東証プライム上場のネクステージはビッグモーターに次ぐ中古車販売2位(写真:編集部撮影)

東証プライム上場で中古車販売大手のネクステージをめぐって、自動車保険の不正契約といった疑惑が持ち上がる中、同社で保険事業を統括していた担当役員が2023年9月初旬に亡くなっていたことがわかった。

同社は、保険担当の役員が「先週病院で亡くなったことは事実。原因については聞いていない」(野村昌史取締役)としている。

ネクステージは中古車などの販売のほか、車検や板金などの整備事業、保険代理店事業も手掛けている。浜脇浩次社長の古巣であるビッグモーターと、事業構造はほぼ同じだ。

報道機関からの質問に1問1答形式で回答

そのため「ビッグモーター不正」が社会問題化して以降、疑惑の目を向けられてきた中で、同社が「報道機関様からのご質問状につきまして」という文書を公表したのは9月1日のことだ。1問1答形式で、従業員同士の保険契約の売買や架空契約(作成契約)の疑惑などについて回答している。

ネクステージは公表文の中で「保険契約数に関するノルマはない」「KPI(重要業績評価指標)として設定しており(中略)昇格基準の一つの目安」「(従業員同士の保険契約の売買が事実であれば)昇格基準の検討も含めて議論する」などと回答。さらに、架空契約については「2020年10月に一つの店舗において(中略)保険契約を捏造した事案があった」「保険会社に事案は報告済み」と記載していた。

保険担当の役員はそうした回答の作成に携わっていたとみられるが、その後に亡くなったこととの関連性は分かっていない。

ネクステージの保険代理店としての代理申請会社(幹事会社)は、東京海上日動火災保険だ。そのため自動車保険の取引シェアが最も大きいように思えるが、ネクステージの関係者によると実際のトップシェアは損害保険ジャパンだという。


ビッグモーターと同様、ネクステージでも損保ジャパンの存在感が大きいのは偶然か(写真:記者撮影)

2022年度におけるネクステージの収入保険料は全体で約170億円。そのうち4割強が損保ジャパンのようだ。また損保ジャパンとの取引を強化している様子は、資本関係や経営陣の顔ぶれからも垣間見える。

損保ジャパン関係の社外取締役も

まず、損保会社の中で株式の保有割合が最も高いのは損保ジャパンで、4.39%(2022年11月末時点)。社外取締役を務める福島純子氏は、損保ジャパン(旧安田火災海上保険)の出身だ。さらに、同じく社外取の遠藤功氏は、損保ジャパンの親会社SOMPOホールディングスの社外取も務めている。ネクステージへの出向者の状況を見ても、損保ジャパンが保険部門などに6人、東京海上は同3人となっている。

そうした状況で、保険販売における監督責任が大きい損保ジャパンや東京海上が、架空契約といった不正行為について、どこまで認識し、また厳しい是正措置をとっていたのか。事情をもっともよく知っていたであろう人物が亡くなってしまった今、それを言い訳にして損保会社が真相究明の手を緩めるようなことがあれば、業界への信頼は二度と取り戻せなくなる。

(中村 正毅 : 東洋経済 記者)