地方の物件でリフォームのやり過ぎは逆効果(写真:さわ/PIXTA)

手間暇かけずに毎月50万円ほどの家賃収入を得ている坂本慎太郎氏が実践している不動産投資は、都心ではなく、地方の築30年ほどの区分マンションを安く購入して10%以上の利回りを出しています。これまでの記事で、この投資法のメリットと優良物件が見つかるエリアの探し方を紹介しました、今回は、坂本氏自身の失敗談から得られた教訓として、地方の物件を購入する際の注意点と、入居者がすぐに決まるリフォームのコツを教えてもらいました。

現地調査をせずに購入して大失敗

私がお勧めしている「築古区分マンション投資」では、現地で実際に物件を確認する「現地調査」は非常に重要です。


いまは物件の情報がウェブサイトである程度確認できたり、Googleマップで周辺の環境をバーチャルで見ることができますが、それでもやはり最低でも1回は現地で物件をチェックするべきです。

現地調査をせずに物件を購入し、その後なかなか入居者が入らなかったという私の失敗談を紹介しましょう。

その物件はすでに入居者がいるオーナーチェンジ物件でした。建物を見に行っても部屋の中を見ることができないので、私はGoogleマップで建物と周辺の様子を確認した程度で物件を購入してしまいました。

この現地調査をせずに購入した物件は、結果的に大失敗になりました。

というのも、この物件は駅から距離があることはわかっていたのですが、物件までの道が急な坂道になっていました。さらに坂道の先に階段があり、それを登ったところに物件があったのです。物件の前の道は傾斜があるので自動車を止めることも難しく、賃貸に出したもののなかなか入居者の応募が来なかったのです。

Googleマップをよく見たらこの物件の立地条件もわかったのかもしれませんが、当時の私は忙しいこともありそこまで細かく見ることができませんでした。

こうした物件の特徴も、実際に一度でも見に行くことができればすぐにわかったはずです。結局この物件は、買値よりも安い値段で売却して損切りました。

実際に部屋を借りる人は、ほぼ全員が実際に内見してからその部屋を借りるかどうか決めます。ですので、このように立地条件が悪いような物件は、部屋を内見しに行った人がそのウィークポイントにすぐに気がつくのは当たり前ですね。

物件を買うときには必ず現地調査をしてください、と言われたら、そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、ふと魔が差して確認を怠ってしまうこともあり得ます。安い買い物ではないのですから、いくら忙しくてもきちんと現地調査をするべきだ、とこの失敗例から学びました。

地方では豪華な設備よりも家賃のほうが重要

失敗から学んだ教訓は他にもあります。

私が購入するのは、築30年ほどの物件なので、リフォームをしてから貸し出すのですが、地方ならではの需要に合わせたリフォームを行う必要があります。

よく陥りがちな失敗は、オーナーが自分の好みでリフォームしてしまうことです。あくまでも不動産投資なので、少しでも利益を出すためにコストの内訳をきちんと見直し、無駄なものはカットするべきだと思います。

具体的に言うと、最新式の豪華なキッチンといったように、自分が使いたいと思うような設備、あると嬉しいというような設備は必要ありません。そうした設備は総じて値段が高いものが多いので、コストを上げる要因になってしまいます。

あくまでも投資用のリフォームは、最低限住めるレベルにとどめましょう。どういうことかというと、扉に穴が開いていたり、風呂釜が割れていたりといった場合は、ほどほどの新品に交換するということです。

都会の場合は、豪華な設備が設置されていると物件の人気が高まりますが、地方はそうではありません。地方の場合は、設備よりも家賃が重要な判断基準になるので、リフォームコストをおさえた分、家賃に反映させたほうが入居が安定するのです。

この地方においてのリフォーム需要を知るきっかけになった例があるので紹介しましょう。

同じマンションの中で、エレベーターの無い4階と5階に同じ間取りの部屋を1つずつ購入しました。私は自分の物件でテストしてみようと思い、次のようなリフォームを施したのです。

