「社員のキャリア形成に熱心な会社」トップ300社

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東京海上グループの保険持株会社である東京海上ホールディングスが1位となった(写真:時事)

サステナビリティ経営において、人的資本への投資、ダイバーシティの実現などは重要な経営課題だ。人材をどのように活かし、成長させていくべきか。その方向性を示しながら、人材の成長を通じて企業価値向上につながる好循環をつくることが重要だ。


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今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』『同(ESG編)』2024年版掲載のデータを基に、「従業員のキャリア形成に熱心な会社」ランキング(プラチナキャリアランキング)を作成した。

本ランキングは「長期的視点」「自律的学び」「社会への貢献」の3つの視点から評価を行っている。今回はランキング上位300社と第5回「プラチナキャリア・アワード」(2023年実施)受賞・応募企業より、プラチナキャリアの実践事例を紹介する。

1位は東京海上ホールディングス

1位は東京海上ホールディングス(総合ポイント95.5点、以下同)で、前回の2位から浮上。同社はダイバーシティ推進を重要な経営戦略と位置づけ、「社員一人ひとりの発意に基づく挑戦と働きがいの向上」や「多様な社員がその意欲と能力を最大限発揮しイノベーションを創出すること」が、会社と従業員の双方の成長につながると考える。

グループ経営を担うリーダーを安定的・継続的に輩出する仕組みとして、国内外グループ各社の人材データの一部を東京海上ホールディングス人事部に集約。それを基に、人材の職責等に応じた評価体系や研修プログラムを導入している。また、2023年4月に「Tokio Marine Group Leadership Institute(TLI)」を設立し、グループ全体から選抜された人材に対し、経営・財務スキルなどの獲得機会も提供する。

さらに、上司・メンバー間で組織目標、個人の能力やスキル、キャリアビジョン、期待される役割等を踏まえた目標設定やその達成度を確認する「役割チャレンジ制度」を設け、年複数回の面談をとおした従業員の成長支援も行う。


2位はNTT西日本(95.2点)。前回の12位から大幅に順位を上げた。ダイバーシティ推進の中長期ビジョンでは、「『ちがい』を価値として、一人ひとりが『自分らしく』チャレンジする会社づくり」を基本方針とする。

従業員が本業を継続しながら、希望する社内の別業務を実施できる「社内ダブルワーク制度」を設ける。社内の新しいフィールドで経験を積むことで、自己成長を促進するのが目的だ。また、定年後の就業機会として、会社が必要と認める業務分野において、継続雇用上限である65歳以降も最長70歳まで雇用を継続できる仕組みを導入する。

3位は第一生命ホールディングス(94.9点)で、前回9位から上昇。キャリアを自律的に考え、自ら切り拓くための制度として社内公募制度「Myキャリア制度」を導入する。

同制度では、グループ内外を問わず多数職務で公募を行い、遠隔地の場合はフルリモートや社宅貸与にて本社職務への従事を可能とする。担当業務の都合などによりすぐに異動できない場合でも、翌年度末までに限り次回の異動先について優先権を与えるなど、FA制度の側面も併せ持つ。

4位はT&Dホールディングス(94.8点)。キャリアアップ支援制度として、通信教育、オンライン学習ツールの提供等による従業員の自己啓発奨励、公募制研修やビジネススクールへの派遣、社外留学などを実施する。

また、グループ各社の持つ優れたノウハウやスキルの共有化を目的に、グループ会社間での人材交流も実施する。

前回首位のSCSKの取り組み

5位は前回首位のSCSK(94.7点)。従業員一人ひとりの主体的な自己研鑽と学びの共有を促進し、学び続ける文化の醸成を目指す自己研鑽支援施策(コツ活)を導入する。具体的には、全従業員に月5000円の「学び手当」を支給。自己研鑽の活動内容・時間を申請し、その活動事例を社内に共有するほか、申請者には図書カードや関連する外部有料コンテンツの提供などのインセンティブを支給する。

そのほか、6位アイシン(94.2点)、7位日本生命保険(94.1点)、8位は三菱UFJフィナンシャル・グループと日本電信電話(93.7点)、10位に住友生命保険(93.6点)がランクインした。

最後に、前回のプラチナキャリアランキング2023年版の評価を基に審査された第5回「プラチナキャリア・アワード(企画:三菱総合研究所未来共創イニシアティブ、三菱UFJ信託銀行)」(最優秀賞:NECネッツエスアイ 優秀賞:NTTドコモ、オカムラ、ソフトバンク、SOMPOホールディングス、日清食品ホールディングス、丸井グループ)の受賞・応募企業からプラチナキャリアの実践事例を紹介する(本ランキングの評価を基に審査される第6回「プラチナキャリア・アワード」の詳細はこちら)。

最優秀賞のNECネッツエスアイの取り組み

最優秀賞のNECネッツエスアイは、中期経営計画「Shift up 2024」において高度人材の育成を経営目標に掲げ、各種教育の推進や社内制度の拡充に取り組む。人事評価項目の強化ポイントを意識した「パーソナライズ化」を可能とする学習システムを導入するほか、リスキリングの成果を発揮する場として「新規事業ピッチコンテスト【出る杭】」を毎年実施。従業員の能力開発を支援している。

優秀賞のオカムラは、DX戦略の1つとしてDX人材の育成に取り組む。DXに関心の高い従業員を募り、デジタル技術やデザイン思考などを学んだうえで新規事業や業務改善の提案までを行う約半年間の研修プログラム「DXラーニングプラットフォーム(DXLP)」を実施する。研修修了時に全員が提案発表を行い、優秀な提案は実装に向けてプロジェクト化する仕組みだ。

優秀賞の日清食品ホールディングスは、新たな食の文化を創造し続けるイノベーティブな組織の実現を目指し、中長期成長戦略のなかで人材や組織基盤の変革に取り組む。年齢・職能等級を問わず、希望する職に応募できる公募制度を設け、多くの従業員がキャリアプラン実現のために応募している。

プラチナキャリアに関連する好事例を紹介してきたが、いずれの企業も具体的な施策は整備しており、成果をいかに出すかというフェーズにきているようだ。人材に焦点を当てた施策の推進が、企業価値向上に結び付いていくのか。さらなる成果の実現に期待したい。







(伊東 優 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)