キユーピー株、2年ぶり高値...鶏卵不足が一服、通期上方修正を好感 コロナ禍前を超える業績回復への道筋示せるかが焦点

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キユーピーの株価が2023年10月6日の東京株式市場で一時、前日終値比149円50銭(6.0%)高の2626円をつけ、約2年ぶりの高値となった。前日5日の取引終了後に、2023年11月期連結決算の業績予想を上方修正したことを好感する買いが入った。

主力商品であるマヨネーズの原料となる鶏卵の供給不足・高値が一服したことなどが業績改善の背景にある。

キユーピー、鶏卵卸値「M」1キロ20円下げて320円に設定し直し...相場はさらに下落

それでは上方修正の内容を確認しておこう。

売上高は従来予想比63億円多い4533億円(前期比5.3%増)、営業利益は従来予想比40億円多い180億円(29.2%減)、最終利益は従来予想比35億円多い120億円(25.2%減)を見込む。

キユーピーは修正理由について「価格改定(値上げ)の浸透、海外セグメントの業績が堅調に推移していること、鳥インフルエンザの影響が当初想定より少ない見込みであること」を挙げた。

キユーピーの説明資料によると、通期の鶏卵相場は、供給量の回復に伴い全農東京のMサイズ基準値で1キログラム当たりの卸値を20円下げて320円に設定した。足元ではこれが290円に下落しており、来期の調達額はさらに減るものとみられる。

もっとも、2022年11月期は同じ基準値を209円に設定しており、なおコストとして近年になく重くはあるが、その負担の峠は越えたという安心感が投資家心理を明るくしているようだ。

海外に「伸びしろ」...タイ工場にマヨネーズ類製造の新棟建設、「周辺国への供給体制強化」

10月6日にSMBC日興証券が配信したリポートは営業利益改善の理由について「鳥インフルエンザの(営業利益の)減益影響が当初想定より30億円減少、食油や資材コスト高の緩和、北米の好調などが背景にある」と指摘した。

キユーピーの海外売上高比率は2022年12月〜23年8月期で16%程度。高くはないが伸びしろはあるとみられている。

決算などを発表した10月5日には併せて、タイの工場にマヨネーズ類を製造する新棟を建設し、生産能力を2倍に増強することも発表した。

新棟稼働は2025年1月。タイと周辺国で急増する需要への供給体制を強化するとしている。こうしたことも投資家の買い材料となったようだ。

ただ、先のSMBC日興証券のリポートは、キユーピーが「2024年11月期の連結営業利益を250億円程度に戻し、その後、コロナ禍前の280億円程度に回復させたい」とコメントしたことに対し、「株価もその程度の回復は織り込み済み」との見方を示し、「300億円に向けた回復の道筋を示せるかが焦点」とした。

株価がさらに上値を追っていくには来期の利益を上積みできるような新たな材料が必要かもしれない。(ジャーナリスト 済田経夫)