックを投稿することを条件に、無償で商品を提供するアフィリエイトプログラムも運営していると語る。このプログラムはTikTokのクリエイターネットワークに参加することで、さらに効果的になる。しかし、UGCは人々がダイレクトメッセージで動画や画像を送るという、また別の方向に効果がある。
それでも、これはただコンテンツを再シェアすればいいという単純なものではない。TikTokやインスタグラムには投稿できるものとできないものについての規定があるとレインフォード氏は話す。たとえば、ブランドコンテンツとしてどのように商品を紹介しなければならないかといったことだ。同氏は、この戦略を見つけだし手順を示してくれたのは、15歳になる息子のジェイデンだったと語る。コンテンツ自体について、レインフォード氏は特定の美的センスを求めているわけではなく、むしろ顧客に自分たちのありのままの生活を見せてほしいと思っている。
幅広い顧客が商品を使用し、シェアしてくれることで、「我々は常に新しいオーディエンスにリーチしている」と同氏は言う。
UGCに求められる「オーセンティシティ」
動画コマース企業のFirework(ファイヤーワーク)で収益担当のシニアバイスプレジデントを務めるビリー・クラデック氏は、ブランドがUGCでもっとも強調したいことはオーセンティシティ(信憑性)だと語る。たとえば、誰かが商品を使用しているところを見せて正直な感想を伝えたり、あるいは手に入れた複数の衣服を試着したりしているところなどだ。「我々が関わっているミレニアル世代の消費者の多くは、あまりにも修正された、完成度の高い動画を信用していない。オーセンティシティというレンズを通して動画を見極めている」。
しかし、すべてのブランドにとってUGCが有効なわけではない。香水のサブスクリプションサービスを提供しているセントバード(Scentbird)の共同創業者兼CTOを務めるアンドレイ・リボーン氏は、同社マーケティングにUGCを一切使用していないと話した。その代わりに有償インフルエンサーとのあいだで、ブランドがコンテンツを二次利用できるように契約を結んでいる。これによって、より的確なブランドコントロールが可能になるという。
同氏はUGCについて、「すべてのブランド向けではない。特に、特定のイメージや特定のコミュニケーションスタイルを維持したいなら不向きだ」と話した。
eTail Westに参加したナイキ(Nike)の元グローバル小売部門担当バイスプレジデントのケビン・エーテラム氏は、有料かUGCかという問いに対して、次世代の買い物客はどんな形式かは関係なく、本物のコンテンツを探し求めていると語る。
「若い世代はごまかしに敏感である。物事を深く掘り下げ、それが本物かどうかを見極める方法を熟知している賢い集団だ」。
インフルエンサーとコンテンツクリエイターは同義語になりつつある
しかし、一見UGCのように見える、飾りのないコンテンツの氾濫にも落とし穴がある。eTail Westに登壇したランジェリーブランドのサードラブ(Third Love)の共同創業者デビッド・スペクター氏は、インフルエンサーとコンテンツクリエイターは同じものを指すようになってきており、それは必ずしも良いことではないと語った。スポンサー付きのコンテンツを投稿するインフルエンサーには法的な要件があるが、UGCはそのカテゴリーに該当しない。「有償インフルエンサーなのか、無償の商品提供なのか、あるいはUGCなのか、ユーザーはその違いを本当に区別できるだろうか。私はそうは思わないし、これら2つの世界は消費者にとって不利な形で融合している。コンテンツが広告かどうかは明確に区別されるべきだ」。
アーユルヴェーダの健康食品会社バニヤンボタニカルズ(Banyan Botanicals)でパフォーマンスマーケティングシニアマネージャーを務めるステイシー・ハドロッフ氏は、動画コンテンツがわずか数カ月のうちに同ブランドのソーシャルチャンネルで最大のトラフィック推進要因になったのを目の当たりにした。しかし同社はこれまで、ハウツーやおすすめ商品など自社独自のコンテンツ作成に注力してきた。
ハドロッフ氏が自分のチームをeTail Westに参加させて学ばせたかった主なトピックのひとつは、UGCを促進する方法だった。
「これはユニークな視点を持つ人々と協働するということであり、とにかくやってみて、彼らがどう考えるかを見てみようと思う」。
[原文:Brands are mulling the UGC versus influencers conundrum]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)
Image via Bask & Lather