子どもたちにとっては楽しい夏休み。けれど、お母さんたちの負担が増えてついガミガミ言ってしまうこともあります。ほかの家庭ではどうやって夏休みを乗り越えているのでしょうか(写真:mori/PIXTA)

【質問】

中1と小4の子どもがいます。夏休みが始まったと思ったら、もう半ばまで来てしまいました。中1の子は部活と塾でそれなりに活動していますが、小4の子は時間を持て余しており、また毎日お昼ごはんを作らなければならず、子どものダラダラに私のイライラがMAXに達しようとしています。夏休み後半は宿題を終わらせることにガミガミ言いそうです。他の家庭ではどのようにうまく夏休みを乗り越えているのでしょうか?

(仮名:東さん)

お母さんたちのイライラがMAXになる理由

夏休みど真ん中、お母さんたちのイライラもMAXの時期になってきました。夏休みが始まる直前に、筆者が主宰する「子育て、教育勉強会」の100名ほどのお母さんたちに「夏休みで一番、親の頭を悩ますことは何ですか?」と聞いてみました。すると返ってきた答えのほとんどが「お昼ごはんの用意」でした。

一般的には、子どもの勉強のことや生活習慣が悩みだと思われるかもしれませんが、最も現実的な悩みは、そうではなかったのです。

朝、夕に加え、さらに昼の食事を用意することは、大きな負担になります。もちろん、日々の家事に加えての話ですから、大きな悩みの元になるはずです。

そこで、夏休みのお昼ごはんは具体的にはどうしているか聞いたところ、「通常と同じように毎日お弁当を作る。夏休み限定のやり方にはしない」「ランチメニューのサイクルを作っておくことで、考える時間を削減する」など様々な工夫が聞かれましたが、多少の緩和にはなるものの、根本的には大変であることには変わりありません。

そのような状況の中で、子どもが勉強しない、生活はダラダラという状況を目にしたら、イライラ導火線に火がつき爆発してしまうこともあるかもしれません。中には爆発するのではなく、疲労が溜まり衰弱してしまうケースもあると聞きます。せっかくの夏休みにそのような状態になってしまうことは残念なことです。

夏休み、みんなはどうしている?

そこで、筆者が毎日配信している音声配信プラットフォーム『Voicy』のリスナーさんに「夏休み前半の過ごし方」について聞いてみましたので、その一部を紹介します。様々な工夫やあり方があるようです。

(1)今年のわが家の夏休みのテーマは「ヒマ」にしました。共働きなので、小学生2人を学童に預けていますが、自分の子どもの頃を思い出すと、夏休み毎日ヒマだったなー、でもそれが楽しかったなーと思い出しました。なので、私が在宅の日は学童を休んでもいいよ、と子どもには伝えてヒマな時間を楽しんでいます。私の子ども時代と大きく違うのは、昼間暑すぎて外に出て遊ぶ気になれないことですね。

(2)夏休みになり、週末に早朝のラジオ体操に参加しています。参加者は年配の方が多いですが、子どもが参加すると喜んで声をかけてくれます。また、別の小学校に通う子とも仲良くなれます。とてもいい交流の場になっています。ラジオ体操の後は子どもたちは虫取り、トカゲ探し、ザリガニ釣りなどを楽しみ、親はおしゃべりです。家に帰ると、YouTubeやゲームをしていても「朝、活動してるから」と思うとイライラする気持ちも抑えられます。

(3)わが家は小学生2人。基本、学童で過ごしています。上の子は今年初めてサマーキャンプに参加します。宿題はホワイトボードにto doリストを書いて進めるようにしていますが、予定通りいかず親がヤキモキ&イライラすることもあります。とはいえ、音読や夕方の運動などは習慣化してきました。私のお弁当作り生活も8月に入ってようやく慣れてきたところです。何事も"習慣化"にいかに持ち込めるかがキーとなるなと感じています。

(4)わが家は娘とやる事リストを作成、1週間分印刷して、クリアファイルに1日分のリスト、各種宿題を挟んでおきます。やるべきタスクが終わったら横線を引いて消す、を起床後から3時間以内くらいにすませるように促し、終わったら自由時間としています。午後から通常の習い事があることと、だらけないために朝ごはん前までにどれだけのタスクを終了できているかが毎日のカギとなっています。帰省時にポスターと絵日記をやる予定で、従兄弟たちにも手伝ってもらう作戦でいます。

(5)上の子は中3。塾と部活の日々で家にはあまりいないのですが、隙間時間をうまく使えていないようで、ダラダラスマホも見ているため、Googleカレンダーを使ってスケジュール管理するように勧めてみました。パッと見た時に全体のスケジュールや、一日の隙間時間が「見える化」されるので、時間管理がわかりやすくなったかなと思います。下の子は小5なので、石田先生の子ども手帳に習ってやるべき事をやったらポイントをあげるポイント制にしてみました。今のところ順調なので、続くといいなと思っています。

以上5つの家庭のケースを紹介しました。

充実した夏休みとなることで、親の努力も報われる

親のイライラを回避するために、それぞれ独自の方法を実践されていることが伝わったのではないでしょうか。

共通するキーワードは「夏休み限定のルーティンを作る」ことにあると思われます。ルーティンとは、日課、慣習、お決まりの手順のことを言いますが、学校に行っている平常期とは異なる夏休み独自のルーティンを作るのです。そしてルーティンを回すだけでなく、子どもたちの自由時間を、平常期以上に容認していることも感じられました。

夏休みは、時間が多くあるため、子どもたちはヒマを持て余してゲームか動画視聴に走りがちですが、「ルーティンさえしっかりしていれば、自由時間(ゲームや動画)が多少多くても、ダラダラしていてもOK」という考え方が、親の気持ちのゆとりを作り出し、イライラやガミガミを減らせるのではないかと推察します。

ルーティンを作るやり方は、7月20日に配信した前回の記事にも記載しました。そこでは「子ども手帳」の仕組みを紹介しました。これによって子どもが自主的にやるべきことや、やりたいことをこなしていく仕組みを作ることができますので、夏休み後半限定で行ってみることもお勧めです。

夏休みの昼食の悩みは避けられないとしても、夏休み限定のルーティンとゆとりを容認することで、子どもたちにとって充実した夏休みとなれば、親の努力も報われると思います。


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)