2024年1月17日、第170回芥川賞に九段理江さんの「東京都同情塔」が選ばれました。受賞の記者会見で、九段さんは「東京都同情塔」について「文書生成AIを駆使して書いた小説」であることを明かし話題となりましたが、このことは海外でも大きな話題を呼んでいます。

エンタメ系メディアのThe Daily Beastは、「文学賞を受賞した小説家が、ChatGPTを使用していたことを明らかにした」と報道。芥川賞の選考委員のひとりである吉田修一氏が「作品は完璧で、欠点を見つけるのは難しい」「非常に面白くて興味深い作品であり、どう考察するか議論を呼ぶ作品だ」とThe Timesに語ったことを紹介しています。また、記事の最後を「手抜き学生の諸君、心配は不要です。もしもあなたがAIを使用したことで学問的な非難にさらされているのなら、代わりに名誉ある芸術賞を獲得するためにAIを使用しましょう」と冗談を交えて締めくくっています。

Novelist Rie Kudan Scoops Literary Prize-Then Reveals She Used ChatGPT

https://www.thedailybeast.com/novelist-rie-kudan-scoops-literary-prizethen-reveals-she-used-chatgpt



テクノロジーメディアのMotherboardは、「日本の最高文学賞の受賞者がChatGPTの使用を認める」と報道。さらに、「ソーシャルメディア上での反応は迅速かつ厳しいもので、多くのユーザーがAIに最高賞を争うことを許せば、文学の未来はどうなってしまうのかと懸念を示しています。創造的な分野での生成AIの使用は依然として非常に物議を醸しており、その理由のひとつは生成AIが他の小説家の作品に基づいてトレーニングされているためです」と報じました。

Winner of Japan’s Top Literary Prize Admits She Used ChatGPT

https://www.vice.com/en/article/k7z58y/rie-kudan-akutagawa-prize-used-chatgpt

The Telegraphは「小説家は受賞作の一部を書くためにChatGPTを使用したことを認める」と報道。さらに、九段さんが受賞記者会見で説明した「小説の約5%が生成AIが出力した文章のままであること」を強調しています。

Author admits she used ChatGPT to write parts of prize-winning novel

https://www.telegraph.co.uk/world-news/2024/01/18/author-used-chatgpt-ai-to-write-prize-winning-novel-japan/



New York Postは「AIの力を借りて書かれた小説に栄誉ある文学賞が贈られる」と題し、「33歳の著者はAIが彼女の執筆プロセスに大きな影響を与えたことを恥ずかしがっていないようでした」と報道。

Rie Kudan used AI to help write 'The Tokyo Tower of Sympathy'

https://nypost.com/2024/01/18/news/rie-kudan-used-ai-to-help-write-the-tokyo-tower-of-sympathy/



ビジネス新聞のThe Economic Timesは、「日本の文学賞受賞者はChatGPTの使用を恥じていない」と、明らかに否定的なスタンスで今回の事例を報じています。記事中では九段さんがChatGPTを使用して小説を書いたことに対するソーシャルメディア上での反応として、「彼女はAIを巧みに使って小説を書いただけで、それに才能があるのかないのかは私にはわからない」や、「これが芥川賞受賞者のChatGPTの使い方です。怠けるためではなく創造性を解き放つために使用しています」といったものを紹介しています。この他、The Economic Timesはイギリス人作家のサルマン・ラシュディ氏が執筆活動にAIを活用するよう依頼されたものの、「(AIが出力したのは)純粋なゴミだった」と語った事例などを紹介しました。

openai: Japan literary laureate unashamed about using ChatGPT - The Economic Times

https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/japan-literary-laureate-unashamed-about-using-chatgpt/articleshow/106950262.cms



AI関連メディアのTHE DECODERは、「日本で最も権威ある文学賞の受賞者である九段理江さんが、自身の小説の5%をChatGPTを使って書いたことを認めた」と報道。「AI開発企業を訴える一部の小説家とは異なる、生成AIに対する新しい視点を示しています。有名なホラー小説家のスティーヴン・キングも、AIは人間のスキルを補完するものであるという九段さんと同じ見解を示しています。AIが真に創造的なものを生み出すことはありません。真に創造的なものを生み出すには、依然として人間が必要だとキングは主張しています。キングは自分の仕事においてAIに脅威を感じていません」と述べ、九段さんと同じようにAIの利用を恐れていないスティーヴン・キング氏の事例を紹介しています。

Award-winning author wrote "about 5 percent" of her book using ChatGPT

https://the-decoder.com/award-winning-author-wrote-about-5-percent-of-her-book-using-chatgpt/



なお、「東京都同情塔」は新潮社の公式ページから試し読みが可能で、Amazonでは税込1870円で販売されています。

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