金融商品をいちいち覚える必要はない…1億貯めたFPが「投資を始めるならこれ一択」と断言する方法
※本稿は、品田一世『“カナダ式”で幸福度も資産も増え続ける! いつのまにか億り人になれる超マネーハック』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■投資信託は大きく分けて2種類ある
投資信託は商品さえ選んでしまえば、投資先の吟味などはプロにお任せできます。
商品は無数にあります。具体的におすすめの商品は後程お話ししますが、その前に大きな枠組みをさらに理解しましょう。
投資信託はみなさんの代わりにプロが市場で株や債券を買います。この際にどのように買うかはプロにお任せになりますが、買い方の大きな方針は選べます。大きく2つの種類があります。
ひとつはインデックスファンドです。
これは日経平均株価などの市場の指標に価格が連動するように運用する商品です。仕組みもわかりやすいですし、値動きの理由も理解しやすいです。
例えば日経平均に連動する商品でしたら、日経平均価格が上がれば価格が上がり、下がれば下がるように市場で株式を機械的に取引します。
株式指数には、他にも国内ではTOPIX(東京証券取引所のプライム市場に上場する全銘柄を対象とした指数)があります。海外ではNYダウ平均(ニューヨーク証券取引所やナスダック上場の30社の株価から計算した指数)やS&P500が有名です。
株式だけでなく債券などさまざまな市場に指標があり、それに連動したインデックスファンドが存在します。いずれも市場平均とほぼ同じ運用成績になります。
■あまり儲からないインデックスを勧める理由
もうひとつの運用方針がアクティブファンドです。プロが独自の視点で銘柄を選び、市場の指標を上回る運用を目指します。当然、運用するプロの腕次第で運用成績も左右されます。内容も千差万別であり、例えばベンチャー企業に特化した商品もあれば、業種に特化した商品もあります。
「どっちがいいんですか」といわれると、私のおすすめはインデックスファンドを買うことです。
「インデックスファンドってよく聞くけど、市場の平均点ではあまり儲からなさそう」という声もあるでしょう。
確かに市場全体が下がればインデックスファンドは必ず下がりますし、市場全体が上がっても市場の平均よりも大きく伸びることはありません。インデックスファンドはいわば市場全体を買うようなものです。
株式会社は成長を目指します。ですから、長期的にみれば浮き沈みはあっても、市場全体は成長します。資本主義が終わらない限り、世界的な大暴落があっても右肩上がりになるともいえます。個別企業の成長は見通せませんが、市場全体は成長するという発想です。
ですから、インデックスファンドは平均以上に儲かりませんが、平均以上に損もしません。
ただ、市場全体と連動すれば当然、あまり業績が良くない企業の株価も反映されます。
これを効率が悪いと考える人もいるでしょう。
■ハイリスク・ハイリターンより堅実にいったほうがいい
一方、アクティブファンドの場合は、市場が下がっていても、銘柄の選定次第では流れに抗(あらが)えますし、市場が上昇局面ならば市場平均より大儲けできる可能性もあります。
もちろん、必ず市場平均を超えられるわけではありません。元本を割り込むリスクもあります。
つまり、市場全体を買うか、それともプロの目利きを買うかの問題になります。最近は「インデックスファンドの方がアクティブファンドよりもいい」という論調もやっと広まってきたようです。
日本の闇のような皮肉な話ですが、一生懸命手数料の高いアクティブファンドを売っている金融機関の知識層たちの間ではずっと、本当はインデックスファンドの方がいいと言われてきました。私のおすすめは断然インデックスファンドです。
ここまで読んで、「よし、インデックスファンドで積み立て投資をしよう」と決心した人におすすめしたいのが、つみたてNISAです。みなさんの周りにも始めている人は多いと思いますが、この制度のメリットを理解していないと、「お金ないから、積み立てやめよう」となりかねません。
つみたてNISAは投資で得た利益(値上がり益や配当金)にかかる税金がゼロになります。通常の投資は利益に約20%が課税されますので、いかにメリットが大きいかがわかるでしょう。
■「月3万円」でも1500万円になる
例えば毎月3万円を年間の利回り(利率)を7%で20年間、積み立てたとします。
7%と聞くと日本の銀行の超低金利に慣れている人からすると「高い!」と感じるかもしれませんが、非現実的な数字ではありません。
