Microsoftは、VBScriptとNTLM(NT LAN Manager)を非推奨化の後に廃止する旨を表明した。前者はWindows 95時代の技術でOSに限らず、WebサーバーのIIS(Internet Information Server)でも動作するスクリプト言語である。当時はJavaScriptを直接使用するのか、JavaScript互換のJScriptを選択すべきか判断できず、趣味のawkスクリプトを書きながら動向を観察するにとどまっていたものだ。

WSH(Windows Script Host)のコアエンジンに採用されたVBScriptはOSの動作も制御できたため、バッチファイルを置き換える存在として注目を集めたが。その後はWindows PowerShell、PowerShellと、自動実行の基盤は変化していく。

2023年現在、VBScriptをOSやWebサーバーで利用することは(限られた一部環境を除けば)皆無に近いだろう。このような背景からMicrosoftは、公式ドキュメントで非推奨を表明した。将来的な廃止に至るまではFOD(オンデマンド機能)のひとつとして提供されるため、VBScriptを使用する場合はdismコマンドでインストールしなければならない。

間もなく見納めとなるアイコン

後者のNTLM(NT LAN Manager)は、Windows NT 3.1時代からのセキュリティプロコトル。当初はDOS時代のネットワークOSだったLAN Managerを補完する形で登場したものの、筆者はさほど詳しくない。自宅兼仕事場で複数台のWindowsマシンやLinuxマシンを稼働させ、ドメインではなくワークグループ環境を選択していたからNTLMを使っているのだが、トラブル以外で意識することはなかった。

強いて言えばWindowsやLinux(Samba)で使用するプロトコルの制限を加えた程度だろうか。Microsoftは現地時間2023年10月11日の公式ブログにて、NTLMからKerberos(より強固なプロトコル)への完全移行をうながし、NTLMを将来的に無効化する旨を明らかにしている。

Windows 11のNTLM監査。イベント数はゼロだった

後方互換性を重視するMicrosoftは、VBScriptもNTLMもデフォルトでは無効化し、必要とする環境に対しては再有効化の手順を残している。将来的に廃止と言いつつ、選択肢を残してくれるのはありがたい。

また、NTLMに依存するデバイスやソフトウェアのために、KerberosにIAKerb(初期化およびパススルー認証)とKDC(ローカルキー配布センター)という2つの認証機能を追加した。ただし、今回の枯れた技術をオプション化すると、その間に見つかった脆弱性への対応は後手に回る可能性が高く、将来的廃止を加速させる可能性もある。両者の廃止にともなって組織内の環境見直しを迫られるユーザーには、こまめな情報収集をおすすめしたい。

話は変わって、Windows 11はいつ安定するのだろうか。ビルド22621.2428にしてからエクスプローラーや旧Windows DefenderのCPU負荷が高まり、テキストエディターと日本語IMEの動作に支障を来す場面が増えてきた。前ビルド(22621.2428)とは異なる現象だ。Windows 11のシステム要件を満たさないデスクトップPCなので「おま環」の可能性はあるのだが、Devチャネルで運用しているシステム要件を満たしたノートPCでも類似した現象が発生する。

イベントビューアーを見ると、TPM/BitLocker周りでエラーが発生しているようだ。……が、デスクトップPCではBitLockerドライブ暗号化は有効にしていない。ひとまずMicrosoft Intuneからデバイスを削除して様子を見ているが、前者の2つは関係ないだろう。

現在のエクスプローラーはMoment(瞬間)と呼ばれる独自タイミングで更新し、タブ機能やWindows Copilotもそのひとつだ。Microsoft 365と同種の取り組みである「ホーム」や、モバイルデバイスの撮影内容を含めて画像を並べる「ギャラリー」は、エクスプローラーの応答性低下につながらないだろうか。「詳細ウィンドウ」のファイルやフォルダーに対するアクティビティ表示も便利だが、応答性を考えると痛しかゆしだ。

個人的には冗長に感じるエクスプローラーの「ホーム」

また、OneDriveフォルダーの詳細を開くと、OneDrive.exeのCPU負荷が急増する。Windows 11 バージョン23H2への更新を終えてから「回復」でリフレッシュするつもりだが、数カ月も待てるか不安だ。読者諸氏にもエクスプローラーの応答性低下を避けるため、Windows 11 バージョン21H2という選択肢を提示したいが、こちらは公式ドキュメントにあるとおり、2023年10月10日でEoSを迎えた。以前、ファイル操作はエクスプローラーではなく代替アプリを使用し、ユーザーのスキルに応じてWindows 11 Insider Previewの利用をおすすめしたが、現時点では日常利用・業務利用に安定版Windows 11を使用するのは厳しいという印象だ。

著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。 この著者の記事一覧はこちら