リチウムの先物価格は決済期限が長いものほど落ち込みが大きい。写真は中国のリチウム大手、天斉鋰業の倉庫で出荷を待つ炭酸リチウム(同社ウェブサイトより)

EV(電気自動車)の車載電池の主要原料であるリチウムの先物価格が、中国市場で急落している。広州先物取引所の炭酸リチウムの先物取引では、決済期限が2024年2月以降となる取引の成約価格が1トン当たり20万元(約394万5000円)のラインを軒並み割り込んだ。

2023年7月24日の取引終了時点では、決済期限が2024年1月の取引は前営業日比4.21%安の1トン当たり21万1400元(約417万円)で引けた。しかし2月ものは同7.02%安の19万9400元(約393万3300円)と20万元を下回り、3月もの以降は下げ幅が10%を超えた。

リチウム大手の株価も下落

「炭酸リチウムの現物価格は、2024年に1トン当たり20万元を割り込むとの観測が市場に広がっている。それが先物取引に影響したようだ」。財新記者の取材に応じた商品アナリストは、背景をそう解説した。

リチウム製品大手の株価も、先物価格と連動するように下落している。中国の大手2社である天斉鋰業(ティエンチーリチウム)と贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)の株価は、7月24日にそろって約5%下落。前者の株価は過去1年間の最安値、後者は2021年以降の最安値を記録した。

1トン当たり20万元のラインが注目されるのは、リチウム製品の需要家である電池メーカーにとって、それが心理的に受容しやすい(一定の利益を確保できる)水準だからだ。財新記者の取材に応じた複数の電池メーカーやEVメーカーの担当者は、「この程度ならコスト的に受け入れられる」と口を揃えた。


2024年はリチウムの供給量が世界的に増加する見込みだ。写真は中国の贛鋒鋰業が権益を持つアルゼンチンのリチウム塩湖(現地開発会社のウェブサイトより)

炭酸リチウムの現物市場では、2023年に入って取引価格が急落し、4月には一時的に1トン当たり20万元を割り込んだ。しかし5月以降は上昇に転じ、同30万元(約591万7700円)前後の水準を回復。7月24日時点の現物価格は同28万5000元(約562万1800円)だった。

市場関係者に悲観ムード

決済期限が2024年に跨がる先物価格が、現物価格に比べて大幅に低いという実態は、今後のリチウム相場に対する市場関係者の心理を反映したものと言える。2024年はリチウムの供給量が世界的に増加すると予想されており、市場に悲観ムードが蔓延している。


本記事は「財新」の提供記事です

先物取引大手の中信建投期貨のレポートは、グローバル市場のリチウムの需給は2023年末までは基本的に均衡が保たれるが、2024年から2025年にかけて供給過剰に傾く可能性が高いと予想している。

(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は7月24日

(財新 Biz&Tech)