国語力が高い家庭に共通する「家庭の習慣」とは(写真:buritora/PIXTA)

子供に本好きになってもらいたいのに、なかなか本を読まない。そんな悩みを抱えているご家庭もあるのではないでしょうか。京都大学に首席で合格し、オンライン個別指導塾「となりにコーチ」代表を務める粂原圭太郎さんの新著『くめはら先生と学ぶ 中学国語のきほん 50レッスン』を一部抜粋・再構成し、子供が読書好きになる一工夫をご紹介します。

みなさんは、お子さんの国語力が高い家庭に共通する「家庭の習慣」をご存じですか?

昨今、子供の読解力不足が嘆かれていますね。僕のところにもよく、親御さんから「子供が本や文章を読めるようになるためにはどうすればいいですか?」という質問が届きます。

親と子で読み聞かせ合う

しかし実は、子供の読解力を育成するための手段というのは、特別な教材を用意する必要もなければ、そんなに難しい方法も必要ないのです。

今回は、家庭で簡単に実践できる、子供の読解力を上げる方法についてお話ししたいと思います。

結論から申し上げると、子供の読解力を上げるためには、「親と子の、読み聞かせ合い」がいちばん効果があると思います。

親が子供に読み聞かせるというだけでもなく、子供が親に読み聞かせをするというだけでもなく、親子で、本の読み聞かせ合いをするのです。小学校〜中学校くらいの間でこれが習慣化されている家庭のお子さんは、読書が得意になるケースが多いと思います。

まず前提として、子供が本を読まなくなる原因の9割は、親が本を読んでいないからだと僕は感じます。

「うちの子、全然本を読まないんです」というご相談をする親御さんの大半は、親御さんご自身が読書をあまりしていません。子供にとって「いちばん身近な大人」が本を読んでいないという環境自体が、子供が本を読まない原因になっていることが多いです。逆に、読書家のご家庭は、大体の場合お子さんは本を読んでいます。

だからこそ、子供に本を読ませようとするだけではなく、親御さんも本を読むべきだと言えるのです。その点において、「読み聞かせ合い」をすることで、親が本を読んでいる声を聞かせることができ、子供が本に興味を持つようになるといえます。

声に出して本を読むのがポイント

さらに、「声に出して本を読み、それを子供が親に聞かせる」というのは大きな学習効果が期待できます。

声に出すことで、テンポを意識して、上手に音節を区切って本を読むことができるようになるからです。

例えば、「彼はもう気が気ではなくなってしまい急いで病院に行った」という一文を、あまり本を読み慣れていない生徒さんは、「彼はもう気が、気ではなくなって、しまい急いで、病院に行った」と、不自然なところで切って読んでしまいます。

そうすると意味も入ってこなくて、何度も読み直したりしてしまい、そのうち本を読むのが嫌になってしまうのです。

その点、「彼はもう、気が気ではなくなってしまい、急いで、病院に行った」と、うまく節をつけてテンポよく音読する習慣がつくと、音読しないで読むときの読解スピードも格段に変わってくるわけですね。実際、この方法を実践しているお子さんたちは、本や文章を読むスピードもどんどん上がっていきます。

そして音読を、お互いでやることにはとても大きな意味があります。

まず、親御さんの読み聞かせる音読を聞くことで、子供はテンポよく音読する仕方を理解することができるようになります。「こうやってやればいいのか」というモデルになるわけです。

また、お子さんが読むのを親御さんが聞けば、もし変なところで区切っていたら親御さんが指摘することもできますよね。「今のところ、間違っているよ。『気が気ではない』って1つの言葉なんだよ」と。

さらに音読の場合、読めなかったら読めないままにできず、調べたりしなければならない、というポイントもあると思います。

普通、本を読んでいても、読めない漢字や意味のわからない言葉などはスルーして読み進めてしまいがちです。「気が気ではない」という言葉がわからなくても、黙読の場合はそのまま読み進めてしまうのです。

でも、音読の場合、声に出して読まなければならない関係上、「気が気ではない、ってなんだ?どこで切るんだ?」と考えながら読む必要が出てきます。きちんと音読するためには、「どこで切るか」などの理解が必要なので、いちいち検索して勉強する習慣がつくわけです。

すぐ実践できる3つのSTEP

さて、ここまでで「何をすればいいのか」は大体わかってもらえたと思いますので、ここからは実践的なステージに行きたいと思います。

STEP1 まずは親御さんが簡単な本を読み聞かせる(小学校低学年以下)

最初は、親御さんが子供に簡単な本の音読をしてあげましょう。絵本で大丈夫です!

STEP2 親御さんが読んであげた本を渡し、子供が親に読み聞かせてみる(小学3〜4年生程度)

次に、今まで読み聞かせていた本の中から、好きな本を子供に読み聞かせしてもらいましょう。親御さんは、それを聞いて、変なテンポになっているところなどを指摘してあげましょう。

ただ、アレンジに対して文句を言うのはNGです。お芝居のセリフっぽく登場人物のアテレコをする子などもいますが、そういうのは個性として褒めてあげるべきだと僕は感じます。

STEP3 お互いに好きな本を読み聞かせる(小学5年生以上)

慣れてきたら、お互いに好きな本を読み聞かせしましょう。親御さんは難しい本で大丈夫ですし、お子さんも今までの本ではないものにも挑戦してもらってもいいと思います。

ちなみにこの時、難しい言葉があってわからない、とお子さんから言われたら、ただ教えるのではなく、「自分で調べてみよう」とアドバイスしましょう。自分で調べる習慣がつくと、どんどん自分で本を読めるようになります。

そして、もう1つポイントとしておすすめなのは、「本の感想を言い合うこと」です。読み終わった本について、お互いがお互いで意見を言い合うのです。「マッチ売りの少女、かわいそう!」「でも、幸せだったと考えることもできるよね?」「でも〜」なんて感じで、読んだ本についての忌憚のない意見をぶつけ合って、本に関するアウトプットをしましょう。

感想を言い合うことで、読書の楽しさを知る

結局、読書でいちばん楽しいのは感想を言い合うことです。ここで親御さんと一緒に本の感想を言い合えれば、子供はどんどん読書好きになっていくと思います。

いかがでしょうか? 親御さんの努力によって、お子さんの読解力は大きく上下します。

特に小学校〜中学校の間に本を読む習慣がついていないと、高校生になってから苦労してしまう場合も多いです。ぜひ親御さんは参考にしてみていただければと思います。


(粂原 圭太郎 : 京大首席・オンライン塾塾長)