ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回はメルセデスの最上級オープンモデルであるSLに乗って、お金持ちの心情について考えてみた!

※こちらは「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

メルセデスAMG/SL

SPEC【SL43】●全長×全幅×全高:4700×1915×1370mm●車両重量:1780kg●パワーユニット:1991cc直列4気筒+ターボ●最高出力:381PS(280kW)/6750rpm●最大トルク:480Nm/3250〜5000rpm●WLTCモード燃費:10.8km/l

1700万〜2980万円

 

量産車史上初の電動ターボは未完成!?

安ド「殿! 今回はメルセデスSLです!」

永福「うむ。正確にはメルセデスAMGのSLだ」

安ド「今回からもれなくAMGが付いたんですか?」

永福「そうだ。もれなくAMGだ」

安ド「でも、あえて2.0l 4気筒ターボのSL43に試乗したんですね」

永福「うむ。量産車史上初の電動ターボを体感したくてな。電気モーターでタービンを回し、2.0l ながら381馬力という大パワーを発揮する」

安ド「僕は、なんだかレスポンスが良くないように感じましたが……」

永福「私もだ」

安ド「エッ、殿もですか!」

永福「アクセルを踏み込むと、ほんの一瞬出足が遅れる感覚がある。それを除けば十分以上にパワフルだが、まだ電動ターボ技術は未完成のようだ」

安ド「AMGが未完成の技術を市販するんですか!」

永福「AMGだろうとBMWだろうと、未完成なものは未完成だ」

安ド「さすが殿! ただ僕世代にとっては、SLといえば電動ハードトップでしたので、このソフトトップは新鮮でした」

永福「うむ。約20年ぶりの原点回帰だ。メタルトップのバリオルーフはもはや貧乏くさい、ということだろう」

安ド「エエッ! 貧乏くさい!?」

永福「メタルトップなら雨や盗難に強く普段使いしやすいが、お金持ちはそもそもクルマを何台も持っているのだから、スポーツカーに実用性は必要ない。それが世の流れだ」

安ド「なるほど!!」

永福「そのわりに、燃費に配慮して4気筒エンジンを用意したのは矛盾だが、環境も無視できないということだな」

安ド「板挟みですね!」

永福「そもそもSLというクルマは、ラグジュアリーなスポーツカーの代名詞だった。走り命、快適性は二の次のフェラーリやポルシェの対極として、大きな存在感を放っていた」

安ド「確かに!」

永福「しかし現在は、フェラーリもポルシェも超ラグジュアリーで快適になってしまったので、SLの立場がなくなった」

安ド「言われてみれば!」

永福「それで、どうしたらいいかわからなくなってしまったのだ」

安ド「なんと!」

永福「このSL43は1700万円だが、V8ターボで585馬力のSL63は最高約3000万円だ」

安ド「エエ〜〜〜〜ッ!」

永福「ものすごい開きがある。お金持ちも、どっちを買えば良いのか迷うだろう」

安ド「迷いますかね?」

永福「結局、スポーツカーはフェラーリかポルシェ、メルセデスAMGの速いヤツなら、GT4ドアクーペを選ぶのではないか」

安ド「お金持ちのことはサッパリわかりません!」

 

【GOD PARTS 神】ディスプレイ

細かな調整までほとんどココで完結

中央のディスプレイはとにかくデカく、設定や操作をほぼこの画面上で行うため、インパネの物理的なスイッチは少なくなっています。屋根の開閉、車内照明、シートの包まれ具合までここで操作します。なお、オープンカーらしく角度も微調整できるようになっています。

 

【GOD PARTS 1】パナメリカーナグリル

レジェンドモデルから受け継いだ縦格子形状

この縦方向にルーバーの入ったグリルは、「パナメリカーナグリル」と呼ばれています。かつてレースで活躍した名車「300SL」のグリルデザインがモチーフだそうですが、現在はハイパフォーマンス車であるAMGの象徴となっています。

 

【GOD PARTS 2】AMG

 

AMGモデルのみの潔さ

かつてジジイたちが「アーマーゲー」と呼んだメルセデスのサブブランドで、ハイパフォーマンスモデルを開発しています。ベンツ各車にAMGグレードは設定されていますが、新型SLはAMGのみの潔いスポーツカーです。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

クラシックでスポーティ

ツインスポークタイプのステアリングが採用されています。どこかクラシックなイメージもあるこのデザインですが、オリジナリティがあって素敵です。奥のメーターも中央部にひさしがない珍しい形状をしています。

 

【GOD PARTS 4】リアスポイラー

 

スピードが上がるとせり上がってくる

ラグジュアリーなスポーツモデルらしく、リアウイングは格納式です。ステアリング内のスイッチで自由に出すこともできますが、走行中は80km/hになると自動でせり上がってくるそうです。運転中に自分で見るのは難しいと思いますが、一度見てみたいです。

 

【GOD PARTS 5】ソフトトップ

 

流麗に畳まれるクラシックな幌

電動式であることは先代から引き継ぎましたが、その素材は幌製へと原点回帰しました。2+2シートなのでちょっと前後に長いのですが、幌がシート後方スペースに畳まれていく開閉動作は、メルセデスらしい精密な動きで、実に美しいです。

 

【GOD PARTS 6】アンビエントライト

雰囲気のある車内を演出

すっかりメルセデスの定番装備となった車内の間接照明です。最も小さなモデルであるAクラスにも当然のように搭載され、車内を好きなカラーで彩ることができます。単色や複数色、さらに時間で色を変化させることもできます。

 

【GOD PARTS 7】トランク

 

屋根を開けても問題なし

ソフトトップはトランク内上部に収納されますが、パーテーションで区切られているため、トランク内に荷物が入っていても干渉しません。容量はあまり大きいとは言えませんが、後席にも荷物を置けば問題ないでしょう。

 

【GOD PARTS 8】エンジン

どちらを選ぶかは貴方の財布次第

このSLは2グレード構成で、「SL63」は4.0lV8ツインターボエンジン、今回試乗させてもらった「SL43」は2.0l電動ターボエンジンが搭載されています。気筒数が2倍も違うわけですが、価格も約1.7倍になります。お財布と相談ですね。

 

【GOD PARTS 9】2+2シート

広すぎる空間の空気を循環!

リアシートの天井にはサーキュレーターが付いていて、後席まわりの広い空間にエアコンの冷気や暖気を循環させてくれます。空気清浄のプラズマクラスター付きで、「プレミアム」系のグレードに標準装備されています。

 

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