Nothing′s Carved In Stone × MAN WITH A MISSION ロックファン垂涎のツーマンに見た結成15周年の現在地
15th Anniversary Tour ~Hand In Hand~ 2023.11.19(sun) Zepp DiverCity(TOKYO)
ツアー初日の鋭児とのツーマンで見せた、音や演奏姿の至る所からライブすること自体を心底楽しむ様子が溢れ出た衝動的でエネルギッシュな姿は、てっきり若手に触発されてのものかとも思ったのだが、そうではなかったらしい。MAN WITH A MISSIONを迎えたツアーファイナル、Nothing's Carved In Stoneはまたしても思いっきりギラギラしていたのだ。
MAN WITH A MISSION
MAN WITH A MISSION
オープニングSEに盛大なクラップが巻き起こる中、ゆっくりと迫り上がっていくバックドロップには狼のロゴ。まずはMAN WITH A MISSIONのライブが始まった。長年キラーチューンに君臨し続ける「Emotions」のイントロが嵐の前の静けさとして流れ、多声コーラスのサビが始まったのをきっかけにマッシヴな音塊が叩きつけられると、その音圧と飛び跳ねるオーディエンスによって会場が揺れる。その様子を目の当たりにしながらなおも「オイ、ソンナモンカ!?」と煽りを入れるジャン・ケン・ジョニー(Gt/Vo/Rap)。続く「Dive」もパンクやエモの色が濃く、いきなりライブは沸点を突破する。自らを“前座”と謙遜し、「光栄ノ極ミデゴザイマス」なんて殊勝なことを言っておきながら、気を抜いたら即座に取って食われかねない獰猛なライブバンドぶりが堪らない。
MAN WITH A MISSION
MAN WITH A MISSION
スケールの大きなサウンドとスペア・リブ(Dr)の叩き出すアグレッシヴなビートのバランスが絶妙な「yoake」を経て、「Raise your flag」では冒頭からフロア全体を巻き込む大合唱に。音の重心は低いのに質感はあくまで軽やかで、カミカゼ・ボーイの疾走するベースラインに乗って、トーキョー・タナカ(Vo)がお立ち台でステップを踏み歌い、隙あれば最前列まで駆け出してきて煽るのはDJサンタモニカ、誰を目で追っても楽しめるエンターテインメント性の高さが素晴らしい。miletとのコラボ曲「絆ノ奇跡」を経て、ラストは「FLY AGAIN -Hero's Anthem-」。スクエアビートのダンサブルなサウンドに乗って会場中が踊り、両手を頭上で掲げるお馴染みのポーズで盛り上がる様子は実に壮観であった。
Nothing's Carved In Stone 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
SEの流れる中迫り上がってくるバックドロップには、今度はNothing's Carved In Stoneの文字。盛大な拍手がメンバーを出迎える。満員のフロアを悠然と見渡し、すっと指差す村松拓(Vo/Gt)。気合を漲らせながらもあくまでソリッドな音を重ね合い、熱量を放出しながらも内側でさらなる熱を増幅させていくような「Isolation」から、生形真一(Gt)のシャープなカッティングと絶え間なく蠢き続ける日向秀和のベースが生み出す跳ねたノリが高揚を誘う「Like a Shooting Star」。「You're in Motion」では村松がスタンドごとマイクを客席に向け、オーディエンスがそれに熱い歌声で応える。「前座が最強すぎて」とマンウィズに敬意を表し、7年前に逆の立場でゲストとして呼ばれたときの自分達は前座にも満たなかったんじゃないか、なんてこちらも謙遜してみせるものの、どこを切り取っても見せ場しかないスキルフルな演奏をぶつけ合い重ねていくナッシングスの流儀と、4人から出ているとは思えないほどの音の濁流っぷり、それでいて難解すぎたりはしないサウンドのマジックを序盤から惜しみなく展開する。
村松拓 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
生形真一 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
筆者は少なくともここ数年お目にかかっていない、レアな選曲にどよめきが起きたのは「Lighthouse」だ。変拍子でダウナーなオルタナティヴロック然とした音像にノイジーなギターが楔を打ち、激しくON/OFFを繰り返す同曲は、決してわかりやすくノレる曲ではない代わりに、作り込まれた構成とそれを眼前で再現していく4人の挙動を固唾を呑みながら見守り、見惚れることができる。こういう瞬間もナッシングスのライブには欠かせない。続いて、赤く染まったステージに投下された「Rendaman」は打って変わって、半自動的に身体を突き動かすタイプのライブチューン。大喜多崇規(Dr)が精密なスティック捌きから繰り出すビートが疾走感に拍車をかけ、村松は「待ってたんだこの夜を、もっと聴かせてくれよ!」と檄を飛ばす。「ツバメクリムゾン」はどちらかと言えば歌モノと言っても良いメロディアスな楽曲のはずが、一音一音の力強さと厚みにより、とんでもなくタフでドラマティックに仕上がっていることに吃驚。速い曲や激しく複雑な曲でなくともここまでライブ映えさせることができるのは、15年続けてきたバンドだからこそ至った境地だ。
「みんなに会うのが楽しみで嬉しくて、待ちきれなくて。興奮して何を言ってるかわからなくなるくらい、みんなを愛してるんだ。全力で鳴らします。応えてくれるのはあなたしかいないと思ってる」
日向秀和 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
大喜多崇規 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
ここ1年半ほどは活動が限定的だった上、その前にはコロナ禍もあって、こうして制限なくステージの上と下とで思いを交わし合えるライブに飢えていたのだろう。興奮気味にまくしたてられた村松のストレートな愛に大きな歓声が飛ぶ。ライブは後半戦へと向かい、切れ味鋭いサウンドがサビでキャッチーに開けていく「Music」、イントロの段階でフロアが揺れた「Spirit Inspiration」、イントロどころか生形による冒頭のピックスクラッチで爆発的盛り上がりが生まれた「Out of Control」を続け様にドロップする。無比のキラーダンスチューンを一糸乱れぬ演奏で届けながら、曲中では日向と大喜多がグータッチやハイタッチを交わし、笑い合っている。村松は客席に突っ込んでいきそうなくらい前のめりに歌っている。きっとみんな楽しくて仕方ないのだ、こういうライブが。
「ツアーして良かったわ、マジで。全箇所で強敵を揃えて、それを経てナッシングスは成長したと思います」
Nothing's Carved In Stone 撮影=RYOTARO KAWASHIMA
4日遅れの「November 15th」を盛大にシンガロングして本編を終え、アンコールで再登場した村松が誇らしげに語った言葉通りのライブだった。ナッシングスはメンバーそれぞれがキャリアを積んだ状態で集まったから、始動時点から完成度の高かったバンドである。そこから15年、しかしまだまだ先へ行ける。このツアーで彼らが見せた、ライブに対するピュアな衝動と熱に、持ち前の高いスキルとストイックなアンサンブルが融合した姿は、ナッシングスが止まらない進化の過程にあることを教えてくれた。間もなく迎える2度目の武道館ワンマンへ、未だ見ぬ高みへ。Nothing's Carved In Stoneは転がり続けていく。
取材・文=風間大洋