まずは5階の物件です。キッチンを総入れ替えして、いまどきのオープンキッチンと食洗機を設置しました。間取りも少し手を入れて、まるで新築の分譲マンションのようなキラキラしたイメージの部屋にしたのです。

出来上がりを見て、これは絶対誰もが気に入るだろう、と思いました。

一方の4階の物件は、最低限のリフォームにとどめ、新しい設備もできるだけリーズナブルなものを選んで全体のコストを抑えました。その代わりに、5階の物件と比べて家賃を1万円安く設定したのです。

そして、ほぼ同じタイミングでこの2つの物件の入居者を募集しました。

すると意外にも、すぐに入居者が決まったのは4階の物件のほうだったのです。5階の豪華な設備の部屋は、なかなか入居者が入らず、結局決まるまで1年もかかってしまいました。もちろんその間家賃収入はありません。


(出所:『ずるい不動産投資』)

4階の物件のほうがリフォームのコストが抑えられた上に、すぐに入居者が決まったので、トータルではこちらのほうが利益率が高いという結果になったのです。

私はこの結果を教訓として、以後購入した物件のリフォームは最低限住めるレベルのものに抑えています。

家賃を下げるよりフリーレントのほうがいい

ちなみに、なかなか入居者が決まらないときは、仲介業者から「家賃を下げましょう」と提案されることがよくあります。

確かに家賃を下げると入居者が決まりやすくはなるのですが、いったん下げた家賃はなかなか上げることができません。

その場合にお勧めするのが「フリーレント」です。フリーレントとは一定期間の家賃が無料になる契約形態のことです。

例えば、フリーレント1か月という設定の物件は、最初の1か月は家賃が無料になり、2か月目から通常の家賃が発生します。

家賃が5万円の場合、1か月フリーレントでしたら最初の1か月の5万円の収入が入ってきませんが、2か月目からはきちんと入ってきます。

一方で家賃を5000円下げた場合、1年間で6万円収入が下がることになります。継続して住み続けた場合、2年間だと12万円も収入が下がることになってしまいます。

フリーレントを設定すれば物件の競争率も上がるので、もしなかなか入居者が決まらない、という場合は家賃を下げるよりもフリーレントで対応したほうが、結果的にメリットが多いと考えられます。

すべてを費用対効果で考える!

私がお勧めしている「築古区分マンション投資」は、簡単に言うと地方にある築30年程度の築古マンションのうち、区分の1部屋を購入しリフォームして貸し出すというものです。

投資する物件は、基本的には「自分が借りたい部屋」を選ぶのがいいと思います。実際に自分が住むわけではありませんが、物件がある場所や部屋の中を見て「この部屋なら住んでみたいな」という直感を大事にしています。

賃貸物件を探す人の立場で現地調査をして、この立地のこの部屋なら借りたいと思えるものを選び、自分の好みではなく最低限住むことができる程度にリフォームすると、コストを抑えてうまく利益につなげることができます。

さらに、前回の記事「儲かる大家『平野が狭いエリア』で物件を探す理由」でお話ししたように、地方ならではの賃貸需要を抑えれば、入居付けがよくなり、リスクを抑えて安定した収入を手にすることができると思っています。

築古区分マンション投資で成功するために押さえておきたいポイントは、他にもいろいろとありますが、まず意識していただきたいのは、すべてを費用対効果で考えることです。できるだけ自分の労力や時間を使わず、効率的に投資を行うということです。

もちろん、エリアや物件をリサーチして投資判断をすることは他人に任せず自分で決める必要がありますが、物件を購入したあとは、リフォームや客付け、物件管理などは専門の業者に思い切って任せてください。

費用対効果を第一に考えて、利益を得ることと、自分の自由な時間を確保することを両立できることが、築古区分マンションの本当のメリットだと私は考えています。

(坂本 慎太郎 : こころトレード研究所所長)