私は特にS&P500に連動した投資信託をおすすめしていますが、1988〜2022年でS&P500に20年積み立てた場合の平均利回りは9.752%、30年では9.909%です。今後はここまで見込めないとの指摘もありますが、7%は決して的外れな数字ではありません。
そうすると、月3万円の20年積み立てで約1500万円になります。元本は700万円ほどで、利益が約800万円です。元本に利子がつき、さらに利子がつき……と雪だるま式に膨らみます。通常ならば800万円の利益には約20%にあたる160万円程度を税金で納めなければいけません。この必要がなくなります。
みなさんに朗報なのは、2024年1月から現行のNISA制度は新NISAとなり、さらに威力を増します。ですから、非課税で運用できることのメリットを知っている人にはかなりお得な制度になります。新NISAでは2つの非課税枠ができ、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円と、“年間投資枠”の最大値は360万円まで拡大、1人当たりのトータルの非課税保有限度額は1800万円になります。
■投資信託の商品は覚えなくていい
120万円のつみたて投資枠に関しては、現行のつみたてNISAと同様、一定の投資信託に積み立て投資のみをすることができます。一方、年間に240万円の成長投資枠では、上場株式や幅広い投資信託へ、積み立て買い付けだけでなく、通常の買い付けもすることができます。
今この説明を聞いて、「なんだか難しそうだな」と思った方もいるかと思います。しかし、この辺については、そこまで詳しく覚えておく必要はありません。理由を説明します。
2023年7月、成長投資枠の中で投資できる投資信託の商品リストが、1000近く発表されました。
私はそのリストに目を通しましたが、はっきり言って、ほとんど金融機関が私たちに販売したい商品でした。つまり、手数料が高く、金融機関にとって利益になっても、中長期的に我々にとって利益になる可能性が低いと考えられる商品だったのです。
だから、1人ずつ、トータルで1800万円の非課税枠をもらえたのだ、と覚えておくだけでも良いと、私はクライアントにアドバイスしています。
■NISAで「億り人」も夢じゃない
絶対に覚えておくべきなのは、つみたて投資枠だけで、非課税保有限度額(1800万円)を使いきることも、実は可能だからです。この新しい非課税枠で私たちが買うべき商品は、本稿で伝えてきたように、広く分散され、低コストで、これからも成長の見込まれる投資信託だけです。
新NISAは非常に優れた制度ですが、成長投資枠の罠にははまらずに、メリットだけをしっかり享受していくようにしましょう。
また、これまでは非課税期間も積み立て型は20年と限られていましたが、撤廃されます。生涯に積み立てられる枠は1800万円と決まっていますが、普通に考えれば十分な枠です。
例えば、毎月6万円ずつ25年積み立てると1800万円になります。利回りを7%で想定すると、元本と運用収益を合わせて約4700万円になります。つまり、3000万円近い利子がついて税金もかかりません。老後のお金を気にしないで大丈夫な額が自然と貯まります。
もっと極端な例では、若くして相続などで1800万円を手にしたとします。これを毎月30万円、年360万円を5年にわけて積み立てたとします。そうすると、30年も経たずに1億円を超えます。いつのまにか「億り人」になっているわけです。
■NISAの専用口座はひとつだけ
身もふたもない話ですが、新NISAでのインデックス投資は資産がある人には長期での勝ちが確定するような仕組みです。ただ、資産がなくても仕組みを理解していれば、コツコツと積み立てることでお金をいつのまにか増やせます。
個人的には、これからも日本に住み続ける日本人はつみたてNISAをやっておけば間違いないというのが私の投資の結論です。
何をどこで買えばいいかがわかった人にとって、意外なハードルが口座の開設です。「そもそも、どうやって始めればいいのですか……」「面倒くさそう」と挫折(ざせつ)してしまう人も珍しくありません。
NISAを利用するには証券会社か銀行、信用金庫などの金融機関に専用の口座を開設する必要があります。1人当たり、口座は1件しか持つことができません(投資信託の取引は複数の金融機関で可能ですが、税金の優遇があるNISAの口座はひとつです)。
これから開設する人は、楽天証券かSBI証券を選びましょう。ウェブサイトから必要な書類をネット経由で送って申し込めば、1〜2週間で手続きは完了します。投資と聞くとハードルは高そうですが、クレジットカードくらいの感覚でつくれます。
■クレジットカードでの自動積み立てがお得
また、税金の処理については、投資で利益が出ても、何もしなくても平気な仕組みが利用できます。口座を開設する際に「一般口座、特定口座どちらにしますか」という項目が必ずあります。
ここで「特定口座、源泉徴収あり」を選んでください。金融機関が1年間の取引の結果を代わりに計算してくれます。みなさんは、長期保有の上、将来的にNISAの枠外でも投資をするときは「特定口座、源泉徴収あり」を選びましょう。
売買の損益を計算してくれて、その額に応じて税金も納税してくれます。細かい手続きもせずに、所得税と住民税を自動的に差し引いてくれます。会社員の方が毎月の給与から税金が天引きされるのと同じです。
「証券会社がつぶれたらお金は戻ってくるのか」と心配している人もいるかもしれません。証券会社には投資家から預かった資産と自社で保有する資産を分けて管理することが義務づけられています。ですから、万が一、証券会社が倒産しても、仕組みとしては全額戻ってきます。
つみたてNISAをどうすれば続けられるか。これは簡単です。自動的に続ける仕組みをつくってしまいましょう。
■高額な年会費の元がほぼ取れるケースも
口座を開いても毎月入金するとなると、少し面倒くさいですよね。具体的に続けるためのおすすめの戦略としては、クレジットカードでの自動積み立てです。
カードで買い物をする時と同じように、決済日に後払いするシステムです。毎月の積み立て額を設定すれば、証券会社によって定められた日に投資信託の買い付けが自動で行われます。私がおすすめの証券会社としてあげた楽天証券とSBI証券も、クレカ積み立てが可能です。
クレジットカードで買い物をするとポイントが付加されるのはみなさんもご存じですよね。投資資金をクレカで積み立てることでもポイントがつきます。
自分の口座にお金を積み立て投資しているだけなのに、買い物をしたようにポイントが貯まります。投資信託を積み立てれば積み立てるほどリターンされるといえます。1.0%還元であれば、月5万円の投資に対して500円、年間6000円相当のポイントが得られます。つまり、長期的に投資できる仕組みもつくることができて、ほぼリスクなしでポイントももらえて、ダブルでお得です。
■口座を開くなら今年中が絶対いい
特に該当するクレジットカードを持っていない場合は、積み立てた時にポイントが貯まるクレジットカードを今年中に申し込みましょう。
いずれにせよ、クレカ積み立ては積み立て投資する人にとっては強力な武器であり、マストアイテムです。利用しない手はありません。
現行NISAの口座を持っていれば、新NISAの口座は自動で開かれます。例えば楽天証券で口座を持っていたら、そのまま楽天証券に、SBI証券に口座があればSBI証券に開かれるので何もする必要はありません。
つみたてNISAと新NISAは別のものですが、今年中に口座を開いておけば、利益に対して税金がかからない枠が増えます。
これまでつみたてNISAで投資してきた商品は新NISAの口座に移すことはできませんが、現行NISAで投資した分は、引き続き運用し続けられます(現行のNISA口座で買い付けた金融商品は新NISAの口座に移管することはできませんが、買い付けた金融商品は非課税期間が終わるまで非課税のメリットを受けられます)。
来年からと考えずに、今すぐにでも始めましょう。
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品田 一世(しなだ・いっせい)
ファイナンシャルプランナー
1984年生まれ、神奈川県出身。Canadian Flower Inc.代表。リカレント市民大学客員教授。日本の大学在学中はプロキックボクサー。三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、渡米。ニューヨーク工科大学大学院にてMBA取得。ロイヤル・バンク・オブ・カナダを経て、バンクーバーでファイナンシャルプランナーとして独立。2023年7月よりクアラルンプール在住。極真空手カナディアンチャンピオンシップ70キロ級で13年、16年王者に。趣味は投資とアウトドア。Twitter(現X)では「イッセイ」として発信している。
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(ファイナンシャルプランナー 品田 一世)